妖王のお迎え

えりー

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蛍は信じられないことに遭遇した。
妖の王に何故かプロポーズを受けた。
それだけならまだしも、もう黄泉の食べ物を口にしたから人間界へは帰れないと言われた。
そんな事信じられない。
信じられるはずがない。
(本当にこれは現実なのだろうか・・・)
そう思い自分の頬をつねってみた。
痛みがある。
やはり現実のようだ。
これが夢ならどんなにいいか。
蛍はそう思った。
イケメンの妖王にプロポーズ・・・さすがにそれは受けられない。
自分はただの人間なので受けられないと思った。
もし自分が妖だったらきっと二つ返事で返しただろう。
しかし、人間と妖の婚姻は問題があるのではと蛍は思った。
だからあえてその話題は避けた。
蛍は人間界にもう帰れないことにショックを受け泣き出した。
外に人の気配があったが気にしてられない。
とめどなく涙があふれてくる。
妖王はなんてことをしてくれたんだ。
もう学校にも行けないし家にも帰れなくなってしまった。
それが悲しい。
蛍は妖王が嫌いなわけではない。
(ただ食べ物を口にする前に言ってくれればよかったのに・・・)
そう思っただけだ。
妖にはきっと人間の気持ちは理解できないだろう。
でも蛍は妖の事が好きだ。
人に危害を加える妖にまだ出会ったことがないからそう思うのかもしれない。
今までであった妖たちは皆気のいい者ばかりだった。
蛍は妖に対して油断していた。
特に妖王には気を付けるべきだった。
あの美しい外見に見惚れてつい油断してしまったのだ。
蛍の好みの外見をしている妖王が悪い!
蛍は理不尽な怒りを彼にぶつけたくなった。
この世界はどういう風になっているのだろう。
これからこの世界で生きていかなければいけないのなら知っておかないといけないだろうと蛍は思った。
明日、妖王に聞いてみよう。
この世界での生活の仕方などを・・・。
今日の所はもう疲れたので休むことにした。
ベッドに転がり天井を見る。
天蓋付きの乙女チックなベッドだった。
蛍はそんな事を考えながら眠りに落ちていった。
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