妖王のお迎え

えりー

文字の大きさ
上 下
8 / 25

外が危険な理由

しおりを挟む
私は、冬真から距離を取りながら会話をするようにした。
また押し倒されをされるのは怖かった。
あの時ただ断りに行っただけなのになぜかああいうことになってしまった。
今思い出しても顔が赤くなる。
あんな大人がするような事を彼はしようとしたのだ。
しかも、無理やり。
どんなに嫌がっても止めてもらえなかったが何故か一人で納得したように途中で行為を止めた。
今思うと何故、あの途中で止めたのだろう。
そして今日もプロポーズされている最中だ。
「私と結婚しよう。悪いようにはしないし、ある程度の望みは叶えてやる」
「無理よ。昨日も言ったじゃない」
周りの妖たちはひやひやしながら見守っている。
「まぁ、まぁ、蛍様。そう言わず妖王様に嫁いでくださいませんか?」
「そうですよ。何の問題もないではないですか」
「何を戸惑っておいでなのですか?」
皆口々に結婚を薦めてくる。
「だって、私は人間だし・・・妖王のお嫁さんにはなれそうにないわ」
「では、一体どうすれば私の事を意識してくれるんだ?」
「え?」
「これからは妖王としてではなく冬真として見てくれないか?私の事を人間だと思えばいい」
(それはちょっと無理があるんじゃ・・・)
「・・・わかった」
とりあえずこの場を収めるためにそう言った。
本当に彼を人間として見れるか自信はなかったが、この状態から脱出するにはこういうしかなかった。
「ああ、蛍。この宮殿から外へ出るなよ?危険な者がたくさんいるからな」
その言葉を聞いて昨日の血まみれで戻ってきた彼を思いだした。
背筋がぞくっとした。
「わ、わかったわ」
そう言うと冬真はまた外へ出て行った。
他の妖に冬真が何をしに外へ出ているのか聞いてみた。
すると思いがけない答えが返ってきた。
「蛍様を狙って攻め込んでこようとしている妖たちを一掃しているのです」
「え!?どうして私が狙われてるの?」
蛍は驚いた。
「それは・・・人肉は美味だからです」
「それと処女の血肉は我らに力を与えます」
「・・・」
そんな理由で狙われていたなんて知らなかった。
(ん?何故皆私が処女だと知っているのだろうか・・・?)
「何で処女だと知っているの!!?」
「妖王様がそうおっしゃたからです」
蛍は羞恥で顔が真っ赤に染まった。
そして軽く眩暈を覚えた。
(ああ、だからあの時冬真は私を抱くのを止めてくれたのか・・・)
そう思うと妙に納得できた。
(それ以前に皆に言いふらさなくてもいいのに・・・!!)
蛍は少し冬真を憎く思った。
そんなデリケートなことをここに居る妖たちは皆知っている・・・。
それこそ信じがたいことだった。
(私はここではプライバシーはないのだろうか・・・)
恥ずかしくて泣きそうになった。

今も私の為に戦ってくれてるてことなの?
冬真は何も言わないからわからなかった。
それより怪我をして戻て来ないといいと思った。
昨日は返り血だけだったが、毎回そうだとは限らない。
蛍は心配になった。

”人間として見ればいい”・・・か。なかなかいいアイデアだと思うけれど、それで好きになえるのだろうか?確かに人間だったら付き合っていたかもしれない。
だって冬真は私の好みのタイプの顔と体つきをしている。
私は難しいけれど彼を人間として見ることにしてみた。
しおりを挟む

処理中です...