狗飼君と私

えりー

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有希と狗飼

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朝目を覚ますとすべてが夢だったらよかったのにと早速実感した。
自分のベッドの中に狗飼が入ってきていた丸まって眠っている。
はぁーっとため息を有希はついた。
(でも、こうしていれば少しは可愛いかも)
有希は眠っている狗飼の頭を撫でた。サラサラした髪だ。手触りがとてもよかった。
(この手触り・・・やっぱりあの犬と一緒なのね)
狗飼に対して罪悪感がないと言えば嘘になる。
私のせいで犬だった彼は死んでしまったのだから。
有希は罪悪感だらけだった。
有希は一晩考えた結果一つの答えを出した。
彼の気が済むまでこの茶番に付き合おう。
有希が出した答えだった。
狗飼がもぞもぞと動き出した。
そして座っていた有希の太ももの上に頭をのせてきた。
心地よさそうにまだ寝息を立てている。
まるで犬そのものだった。
あまりにその姿がかわいくて頭を何度も撫でてしまった。
有希はそんな自分に驚いて途中で撫でることをやめた。
「・・・もう撫でてくれないのか?せっかく気持ちよかったのにー・・・」
「!!」
どうやら狗飼は起きていたようだ。
「いつから・・・起きていたの?」
「最初から」
「!!」
なんということだろう。丸まって寝ているときから彼は起きていたらしい。
「起きてるなら言ってくれればよかったのに・・・」
「いや、心地よくて・・・起きているって言い出せなかった」
彼は悪びれもせずに言って見せた。
「・・・」
彼は犬なのだ。人間に甘えてくるのは当たり前のことなのだ。
(そこに疚しさはない・・・はず)
二人は起き上がりそれぞれ学校へ行く準備をした。

一緒に朝食を食べた後、学校へ向かった。
有希は学校へ行く途中気になっていたことを思いきって聞いてみた。
「事故で私の身代わりになって死んだこと恨んでないの?」
狗飼は不思議そうな顔をした後有希に言った。
「恩を返したかったんだ。・・・例え命を失っても。だから恨んでいない」
どこか誇らしげな表情をして言い切った。
次は有希が不思議な顔をする番だった。
「恩?ごはんをあげていたこと?」
「それだけじゃない」
「?」
やはり有希には分らない。いや、思い出せないと言ったほうが近いのかもしれない。
(私は、何かを忘れている)
(一体何をー・・・)
そんなことをぼんやり考えているともう学校へ着いた。
「ねぇ、どうして学校生活してみたかったの?」
「お前に餌をもらって食べてるとき、いつも学校へ行きたくないと言っていたじゃないか」
「!?それで行ってみたかったの?」
「ああ、どういう所か知りたかった。大体わかった。人が群れる場所なんだな」
(好きで群れているわけではないけれど・・・)
なんて突っ込みを入れていいかわからずにいると狗飼が言葉をつづけた。
「有希はどうして学校が嫌いなんだ?」
そう問われて有希は戸惑った。
有希は、人と関わっているより一人でいる方が性に合う人間だった。
別に人付き合いが苦手というわけではないが一人が好きなのだ。
だから、群れている中にいると居心地が悪かった。
「一人が好きなの。あんまり人と関わりたくないから」
「もしかしていじめか何かにあったとか?」
「違うよ。ただ楽なの」
有希の唯一の親友の美香はそんな有希のことをいつも心配していた。
人の輪に進んで入ってこない有希を美香は半ば強引に輪の中に連れて行っていた。
有希からすると放っておいてもらいたいところだが、美香の優しさを無下にできなかった。

「あと、昨日も聞いたけど、どうして私に執着しているの?こんなこというと薄情かもしれないけど、死んでしまったんだったら行かなきゃいけない場所があるんじゃないの?」
「うーん、まだ目的を果たしていないから行きたくない」
「そう」
やはりしばらくこのままの生活が続きそうだ。
有希はそう思った。
「あっ、保健室に功様の気配がする。行こう」
そう言うと有希の手を取り走り出した。
(狗飼、足速い!!)
さすが元犬だけはある。
ガラっと保健室の戸を開けた。するとやはり、功の姿があった。
朝からあの髪の毛の色は目に悪い。
(日に透けてきらきら紫色の髪が輝いている・・・神々しい)
功が神様であることをそういえばどうして自分はすんなり受け入れたんだろう。
功とも初めて会った気がしなかった・・・。
でも功のこと何も知らない。
「功様、おはようございます」
「はい、おはよう」
「山神様、おはようございます」
「おはよう有希ちゃん。こいつに何もされなかった?」
何もされなかった・・・かどうかは謎だった。
「・・・今朝、私のベッドにもぐりこんでいました」
そう言うと冷たい空気が部屋を包んだ。
功は狗飼の方を冷ややかな目で見た。
狗飼はきょとんとしている。
どうやら状況がわかっていないらしい。
「・・・私、先に教室に行ってるから」
そう言い戸を閉め、教室へ向かった。
狗飼は一限目は顔を出さなかった。


















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