自殺志願少女と獣の王

えりー

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唯奈

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唯奈は獣の王リハに守られながら生活している。
明日は城外へ連れて行ってくれるらしい。
どうして、リハはこんなにも唯奈に優しくしてくれるのだろうか。
唯奈は分からずにいた。
唯奈は怖くて聞けなかった。
もし、肥やして食べる為だったり悪い方へ考えが行ってしまう。
きっと何か事情でもあるのだろうか。
そう思うように唯奈はした。
唯奈はもうリハの事を恐れてはいない。
初めは怖かったが徐々に慣れていった。
リハがあまりにも優しい為、それに甘えている自分がいることを自覚している。
リハから”強くなれ”と言われたとき、返事が出来なかった。
なかなか強くなるというのは難しいことだと唯奈は思った。
今は誰も、唯奈を虐めない。
しかし、記憶の中ではいつも虐められていた記憶しか残っていない。
その事が頭からどうしても離れず、唯奈を弱くする。
唯奈は全て前の世界の事を忘れたいと願っている。
だが、なかなかうまくいかないものだ。
唯奈は自分が最近少しおかしい事に気がついた。
リハに触れられると胸が高鳴る。
先日、転びかけたところをリハに助けられて以来胸の高鳴りが治まらない。
もしかしたら王であるリハを好きになってしまったのではと不安になる。
だが、好きになったとしても相手は王だ。
しかも種族が違う。
相手は狼で自分は人間だ。
例えこの想いが恋だとしても叶うはずない。
そんな事は分かっているが、気持ちのコントロールが上手くできない。
リハの傍に寄ると反射的に体が硬くなり、顔が赤くなる。
リハはその事に気付き始めている。
もしこの気持ちが恋で、リハに知られたらどうなるのだろうかと心配になる。
今まで恋なんてしたことがない唯奈だが、これが恋なのだと自覚できる。
唯奈はその晩悩んだ。
悩んだところで答えを出すことなんて出来ないけれど、考えずにはいられなかった。
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