白蛇の花嫁

都の帰宅

今日は都が帰る日だ。
しかし、銀は都を離そうとしない。
「銀、もう離して？」
「・・・」
無言のまま都を抱きしめ続ける。
都は困り果てた。
銀は都と離れるのを嫌がり、まだベッドの中で抱きしめている。
昨夜の銀はいつもより激しかった。
都は何とか銀の腕から逃れ体に力を入れ立ち上がった。
しかし、足ががくがくして上手く動けない。
「都、体は大丈夫か？」
「銀のせいであんまり大丈夫じゃない」
都がそう言うと銀は言った。
「それならもう一泊していくか？」
「それが目的で昨日は加減してくれなかったの！？」
銀は頷いた。
何て計算高い男だろう。
都はそれでも家族を心配させたくなくて家へ帰ることにした。
「私の帰りが遅いと両親が心配するから今日中には帰るわ」
都は床に座り込み、荷造りを始めた。
そんな都を後ろから銀は抱きしめた。
「分かってる。今日帰さなきゃいけないことなんて」
「・・・銀、休みの度に遊びに来るから迎えに来てくれる？」
都のその言葉を聞くと銀は喜んで、力を込めて抱きしめてきた。
「銀、苦しい・・・！」
「ああ、すまない。嬉しくてつい」
（その度に抱かれるのだろうなぁ・・・）
都はそう思った。
銀は都の限界が来るまで抱き続ける。
凄い体力だと思う。
さすが人外。
「でも銀、1人だと寂しい？」
「俺は1人じゃない。仲間がいるからな」
そう言い外を見た。
すると都を見送るためにたくさんの蛇たちが集まってきていた。
（うっ、1、2匹ならいいけど大量の蛇を一気に見ると迫力があるわ）
「そう・・・よね。私は少し寂しいわ」
「1匹連れて帰るか？」
「違う！！そういう意味じゃない！！」
やはり銀はずれていると思う。
今となっていはそういう所も可愛く見える。
「では、どういう意味なんだ？」
「・・・銀に会えなくて寂しいと言ったのよ」
銀は目を見開き驚いている。
都は何故ここで驚くのだろうと思った。
普通好きな人に1週間でも会えないと寂しいものじゃないのだろうか。
「銀は仲間がいるから寂しくないんでしょ」
少し拗ねたように言うと銀がキスしてきた。
「俺は都がいないともう生きていけない。それくらい寂しい」
「・・・！」
情熱的な告白だった。
「でも、私は普通の人間だから銀より先に死んでしまうわ」
「その事なんだが・・・都はもう普通の人間ではない」
「え？」
「俺と契りを交わして都は神に近い存在になっている。寿命も俺と同じ位長くなったはずだ」
「！？」
「だから安心して嫁いで来い」
今度は熱烈な求婚だ。
「嘘、私そんな話聞いてない！！」
「言ったら好きになっても契らなかっただろう？」
「うっ、それはー・・・」
（当たり前だ。自分が人間ではなくなると知っていれば契ったりしなかった・・・）
銀は二ィっと笑い、言った。
「これで都は永遠に俺のものだ」
こういう所は日吉と似ている。
やはり兄弟だ。
「油断した・・・もっと色々確認するべきだった・・・」
「今更後悔しても、もう遅いからな。俺は都を離す気はないからな。逃げられると思うなよ」
都は色々な驚きで言葉を失った。
いろいろ話しながら都は荷造りを終え、帰る用意が出来た。
荷物を持ち立ち上がった。
「・・・銀、私を元の世界へ帰して」
「本当に行くんだな」
「うん」
「・・・」
「またすぐ会えるわ」
「・・・ああ」
そう言い都を横抱きにし、銀は飛んだ。
そして都のいるべき世界へやって来た。
都を家の前に降ろし、最後に軽く触れるだけのキスをして去って行った。