愛し方を知らない少年

えりー

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カズキ

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カズキはルミの家族を殺した張本人だ。
しかし何故かルミを殺すことは出来ない。
依頼主からは皆殺しにするようにと指示を受けているが彼女には手が出せなかった。
カズキは自分の中の変化に戸惑った。
今までだったら相手が誰であれ簡単に殺していたのに・・・。
(盲目の彼女に同情したのか?)
だが、自分にそんな感情があるとは思えない。
何故なら自分の感情が動くときは人を殺している時のみだけだからだ。
それなのに彼女を助けたり、会話をしたり・・・。
こんな自分はおかしい。
そう思いながらもルミをつい構ってしまう。
ルミの事を思うと胸が高鳴る。
この感情はなんだ。
自分は壊れてしまったのではないのかと不安になる。
情が湧く前に殺しておいたほうがいいのではとも考えている。
感情は仕事の妨げになる。
感情などないほうがいい。
そのほうが身軽で好きに生きていける。
それなのにー・・・。
ルミの事になると感情的になる自分がいる。
今更、殺すことなどできないのかもしれない。
あの時出会わなければよかった。
そして、助けたりしなければこんなことにならずに済んだ。
カズキはそう思った。
カズキは1つの可能性に気がついてしまった。
この感情は恋というものではないのかと・・・。
この感情が本当に恋なのか確かめる必要がある。
それによって、彼女に対する態度を変えなくてはいけない。
俺は彼女の家族を殺した男だ。
そんな俺の傍に置いておくわけにはいかない。
傷つけてしまうだけだ。
否、違う俺は憎まれることが怖いんだ。
きっと彼女は俺を憎む。
だから俺は彼女に自分の職業の話をしないのだ。
もし、俺が殺し屋だと知ったら彼女はどう思うだろうか。
俺が彼女に触れたら彼女を穢してしまうような気がした。
それでも一度触れてみたい気もした。
俺はもう彼女に恋をしているようだ。
今までこんな事考えたこともなかった。
何故彼女なのだろう。
俺は仕事とはいえ彼女の家族を殺してしまったのに・・・。
一体どうしたらいいんだろうか。
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