自殺志願少女と獣の王

えりー

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唯奈の想い

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唯奈はティから軟膏を受け取った。
「本当に塗ってやらなくて大丈夫か?」
「大丈夫です!!」
真っ赤になりながらそう言うとやはり愉快そうに笑う。
その笑顔はリハに似ていた。
「どうした?人の顔をじっと見て」
「いいえ、何でもないです」
ふいっと顔を背けるとティは唯奈の顔を両手で挟み、自分の方へ向かせた。
「今、兄貴と似ていると思ったんだろう?」
その言葉にドキリとさせられた。
「そ、そんな事・・・無いです」
「唯奈は正直だな。わかりやすい」
「!」
唯奈は顔に手をあてそんなにわかりやすい表情をしていたのかと思った。
「本当に兄貴から乗り換えてもいいんだぜ?それが嫌なら代わり位させてくれよ」
「か、代わり?」
「恋人ごっこでもいいからさ」
「ふ、ふふふ。貴方からそんな言葉が出るなんて思わなかったわ」
拗ねたように顔を赤くしてティは言った。
「俺はそれほどお前に惚れているんだ・・・ようやく笑ったな」
「久しぶりに笑った気がする。ありがとうございます」
満面の笑みをティへ向けた。
ティはその笑みを見て嬉しくなった。
初めて自分に向けられた笑みだったからだ。
ティは唯奈を抱きしめた。
唯奈はベッドの上で暴れた。
「嫌です。また何かする気ですか!?」
「いいや、何もしない」
「じゃあ、一体どうしたんですか?」
「・・・」
唯奈は真っ赤になっている。
そんな唯奈を見て言った。
「本気なんだ。今度は食べたりしない。大事にする。だから俺を選んではくれないか?」
唯奈はその真剣な声音が心に響いた。
「・・・私はティ様の事初めは怖かったし嫌いでした」
「今は?」
「今は友人として好きです」
「どうやったらお前の心が手に入る?」
泣きそうな声だった。
「私はもう心に決めた人がいるので、ティ様を恋愛対象として見ることは出来ません」
「・・・そうか」
そう呟き唯奈を抱く手に力が込められた。
「く、苦しいです。ティ様・・・」
「ああ、人間は弱い生き物だったな。すまない」
唯奈は本当はティの事も好きだ。
恋愛感情に近い感情を持っている。
しかし、自分にはもうリハがいる。
唯奈は何度考えてみてもリハしか目に入らなかった。
「ティ様、そのお気持ちだけもらっておきますね」
もっと違う形であっていたら彼と恋に落ちていたかもしれない。
唯奈はそう思った。
だが、唯奈が愛しているのはリハだけだ。
他に好きな人がいたとしてもリハ以上愛せない。
「あの、ティ様、そろそろ離してください・・・」
「もう少しこのままでー・・・」
唯奈はティの背に手を回し抱きしめ返した。
これが精一杯の気持ちの返し方に思えたからだ。
「唯奈・・・」
ティは驚いていた。
「ティ様、好きになってくださってありがとうございます」
元々、誰からも好かれない世界から逃げたくてあの屋上から飛び降りた。
それなのに今は2人から好かれている。
こんなに幸せなことはない。
でも気持ちに応えられるのは1人だけ。
それはティではなくリハだ。
今彼は何を思い、何をしているのだろうか・・・。
そればかり考えてしまう。
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