青い葉桜の下で

えりー

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魔女

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翌日、リアンは重たい溜息をついた。
「あー・・・もうすぐあいつと会うのか・・・」
「ん・・・?」
その声で真理子も目を覚ました。
「おはよう、真理子」
「・・・おはようございます・・・」
目を開けると美しい顔が覗き込んできた。
戸惑い真理子は赤くなった。
生まれて初めて男性と床を共にしてしまった・・・。
そう思うと恥ずかしくてなかなか顔を合わせられない。
「どうして目をそらす?」
「だって・・・恥ずかしいから」
真理子が答えるとリアンが言った。
「可愛い寝顔だったぞ?」
「!!」
言われたくないことをさらりと言われ真理子は慌てた。
ベッドの中に潜り込み顔を隠した。
「真理子?また具合が悪いのか?」
「違うの!!いいから放っておいて」
顔の赤みが引くまでは布団から出られそうにない。
ようやく顔の赤みが治まった頃、さっきの言葉を思い出した。
「今日来る魔女さんのこと苦手なの?」
「・・・苦手だ」
「どうして苦手なの?」
はーっとまた溜息をつき布団に包まっている真理子に言った。
「会えばわかる」
「そ、そっか・・・」
(リアンがここまで嫌がるなんて・・・どんな人なのかしら)
「ああ、真理子も色々言われるだろうが無視していいからな」
「・・・色々?その人・・・”木”も人間嫌い?」
暫く考えてリアンは答えた。
「魔女の名はレラ。人間嫌いというか・・・俺以外の者に興味がない」
「え?それってどういうことなの?」
「・・・レラは俺に惚れている」
(えぇ!?)
(これって三角関係みたいなやつなのかな・・・)
「わ、私はどうしたらいいの?」
リアンに私が惚れられていることを知ったら魔女の涙をきっと渡してくれない。
「普通にしておけばいい」
(いやいや、今の話から普通にしておくのは難しいよ)
「そっかレラさんはリアンの事が好きなのね・・・」
胸のあたりがチクリと痛んだ。
「俺が惚れているのは真理子だけだからな!」
「わー!朝からそんな事大きな声で言わないでぇ~」
せっかく赤みが引いたのにまた顔が赤くなるのを感じた。
「俺はレラを迎える準備をするからもう行かなくてはいけない」
「うん。行ってらっしゃい」
その時コンコンっと扉を叩く音がした。
「キセです。そろそろお時間でございます」
「今。行く」
ぶすくれた顔は変わらずそのまま部屋から出て行ってしまた。
「おはようございます。真理子様」
「キセさん。おはようございます」
キセは豪華なドレスを持ってきた。
「魔女に会う時は正装するものなのです」
「そうなんですね」
「真理子様に似合いそうなドレスを持ってきました」
そういうと素早く着せ替えてくれた。
「あ、ありがとうございます」
「いえ、お役に立てて嬉しいですよ」
2人は微笑みあった。
しかし、キセは何か言いたげだった。
「キセ?何かあったの?」
「あの・・・くれぐれも魔女にはお気を付けください」
(気を付ける?)
何か問題がある人物なのだろうか。リアンも神妙な顔をしていた。
「・・・はい。気を付けます」
(でも、一体何に気を付ければいいのかな?)
「では謁見の間まで案内いたします」
「はい」
廊下を歩いていてもやはり視線と悪口が聞こえてくる。
でも人間がしたことを考えれば仕方の無い事なのかもしれない。
はぁ、っと溜息をつき顔を上げキセに続いて歩き始めた。

「真理子様をお連れいたしました」
「入れ。キセは下がっていろ」
「はい。失礼しました」
そう言いキセはその場を後にした。
パタンと扉が閉まり3人だけになってしまった。
魔女はとても美しい容姿をしていた。
褐色の肌に赤いルビーのような瞳。
そして鮮やかな赤い髪。
整った顔立ち。
「ああ、我が王!!お会いしとうございました!!」
そう言いながらべったりとリアンに抱きついた。
「!!?」
そして挑発的な視線でチラリと真理子を見やった。
「えっと・・・お2人は恋人か何かでしょうか?」
聞かずにはいられなかった。
「違うこいつは俺の幼馴染だ!!それ以上でも以下でもない!」
「・・・」
でも2人はとても親密な関係に見えた。
グイッと魔女のレラを押しのけリアンは言った。
「リアンはレラの事嫌いなの?」
甘ったるい声でレラはリアンに迫った。
「俺にはもう想い人がいる」
「なっ!?誰よそれ!」
レラはキッと真理子を睨んだ。
「まさか、あの人間の女というんじゃないでしょうね?」
真理子を指さしレラは言った。
「そのまさかだ」
「嘘・・・よりによって人間だなんて・・・」
「・・・」
真理子は黙ったまま立ち尽くすしかなかった。
「あら・・・?あなた死期が近いのね」
「!!」
「それなら心配することは無いわ。リアンは私のものなの」
「今日も会いたいからといって使いをくれたのよ」
レラは自信満々にそう言った。
真理子はドレスの裾を握り締めていた。
「レラ、今回呼んだのは”魔女の涙”を貰いたいからだ」
「何ですって!?」
レラは激高した。
「レラ頼む。真理子の病を治したいんだ」
「嫌よ!絶対、嫌!」
そう言って謁見の間から飛び出していった。
「やはりこうなったか・・・」
深い溜息をつきながらリアンは言った。
「私があの魔女の立場でも絶対に渡さないと思う・・・」
「何故?」
「・・・考えなくても分かるでしょう」
真理子は困った顔をしながらそう呟いた。
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