上 下
17 / 35

儀式後

しおりを挟む
悠里は結城に美優が行った行動を一部始終話した。
結城は意外な顔をしていた。
それもそのはず、気の弱い美優がそんな行動をとること自体信じがたかった。
「で?その王族の姫はどこの姫だ?」
「言えません」
きっぱり悠里は言ってのけた。
「何故?」
「美優様が秘密にしてほしいと仰るので・・・」
「・・・そうか」
美優は諍いを嫌う。
きっとその王族の姫とその両親が何かの処罰を受けることが嫌なのだろう。
王を侮辱して無事な王族はいない。
何らかの刑を与えている。
それがこの国のルールだ。
「まぁ、今回は美優に免じて許してやろう」
「ふふふふ、お心の広いことで。私は今から美優様に悪態をついた姫君たちの処罰に行ってきますわ。この事は美優様に内緒にしていてくださいね」
悠里は短剣をちらつかせながら結城のいる部屋から出て行った。
「悠里どのは普段温厚な分怒らすと怖いですからね~」
そう言いながらいつの間にか側近の紀藤が立っていた。
「お前は、地獄耳だから美優の悪口を言った姫たちを全員知っているんだろう?」
「はい。後程、何らかの処罰を与えるつもりですが・・・?」
どうやら、紀藤も美優に対しての暴言が許せなかったらしい。それほど、美優のことを紀藤も気に入っているという証拠でもあった。
「お前たちは普段大人しいのに本当に怖いな・・・」
結城は本心からそう思った。

「美優入るぞ」
「結城様」
結城は美優の様子を見に行った。
美優は結と戯れていた。
美優の膝の上にちょこんと座りここは自分の居場所であることを結城に主張しているようだった。
「美優、今日は俺の為に怒ってくれたらしいな」
「!!」
美優は驚いて顔を背けた。
「悠里さんに聞いたんですね?もう、言わないで欲しかったのに」
「どうして?俺は話を聞いてうれしく思ったぞ」
「本当ですか?私ついカッとなってしまって・・・すみません。大人しくしておかなきゃいけなかったのに」
そう謝ると結城は笑い出した。
「いいんだ。本当に嬉しかったんだ、ありがとう美優」
そう言いキスしようとすると、結がぷにぷにの肉球で結城の唇を遮った。
「・・・美優」
「はい?」
「その犬ちょっと部屋の外へおいてくれないか?」
そう言われ渋々結を廊下に出した。
「そう言えば、悠里さんと紀藤さんは今どこに行っているんですか?先ほどから姿が見えなくて」
「あー・・・所用で出かけてる」
結城は歯切れの悪い言い方をした。
やさしい美優に本当のことなど言えない。
(あまり手荒なことをしていないといいが・・・)

次の日美優の元へたくさんの貢物が姫君たちより届いた。
美優はわけが分からなかったが悠里が受け取っておくようにと強く言うので仕方なく受け取ることにした。


しおりを挟む

処理中です...