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銀の兄
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それからは2人とも何事もなかったかのように過ごした。
一緒にお茶を飲んだり、食事をしたり。
外へ行き、山を散策したり、川で釣りをしたり色々していろんな話をした。
銀は都に必要以上触れてこない。
危ないときに手を貸してくれたりするぐらいだ。
それが不思議だったから都は聞いてみた。
「銀はもう私に触れたいと思ったりしないの?」
銀は目を見開いた。
「触れてもいいのか?」
そう言い抱きしめられた。
そんなつもりで言ったんじゃなかったのだが素早く抱きしめられてしまった。
幸いここは都の部屋だ。誰にも見られない。
「俺は都にいつも触れたいと思っている。だが、都が嫌がるだろうと我慢していた」
(我慢していたのか・・・)
ひんやりしたからだが少し心地よかった。
不思議と嫌悪感はない。
だから都はそのまま抱きしめられたままでいる。
しかし長い抱擁だ。
そろそろ恥ずかしくて離して欲しくなってきた。
その時だった。
真上から声がした。
「へぇ、それがお前の花嫁か」
上を見ると銀と同じ白髪の男性が浮かんでいた。
「兄さん、こういう時は邪魔しないでください」
「悪い。つい声をかけてしまった」
都は人に見られたことが恥ずかしくてするりと銀の腕から逃げ出した。
「兄さん?銀のお兄さんなの?」
「ああ、都。油断するな、兄は人を食す」
都を背に庇いそう告げた。
「愛しいと感じる者を食して何が悪い」
銀の兄は少し気分を害したようだった。
「兄は何人もの花嫁を娶ったが全て食した」
(それって・・・生贄になったって事なんじゃ・・・)
都は衝撃のあまり言葉を失った。
「銀も食べるの?」
「俺は食さない」
「本能的に食べたくなるのが自然だろう?」
「だが、食べたらもう触れられないし、声も聴けなくなるんですよ」
「・・・わかっているよ」
銀の兄に赤く煌く瞳で見据えられた。
その瞳は銀と同じものだった。
都はその場に立っていることが精一杯だった。
「今日は何の用ですか?」
「北側の山の斜面がこの間の長雨で崩れそうだぞ。それを伝えに来たのとお前の花嫁を見に来た」
銀の兄は都の手を取りキスを落とした。
その瞬間ぞくりとしたものが背筋を走った。
銀がすぐ割って入ってくれて助かった。
「兄さん、俺の花嫁に手を出すのは止めてください」
「分かってるよ。挨拶しただけだよ」
「俺の名は日吉。お前は?」
「み、都です」
「宜しく都。弟を頼んだぞ」
「・・・」
「都?」
日吉は不思議そうに都に声をかけた。
「私はまだ求婚を受け入れていません」
日吉は驚いて銀を見た。
「本当なのか銀!?」
「・・・はい」
「それなのに神域にいれるという事はやることはやったんだな」
その言葉を聞いた都は真っ赤になった。
「まぁ、いい。俺はもう行く」
「はい、報告ありがとうございました」
そう銀は返事をした。
「じゃあな都」
「・・・はい」
都は銀の兄を怖いと思った。
銀とはまた違う怖さがある。
出来れば関わりたくないタイプの人だ。
「兄が失礼な事ばかりして申し訳なかった」
「あ、大丈夫」
ちょっと驚いただけだから。
都はそう言ったが触れられた瞬間の恐怖は暫く忘れられそうもない。
一緒にお茶を飲んだり、食事をしたり。
外へ行き、山を散策したり、川で釣りをしたり色々していろんな話をした。
銀は都に必要以上触れてこない。
危ないときに手を貸してくれたりするぐらいだ。
それが不思議だったから都は聞いてみた。
「銀はもう私に触れたいと思ったりしないの?」
銀は目を見開いた。
「触れてもいいのか?」
そう言い抱きしめられた。
そんなつもりで言ったんじゃなかったのだが素早く抱きしめられてしまった。
幸いここは都の部屋だ。誰にも見られない。
「俺は都にいつも触れたいと思っている。だが、都が嫌がるだろうと我慢していた」
(我慢していたのか・・・)
ひんやりしたからだが少し心地よかった。
不思議と嫌悪感はない。
だから都はそのまま抱きしめられたままでいる。
しかし長い抱擁だ。
そろそろ恥ずかしくて離して欲しくなってきた。
その時だった。
真上から声がした。
「へぇ、それがお前の花嫁か」
上を見ると銀と同じ白髪の男性が浮かんでいた。
「兄さん、こういう時は邪魔しないでください」
「悪い。つい声をかけてしまった」
都は人に見られたことが恥ずかしくてするりと銀の腕から逃げ出した。
「兄さん?銀のお兄さんなの?」
「ああ、都。油断するな、兄は人を食す」
都を背に庇いそう告げた。
「愛しいと感じる者を食して何が悪い」
銀の兄は少し気分を害したようだった。
「兄は何人もの花嫁を娶ったが全て食した」
(それって・・・生贄になったって事なんじゃ・・・)
都は衝撃のあまり言葉を失った。
「銀も食べるの?」
「俺は食さない」
「本能的に食べたくなるのが自然だろう?」
「だが、食べたらもう触れられないし、声も聴けなくなるんですよ」
「・・・わかっているよ」
銀の兄に赤く煌く瞳で見据えられた。
その瞳は銀と同じものだった。
都はその場に立っていることが精一杯だった。
「今日は何の用ですか?」
「北側の山の斜面がこの間の長雨で崩れそうだぞ。それを伝えに来たのとお前の花嫁を見に来た」
銀の兄は都の手を取りキスを落とした。
その瞬間ぞくりとしたものが背筋を走った。
銀がすぐ割って入ってくれて助かった。
「兄さん、俺の花嫁に手を出すのは止めてください」
「分かってるよ。挨拶しただけだよ」
「俺の名は日吉。お前は?」
「み、都です」
「宜しく都。弟を頼んだぞ」
「・・・」
「都?」
日吉は不思議そうに都に声をかけた。
「私はまだ求婚を受け入れていません」
日吉は驚いて銀を見た。
「本当なのか銀!?」
「・・・はい」
「それなのに神域にいれるという事はやることはやったんだな」
その言葉を聞いた都は真っ赤になった。
「まぁ、いい。俺はもう行く」
「はい、報告ありがとうございました」
そう銀は返事をした。
「じゃあな都」
「・・・はい」
都は銀の兄を怖いと思った。
銀とはまた違う怖さがある。
出来れば関わりたくないタイプの人だ。
「兄が失礼な事ばかりして申し訳なかった」
「あ、大丈夫」
ちょっと驚いただけだから。
都はそう言ったが触れられた瞬間の恐怖は暫く忘れられそうもない。
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