合言葉

えりー

文字の大きさ
上 下
3 / 7

しおりを挟む
翔は自分でもわからなかった。
何故昨日の今日で琴音を呼び出したのか・・・。
会いたくて会いたくて仕方がなかったのだ。
頭では昨日会ったばかりなのにと思っても心が琴音を求めてしまう。
(初恋というものだろうか・・・)
ぼんやりと喫茶店の入口に立って考えていた。
翔は今まで恋をした事がなかった。
「翔さん!!お待たせしました」
振り返ると微笑を浮かべている琴音がいた。
翔の胸はまた高鳴った。
彼女を前にする動機がして胸が苦しくなる。
この苦しさが恋だというのなら少し怖くなる。
琴音を独占したいという気持ちに駆られてしまう。
だから他愛の無い話をして気を紛らわした。
話し終え、喫茶店から出て別れたばかりなのに琴音の事ばかり考えてしまう。
くるくると変わる表情、可愛らしい声、栗色の髪。
琴音に触れたいとまで思ってしまった。
「俺は・・・琴音の事が好きなんだろうか・・・」
初めて知る感覚に戸惑っている翔だった。

琴音は家に帰ると自分の部屋へ行き、ベッドに突っ伏した。
(ちゃんと自然に話せたかな・・・?)
このじんわりと胸に広がる感情は間違いなく琴音は恋だと思った。
しかし、世間話程度しかせず面白い話などできなかった。
つまらない娘と思われていないか急に不安になった。
でも穏やかに自分の話を聞いていてくれていた翔を思い出した。
少しは安心したがどうやってこれから接していいのかわからない。
「翔さんは私の事どう思っているんだろう・・・」
ただそれだけが気になった。
翔はあまり話さず、ただ琴音の話を聞いていた。
琴音の話を聞くときの翔はとても穏やかな表情をしていた。
それが嬉しくて胸が締め付けられる感じがした。
甘くて苦い・・・これがきっと恋なんだと琴音は思った。
「これが恋かぁ・・・」
そういえば翔とはどこかで会った気がした。
妙に懐かしさを感じることがある。
「でも・・・どこでだろう?」
考えれば考えるほどわからない琴音は考える事をやめた。
転がったベッドの上で眠りについてしまった。
その頃、翔は恋という物について考えていた。
2人は惹かれあい恋に落ちた。
まだお互いの気持ちを伝えあっていないが両想いだった。
翔はまた会いたくなっていた。
そこをグッと我慢して、スマホをポケットへしまった。
しおりを挟む

処理中です...