ウチのクソ親父が冒険者だったようです

ねこ沢ふたよ

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冒険者は多くを語らない

洞窟

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 あの通行証を見つけてから、しばらく経った朝。
 俺は、親父の後を付ける悠里を見つけた。

「お前! 何やってるんだよ! 学校は??」

「だって気になるじゃない! こっち、駅とは反対方向よ? きっと、朝っぱらから、あの『マッサンドルフ』とか言うマニアな店に行こうとしてるのよ!」


 確かに悠里の言う通り、親父の行く方向は、駅とは反対方向。こっちに向かったって、何があるというのか。怪しい。

「マッサンって、きっとキャバクラのママの名前よね? そのマッサンに真面目なお父さんが騙されているなら、文句の一つも言うべきじゃない?」

 そう、悠里は主張する。

「きっと、お父さんが安月給なのも、本当はもうちょっと貰ってて、そのマッサンに貢ぎまくっているからじゃないかと思うのよ!」

 許せない! と悠里が憤る。

 これは、俺が説得したところで、後には引きそうにない。
 悠里が気が済むのならと、俺も後をついていく。

 電柱の陰に隠れ、木の陰に隠れ。
 街外れからドンドンと親父はスーツ姿で山を登っていく。

 やま? ということは、『マッサンドルフ』とは、こんな山の中にある店なのか?
 おっと、意外にも、キャバクラではなくて、キャンプ場だったのかも? ということは、親父は、時々気分転換にソロキャンプを楽しんでいたとか?

 スーツ姿で? 親父が?

 疑問だらけの俺達の先を親父が歩き続けて。
 たどり着いたのは、熊が冬眠に使いそうな大きな洞窟。親父は、そこに迷いもなく入っていく。

「ずいぶんマニアックな店ね」

 『マッサンドルフ』がキャバクラと信じて疑わない悠里は、ブツブツ言いながらも、親父の入っていった洞窟に足を踏み入れる。
 当然、俺も悠里と一緒に洞窟に入るが、何かがオカシイ。

 光ゴケ?

 ぼんやりと青白く光る岩肌。
 外界とは何やら違う空気感に俺は怯むが、悠里はドンドン先に進んでいく。

「お、おい! 悠里! お前、これやばいって!」

 先へ進もうとする悠里の腕を掴む。

「何でよ? 平気だって! だってお父さんも先に入っているのよ? きっと……何? あれ?」

 俺の後ろを指差して悠里の表情が凍る。
 俺が振り返って、悠里の指差す方向を見てみれば、大きな蝙蝠こうもりがこちらを見ている。

 わ、笑ってる?

「どなたかな?」

 確かに今、人間の言葉を蝙蝠が喋った。
 俺と悠里は、慌てて蝙蝠のいる方向とは逆の方向……つまり、洞窟の奥へと走り出す。
 背後に蝙蝠の羽の音が聞こえる。

 後を追ってきているのだ!

 生意気な妹だけど、はぐれる訳にはいかない! 俺は悠里の手を握って、悠里を連れて逃げる。
 
 めちゃくちゃに走ってその先に見えたのは、大きな門。

「お、お兄ちゃん! あれ! あれが店の入り口?」

 悠里の脳内では、まだここはキャバクラの通路的な何からしい。

 なんだか仰々しい門だ。だが、ここを通ったらどうなるかなんて、考えている余裕は、俺達には無かった。

 俺達は、喋る蝙蝠から逃げたい一心で、その門の中へ飛び込んだ。
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