竜王と契約の花嫁

えりー

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男性の正体

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学校帰りの電車は空いている。
比較的安全そうな場所を探しそこに座った。
ふと気が付くと隣にあの男性が座り、美乃梨をじっと見つめていた。
「いよいよ明日だな」
「え?」
(初めて会話をした・・・)
「明日、朝迎えに行く」
「えぇ?」
男性はそう言うとすぅっと姿を消した。
「!!」
(今の何!?・・・夢?)
美乃梨は電車の中でうたた寝をして夢を見たのかと思った。
(だって・・・彼が現れるなんて・・・あるはずない)
昔からどんなに話かけても返事をしてくれなかった。
そんな彼が”明日の朝迎えに来る”という。
夢としか思えなかった。
(嫌だな・・・ついに妄想までするようになるなんて)
そう思いつつ、次の停車駅で降りた。
家に帰ると上機嫌な母がいた。
「明日は楽しみね。やっと16歳になるのね」
「うん」
「パパは何処に食事に連れて行ってくれるのかしら」
母は純粋に誕生日を祝ってくれようとしている。
「パパの事だからきっと奮発して高い料亭じゃないかな」
そう答えると母はくすくすと笑いながら言った。
「ほら、手を洗って来なさい。今日はクッキーを焼いてみたのよ」
「はーい」
母のクッキーは美味しい。
美乃梨の好物の一つだ。
手を洗い、急いで母の元へ行きクッキーを一緒に食べた。

「夕飯前に食べすぎちゃった・・・」
そう言うとベットに転がった。
「ママの料理がおいしいから私の体重が減らないんだわ」
1人呟き目を閉じた。
”明日の朝、迎えに行く”
彼の言葉が頭から離れなかった。
低く心地の良い優しい声音だった。
はっきり覚えている。
表情も穏やかなものだった。
「あれは幻?現実?」
美乃梨はその事で頭がいっぱいになった。
考えても仕方がないことは分かっている。
しかし考えずにはいられなかった。
「美乃梨~っ、夕飯よー」
「今、行く~」
美乃梨は彼の事が気になって夕飯があまり進まなかった。
「体調悪いの?美乃梨?」
「ううん、大丈夫」
「そう?」
母に心配をかけたくなかったので元気なふりをした。
夕飯も頑張って残さずいつも通り食べた。
その日の晩、なかなか眠れなかった。

翌朝、目を覚ました美乃梨はカーテンが揺れていることに気が付いた。
(あれ?どうして・・・窓は閉めておいたはずなのに)
ふわりと抱き上げられる感覚に美乃梨が驚いた。
「え!?」
「約束通り迎えに来たぞ」
「あなたは誰!?」
(まだ夢を見ているのかな!?)
「俺は竜王と呼ばれている者だ」
「りゅー・・・?」
混乱している美乃梨に竜王はもう一度名乗った。
「竜王だ。5年前の約束をはたしに来た」
「5年前?」
美乃梨には記憶が欠けている期間があった。
11歳の時の1ヶ月間の記憶が無いのだ。
「さぁ、行くぞ」
ざぁー・・・っと水に飲まれ、美乃梨は恐怖で目を閉じた。
「着いたぞ」
そぉっと目を開け、気が付くと宙に浮いた島々が見えた。
木々が輝き水が島から島へ流れ落ちていく。
とても幻想的な光景だった。
(どうして懐かしいと感じるの?)
美乃梨の意識はここで途切れた・・・。
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