図書館から異世界へ2(第二部)

えりー

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図書館から異世界へ第2部 その3

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愁宋は綾香を気に入っている。ああやって心配してくれるところや気が強くて優しいところもすべて愛おしいと思っている。
このまま元の世界に帰らずに自分の元に残ると言ってほしい。
だが、それはそんなに容易でないことくらい愁宋にも分かっている。昔のがそうだったように。両親や、友人と引き離されることは身を切られるようにつらいことだ。
それを彼女に強要してはいけないと頭ではわかっている。
しかし、彼女が欲しいと強く願う自分がいる。
一体どうしたら彼女の心は自分のものになるのだろう。
最近考えるのはそのことばかりだった。

「はぁ、本当にうまくいかないことばかりだな」
(今はとりあえず南地区のことに集中しよう)

愁宋は手に杖を持った。柄長い杖で、中心となる棒に取っ手とその上部に3段に分けて、小さな鈴を15つけている。
そして柄には緑、黄、赤、白、紫の細い布がついている。
綾香の国で言うと、巫女舞の時に使うものに近い。

綾香は加賀と沙希に連れられ高台へと上がっていた。遠目に愁宋がみえる。
「沙希ちゃん、愁宋は・・・大丈夫かな?」
「はい、きっと大丈夫ですよ!」
「・・・」
加賀は黙ったままだった。
「加賀さん?どうしたんですか?」
「あっ、いや、なんでもありません」
(?)
「ほらそれより始まりますよ」
愁宋のほうを指さしてそう言った。
そう言われ綾香は愁宋の無事を祈りながら、彼を見た。
愁宋は宙に浮いていた。あの光の道の時のようにふわりと浮かんで杖を振っている。
まるで巫女舞でも舞うかのように。
シャランシャランと鈴を鳴らし、華麗に舞い続ける。
すると空が曇りはじめ、辺りは暗くなり冷たく湿った風が吹きだした。
(なんて綺麗なのかしら)
暗くなり始めても愁宋の周りは淡い光で包まれているように見える。
愁宋の舞は20分くらい続いた。
愁宋はひび割れた大泉の土に杖を突きさした。
すると空から雨が降ってきた。
雨だけではなく風も強い。まるで台風の中にいるようになった。
愁宋は杖を突き立てたまま動かなくなった。
(愁宋?)
「沙希ちゃん、私、愁宋のところに行ってくる」
沙希の返事も聞かず心配のあまり駆け出していた。
後ろから沙希の声が少し聞こえたが、そんなことを気にしている余裕もなかった。
(愁宋の様子がおかしい。あれから全然ピクリとも動かない)
慌てて高台を駆け下りたせいで足が痛んだ。それでも綾香は愁宋の元へ頑張って走った。
「愁宋!!」
「・・・」
「どうしたの?」
そう問いかけながら彼の肩に触れた。その瞬間愁宋の体は地面に崩れ落ちた。
愁宋の体はまるで氷のように冷たくなっていた。
(気を失っている!)
「加賀さん!沙希ちゃん!助けて!愁宋が・・・!」
そう言うと綾香を追ってきていた加賀が愁宋の体を担ぎ上げた。
「やっぱりこうなったか・・・」
彼はひとり呟いて愁宋を安全な幕屋に連れて行った。
綾香は加賀の独り言が妙に気になった。

(どうしようこのまま目を覚まさないなんてことないわよね?)

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