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それぞれの成長
黄虎の商店
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西寧は、陽明の渡した紙きれに書いていた、黄虎の国の商人に匿われることになった。
黄虎の国は、武術に長けた青虎の国とは違い、貿易など商売の盛んな陽気な国。
大きな歓楽街や、罪人や孤児を扱う奴隷商人もいる。利が優先される国柄。
追っ手は、国外までは手を出さなかった。国外に出たのであれば、幼子一人、死んだも同然と考えたのだろう。国外に手を出すには、外交上の問題もあったのかも知れない。
幸運なことに、商人は、西寧を、死んだ陽明の子と思っており、王子であることは知らなかった。知っていれば、青虎の国に高値で売りさばいていただろう。
西寧は、その商人の家の下働きとして生活をすることとなった。
西寧が、最初に渡されたのは、雑巾一枚。それだけが、西寧の財産だった。
西寧は、自らが青虎の国の西凱王の子であることは、育ててくれた陽明に言い含められていたので知っていた。会ったことのない父。西凱王は、武勇に長けた英雄王と呼ばれている。
こんなところで、商店の下働きをしている西寧とは、雲泥の差だ。
もし、ここで西寧が西凱王の子だと名乗っても、鼻で笑われるか、何かの取引の材料にされるか。何の得にもならない。
西寧は、本能的に、王子であることを隠して生活をした。
誰かのおさがりのボロボロの服、何人もの大人が眠る部屋のすみに寝泊まりして、店のまかないの残り物が食事だった。
六歳の西寧の仕事は、宝石から異国の雑貨まで扱う店の床や硝子を磨くこと。
毎日、一生懸命働いても、誰も褒めてはくれず、黒い毛並みの西寧をみると、ゴミをみる目で嫌がり、唾を吐いた。西寧の綺麗にした床を、わざと泥まみれに汚してくるような者もいた。
このままでは、遅かれ早かれ野垂れ死ぬだろう。陽明の願いは、叶えてやることはできない。
西寧は、自分を庇って死んでいった陽明のために、王宮に戻り国王になる努力をしようと決めていた。
だけれども、自分の手には、何もない。あるのは、雑巾一枚。それと自分の身一つ。
では、どうするか。
幼い西寧は一生懸命に考えた。
幸い、西寧をここまで育ててくれた陽明は、読み書きを教えてくれた。簡単な算術も、なんとか理解できた。
西寧は、店の商品の価値を覚えた。
高価なもの、価値のあるものは何か。同じような品でも、どちらが高いのか。宝石の偽物と本物の違いは何か。
周囲の者に嫌がられながらも、しつこく質問して、少しずつ覚えていった。
礼儀正しくしておくことで、攻撃してくる大人も減ると知って、客や目上の者の前では、自分のこと『俺』から『私』と呼ぶように変え、大人の真似をして、客に話す時の言葉遣いを覚えた。
時間が空いた時に、ボロボロの服を洗濯して繕い、ましにみえるように工夫した。
「いらっしゃいませ。明院様」
西寧は、常連の客の名前を覚え、来店時に戸を開きながら一礼した。
「うん、君の顔を見に来たよ」
常連の明院は、そう言って、西寧の頭を撫でてくれた。
「西寧君は、毎日がんばるね。頑張って働いている者をみるのは楽しいよ」
明院は、幼い西寧によくそう言って、褒めてくれた。
ボロボロの服を着る西寧に、古着だと言って服をくれたり、菓子を土産に持ってきてくれたのは、明院のような好意的な常連客だった。
西寧は、客から頂いた菓子は、店員達に配って皆で食べるようにした。
そうすることで、店員達と西寧は、仲良くなった。物をもらった時に、西寧は、どんな小さな物であっても覚えていて、その客と次に会った時には、この間はありがとうございますと、小さなお礼状を渡して礼を言った。
常連客達も、ますます喜んで西寧に土産を持って行くようになった。
相変わらず、毛並みを見ただけで意地の悪いことをしてくる者もいた。
中でも腹の立つのは、商人の娘。
西寧が物に触れると、触れるだけで穢れると嫌な顔をした。
ある日のやり取りもそうだった。
店に来た商人の娘の肩に虫がついてたので、取ってやった。
「何するのよ。汚い!」
商人の娘は、火が付いたように怒り出した。
「む、虫がついておりましたので。……ですが、手は洗っております」
と言えば、
「生理的に無理なのよ」
と、商人の娘は睨んできた。
確か、西寧と同じ年頃の娘。
何不自由なく学校に通い、何の工夫をしなくても、飢えることも命の危険もない。なのに、何が不満で西寧に攻撃してくるのか、さっぱり分からなかった。
何か気に障るようなことでもしてしまったのかと悩んでいたら、
「お嬢様は、昨日、お父様に、西寧がこんなことが出来るのにお前はそんなことも出来ないのか。と、叱られたのですよ」
店員の一人が、そう耳打ちして教えてくれた。
迷惑な話だと西寧は思った。
要は、とばっちりだ。娘が何を出来なくても、西寧には関係ない。
西寧は、最大限突っ張って自分を大きく価値のある物に見せなければ、即日捨てられて野たれ死ぬ立場だ。親に大切にされた娘とは立場が違う。
出来れば、打ち負かしてやりたい気もある。だが、経営者の娘と仲が悪い。それは、大きなマイナス点にはならないだろうか。西寧としては、こんな下らないことで波風は立てたくなかった。
仲良くするべきなんだろうな……。
同じような年頃の娘だから、今後も長い付き合いになるかもしれない。
だけれども、同じ年頃の娘に好かれるには、どうしたらよいのだろうか。
学校に行ったこともない西寧には、全く分からなかった。
仲良くなった店員達に聞いてみたら、好きな女の子でも出来たのかと揶揄われた。
西寧としては、それどころでは無いのに。
分からないなら、仕方ない。
解決しない問題をそのままにしておくのは、気持ち悪かったが、西寧は、この件は、捨て置くことにした。商人の娘は、あまり店に顔を出さない。これ以上関係が悪化することもないだろうと、高を括っていた。
問題は、色々を山積みだったが、西寧の暮らしは、ここに来た時よりも、ずいぶんマシになった。
八歳になる頃には、西寧は帳簿の計算が分かるようになった。
出来ることが増えたおかげで、任される仕事はますます増えて、行動範囲も広がった。仕事が出来れば、少しだが、給与ももらえるようになった。
ある日、西寧は、店員について、仕入れに行った。
「あれ、この衣は秋には、これの倍の値段で仕入れていませんでした?」
西寧がそう聞けば、問屋は笑った。
「今は、春だからね。冬物は、売れなくなる。倉庫は空にしておきたいから、売れ残りは安くなるんだ。特に、衣装は流行もあるからね。去年の在庫など、皆持ちたがらない。季節によって値段は、相当変わるさ」
問屋は教えてくれた。
なるほど、物の値段は、ずっと同じではないらしい。皆が欲しくなる時に高くなり、皆が欲しがらない時期には、安くなる。季節やお祭りの前などのタイミング。流行、販売する場所。様々な理由で、物の値段は変化する。
「難しいですね。倉庫に置いておくと、痛んだりして損失になりますし。倉庫には、売れるものを入れておきたいですし」
西寧は、考える。
どの地方で、どのような物が一ヶ月先に売れるのかを判断できるようになれば、商売はやりやすくなるのではないだろうかと。
例えば、天候から気温を予想して、去年売れた物がどのような条件でどう売れたのかを丁寧に分析しておくことで、大きな利が産まれるのではないかと。
ならば、必要なのは、様々な条件を記録すること。売れた理由や売れなかった理由を、逐一分析すること。西寧は、店の帳簿を研究して、自分なりに分析を重ねた。たった八歳の子どもの分析。思い込みや間違いが多い内容だったが、日々重ねることで、精度は次第に上がっていた。
このままでは、俺は、王様ではなく、商人になりそうだな。
西寧は、思う。
だが、もし国王になるとしても、ただ王家の血を引くだけで王座につけないことは分かっているし、商人の利を優先する考え方は、西寧には、分かりやすかった。大きすぎる目標にどう手を伸ばすかを考えやすくなった。西寧が何か、王座と取引できる物が無ければならない。
王としての才能? 皆を率いるカリスマ性?
どれも、今の西寧には、持ち合わせては、いなかった。命がけで自分を守ってくれた陽明の望みを叶えてやるためには、足りない部分を補い続けなければならない。
まずは、商人として一流になって、そこから玉座を取引しなければなるまい。
西寧は、誰よりも熱心に一人前の商人になるために勉強した。
そのためには、先輩の話をじっくり聞くべきだろう考え、西寧は、店員達の話によく耳を傾けた。店員達も、自分たちの話を熱心に聞く西寧に、話すのが楽しくなった。
西寧は、話を聞くタイミングを見るのが上手くなり、煙草を吸って休憩して話をしている時や、食事の後の雑談に積極的に交じりに行った。偶然に落ちてきた荷物で怪我をした痛みで幻術を見破った話。人間界で人間が空を飛ぶ方法。様々な場所に仕入れにいく店員達の話は、どれも面白かった。
西寧は、旅をする気分でその話を聞いていた。
「可愛いね。妖力で作ったのかい?」
店員の一人が西寧に声を掛ける。小さなネズミほどの大きさの黒い虎。休憩室の机の上を走り回って消えた。西寧が、小さな虎を妖力で顕現させた。
「はい。妖狐が狐を顕現させると聞いて、うらやましくて。工夫して作ってみました。でも、小さいし、すごく疲れるので、一瞬しか出せません」
西寧は、ため息をつく。
これでは、役立てるには、まだまだ妖力が足りない。
虎精は、普通妖力は、自分の力の強化や覇気で威嚇する時に使う。商人である店員達も、荷物を運ぶときなどに妖力を使っている。こんな風に、妖狐の真似をして自らの妖力を具現化するような使い方をする者は少ない。だから、教えてくれる人もおらず独学でコツコツと練習している。
「そりゃ、妖狐の妖力と我々の妖力は、質が違う。まあ、伝説の白虎様なら何でも可能だけれども、我々のような並みの虎精では、妖力も足りない」
店員達が、子どもの遊びと、西寧の努力を笑う。西寧も苦笑いをかえす。大人たちの言う通り役立つようにするには、まだまだ鍛錬は足りない。妖力も足りない。だけれども、形を作ることは成功している。ならば、いつかできるかもしれない。
「おっしゃる通りでしょうね。でも、可愛いでしょ?役立ちはしないかも知れませんが、少しでも長く出せるように、練習してみます」
西寧の言葉に、休憩室にいた大人が皆笑う。子どもっぽい遊びだと思ったのだろう。
ただ、雑巾一枚持って転がっていた少年は、店員達に一目を置かれる存在になり、店の陳列を手伝い、接客を任されるようになった。
「すごいね。君は」
常連客の明院は、西寧が、時が経つにつれて出世するのを、楽しみにしていると言った。面白い余興とでもとらえているのだろう。明院は、いつも、高価な服を着て高い物を買っていく。この黄虎の国の大臣の一人なのだと、店員が言っていた。
明院は、よく西寧に声を掛けてくれるが、西寧は、警戒していた。
気を抜けば、喰われる。
それが、明院に抱いた感想だった。
顔が笑っていても、目はいつも笑っていないのだ。優しい言葉を発していても、その目はいつも厳しい。冷酷な眼差し。あっさりと残酷なことを言う。
部下の男が、明院に失敗の報告をする場面を見た。明院は、振り向きもせず、ならば消えろとだけ言った。
「消えろ」
これが、単なる解雇を意味するのか死を意味するのか分からないが、部下の男は、青ざめて震えていた。その場に伏して動けなくなっていた。
明院は、部下には目もくれず、その場を立ち去った。少しの慈悲もなかった。
西寧は、ゾッとした。
その後で、何事もなかったように店に現れた明院は、微笑みすらたたえていた。
「キミの顔を見るとホッとするよ。無能は見たくもないからね」
ポツリと言った言葉に、西寧は何とか笑顔を作り、ありがとうございます、と答えた。何も見なかったフリをした。そのこともあって、西寧は、明院には細心の注意を払って接していた。
その日、西寧が明院の好みそうな物を紹介すると、その中から何点か購入して、明院は満足して帰っていった。退店する明院のためにドアを開け見送って帰ってくると、商人の娘が、仁王立ちしていた。
「ムカつくのよね。黒い虎」
商人の娘が、睨んできた。西寧が、認められるのが、面白くないらしい。たいてい、西寧に何か言ってくるときは、学校の成績などで親に怒られた時。特に、西寧が何をしたわけでもないことが分かってからは、西寧は、気にせず流すようにしていた。
「申し訳ありません。お気に障るようでしたら、目の届かぬところに控えておきます」
丁度いい、明院が帰ったところだ。緊張して疲れたところだ。控室で休憩に行って、そこで休憩中の店員と雑談しよう。西寧は、さっさと、娘の傍を離れようとする。どうせ、理由はとばっちりだ。変な言いがかりをつけられて、しなくてもいい苦労をするくらいならば、距離を取るのが、一番の得だ。相手にする必要はない。
「待ちなさい。話は終わっていないの」
西寧を娘が引き留める。気に入らないならば、関わらないで欲しい。モヤモヤする気持ちを抑えて、西寧は、娘を見る。
「なんでございましょうか」
ニコリと、西寧は笑う。営業用の笑顔。本心は、全く笑っていない。
「気持ち悪い。笑わないでよ」
殴っては、駄目だよな。娘の言いがかりに、腹が立つ。あるいは、何か策を考えて陥れようか。明院の注文の品を娘が明院の前で壊すように仕向ければ、二度と店には来なく……いやいや、流石にそれは、可哀想だろう。やめておこう。西寧は、黙って娘の言葉を待つ。
「これ、解いてみなさい」
紙を一枚渡される。数字と記号が並んでいる。知らない記号がいくつかある。学校で習った物だろうか。学校には通っていない西寧には、初めて見る記号が分からない。分かれば、解けるのだろうが、知識が無ければ、解けるものも解けない。
「学のない私には、ちんぷんかんぷんでございます」
そう言って、娘に紙を返す。娘は、勝ち誇った顔をする。求めていた返答なのだろう。
「こんな物も分からないの。ノロマね。どうしてお父様は、こんなに間抜けな者が賢いだなんて思い込んでいるのかしら」
娘が、高らかに笑う。西寧は、娘の神経を疑う。経験が違えば、知っていることも違う。どうして自分と同じことを知っていなければ、馬鹿にしていいと思い込んでいるのだろうか。それでは、自分のできることしか成し得ない。自分と違うことを知っている人間を尊重して、より高度なことが出来るのではないのだろうか。
西寧は、やはりこの娘とは、気が合わないと感じる。
娘は、西寧を散々馬鹿にして満足したのか、そのまま店を出て帰って行った。
何しに来たのだろう?わざわざ、こんなことをしに?
西寧は、ますます分からなくなる。
商人の娘に言われてから、西寧は、学校の教科書を探した。店員に子どもの使っていたお古がないかを聞いたり、図書館や古本屋で尋ねたり。ゴミ捨て場も回った。
店員達には、お嬢様に揶揄われて悔しかったのだろうと笑われたが、違う。学校で習うのならば、恐らくは、知っていなければならない常識なのだろうと判断したからだ。
自分と価値観が全く違う者の言葉なぞ、気にする必要もない。そんなことを気にしているようならば、不吉の子として産まれた自分は、一歩も前に進めなくなる。
言いたいやつには、言わせておけばいい。
自分が目標のために必要か必要でないか判断して、必要ならば身につければいいだけのこと。西寧は、そうやって集めたボロボロの教科書で、独学で、学校で習うことの勉強も始めた。
陽明が教えてくれていた頃よりも、もっと学ばなければならないことが増えた。店の仕事もする中で、時間もない。
あの頃、弱音を吐いていた自分を笑いたくなる。あの頃は、まだまだ甘えただったのだと思う。自分が今いる場所がどん底だと信じて、そこから抜け出せば、もっと良くなると思い込んでいた。陽明に守ってもらって、教えてもらって。何の不服があろうかと、鼻で笑いたくなる。
だから、今の自分の立場を、どん底だとは思わない。まだ、働ける場所を持っている。学べる余地がある。ならば、それを最大限利用して、一番得をするように動くだけ。
西寧は、小さな身を一生懸命に突っ張って生きていた。
黄虎の国は、武術に長けた青虎の国とは違い、貿易など商売の盛んな陽気な国。
大きな歓楽街や、罪人や孤児を扱う奴隷商人もいる。利が優先される国柄。
追っ手は、国外までは手を出さなかった。国外に出たのであれば、幼子一人、死んだも同然と考えたのだろう。国外に手を出すには、外交上の問題もあったのかも知れない。
幸運なことに、商人は、西寧を、死んだ陽明の子と思っており、王子であることは知らなかった。知っていれば、青虎の国に高値で売りさばいていただろう。
西寧は、その商人の家の下働きとして生活をすることとなった。
西寧が、最初に渡されたのは、雑巾一枚。それだけが、西寧の財産だった。
西寧は、自らが青虎の国の西凱王の子であることは、育ててくれた陽明に言い含められていたので知っていた。会ったことのない父。西凱王は、武勇に長けた英雄王と呼ばれている。
こんなところで、商店の下働きをしている西寧とは、雲泥の差だ。
もし、ここで西寧が西凱王の子だと名乗っても、鼻で笑われるか、何かの取引の材料にされるか。何の得にもならない。
西寧は、本能的に、王子であることを隠して生活をした。
誰かのおさがりのボロボロの服、何人もの大人が眠る部屋のすみに寝泊まりして、店のまかないの残り物が食事だった。
六歳の西寧の仕事は、宝石から異国の雑貨まで扱う店の床や硝子を磨くこと。
毎日、一生懸命働いても、誰も褒めてはくれず、黒い毛並みの西寧をみると、ゴミをみる目で嫌がり、唾を吐いた。西寧の綺麗にした床を、わざと泥まみれに汚してくるような者もいた。
このままでは、遅かれ早かれ野垂れ死ぬだろう。陽明の願いは、叶えてやることはできない。
西寧は、自分を庇って死んでいった陽明のために、王宮に戻り国王になる努力をしようと決めていた。
だけれども、自分の手には、何もない。あるのは、雑巾一枚。それと自分の身一つ。
では、どうするか。
幼い西寧は一生懸命に考えた。
幸い、西寧をここまで育ててくれた陽明は、読み書きを教えてくれた。簡単な算術も、なんとか理解できた。
西寧は、店の商品の価値を覚えた。
高価なもの、価値のあるものは何か。同じような品でも、どちらが高いのか。宝石の偽物と本物の違いは何か。
周囲の者に嫌がられながらも、しつこく質問して、少しずつ覚えていった。
礼儀正しくしておくことで、攻撃してくる大人も減ると知って、客や目上の者の前では、自分のこと『俺』から『私』と呼ぶように変え、大人の真似をして、客に話す時の言葉遣いを覚えた。
時間が空いた時に、ボロボロの服を洗濯して繕い、ましにみえるように工夫した。
「いらっしゃいませ。明院様」
西寧は、常連の客の名前を覚え、来店時に戸を開きながら一礼した。
「うん、君の顔を見に来たよ」
常連の明院は、そう言って、西寧の頭を撫でてくれた。
「西寧君は、毎日がんばるね。頑張って働いている者をみるのは楽しいよ」
明院は、幼い西寧によくそう言って、褒めてくれた。
ボロボロの服を着る西寧に、古着だと言って服をくれたり、菓子を土産に持ってきてくれたのは、明院のような好意的な常連客だった。
西寧は、客から頂いた菓子は、店員達に配って皆で食べるようにした。
そうすることで、店員達と西寧は、仲良くなった。物をもらった時に、西寧は、どんな小さな物であっても覚えていて、その客と次に会った時には、この間はありがとうございますと、小さなお礼状を渡して礼を言った。
常連客達も、ますます喜んで西寧に土産を持って行くようになった。
相変わらず、毛並みを見ただけで意地の悪いことをしてくる者もいた。
中でも腹の立つのは、商人の娘。
西寧が物に触れると、触れるだけで穢れると嫌な顔をした。
ある日のやり取りもそうだった。
店に来た商人の娘の肩に虫がついてたので、取ってやった。
「何するのよ。汚い!」
商人の娘は、火が付いたように怒り出した。
「む、虫がついておりましたので。……ですが、手は洗っております」
と言えば、
「生理的に無理なのよ」
と、商人の娘は睨んできた。
確か、西寧と同じ年頃の娘。
何不自由なく学校に通い、何の工夫をしなくても、飢えることも命の危険もない。なのに、何が不満で西寧に攻撃してくるのか、さっぱり分からなかった。
何か気に障るようなことでもしてしまったのかと悩んでいたら、
「お嬢様は、昨日、お父様に、西寧がこんなことが出来るのにお前はそんなことも出来ないのか。と、叱られたのですよ」
店員の一人が、そう耳打ちして教えてくれた。
迷惑な話だと西寧は思った。
要は、とばっちりだ。娘が何を出来なくても、西寧には関係ない。
西寧は、最大限突っ張って自分を大きく価値のある物に見せなければ、即日捨てられて野たれ死ぬ立場だ。親に大切にされた娘とは立場が違う。
出来れば、打ち負かしてやりたい気もある。だが、経営者の娘と仲が悪い。それは、大きなマイナス点にはならないだろうか。西寧としては、こんな下らないことで波風は立てたくなかった。
仲良くするべきなんだろうな……。
同じような年頃の娘だから、今後も長い付き合いになるかもしれない。
だけれども、同じ年頃の娘に好かれるには、どうしたらよいのだろうか。
学校に行ったこともない西寧には、全く分からなかった。
仲良くなった店員達に聞いてみたら、好きな女の子でも出来たのかと揶揄われた。
西寧としては、それどころでは無いのに。
分からないなら、仕方ない。
解決しない問題をそのままにしておくのは、気持ち悪かったが、西寧は、この件は、捨て置くことにした。商人の娘は、あまり店に顔を出さない。これ以上関係が悪化することもないだろうと、高を括っていた。
問題は、色々を山積みだったが、西寧の暮らしは、ここに来た時よりも、ずいぶんマシになった。
八歳になる頃には、西寧は帳簿の計算が分かるようになった。
出来ることが増えたおかげで、任される仕事はますます増えて、行動範囲も広がった。仕事が出来れば、少しだが、給与ももらえるようになった。
ある日、西寧は、店員について、仕入れに行った。
「あれ、この衣は秋には、これの倍の値段で仕入れていませんでした?」
西寧がそう聞けば、問屋は笑った。
「今は、春だからね。冬物は、売れなくなる。倉庫は空にしておきたいから、売れ残りは安くなるんだ。特に、衣装は流行もあるからね。去年の在庫など、皆持ちたがらない。季節によって値段は、相当変わるさ」
問屋は教えてくれた。
なるほど、物の値段は、ずっと同じではないらしい。皆が欲しくなる時に高くなり、皆が欲しがらない時期には、安くなる。季節やお祭りの前などのタイミング。流行、販売する場所。様々な理由で、物の値段は変化する。
「難しいですね。倉庫に置いておくと、痛んだりして損失になりますし。倉庫には、売れるものを入れておきたいですし」
西寧は、考える。
どの地方で、どのような物が一ヶ月先に売れるのかを判断できるようになれば、商売はやりやすくなるのではないだろうかと。
例えば、天候から気温を予想して、去年売れた物がどのような条件でどう売れたのかを丁寧に分析しておくことで、大きな利が産まれるのではないかと。
ならば、必要なのは、様々な条件を記録すること。売れた理由や売れなかった理由を、逐一分析すること。西寧は、店の帳簿を研究して、自分なりに分析を重ねた。たった八歳の子どもの分析。思い込みや間違いが多い内容だったが、日々重ねることで、精度は次第に上がっていた。
このままでは、俺は、王様ではなく、商人になりそうだな。
西寧は、思う。
だが、もし国王になるとしても、ただ王家の血を引くだけで王座につけないことは分かっているし、商人の利を優先する考え方は、西寧には、分かりやすかった。大きすぎる目標にどう手を伸ばすかを考えやすくなった。西寧が何か、王座と取引できる物が無ければならない。
王としての才能? 皆を率いるカリスマ性?
どれも、今の西寧には、持ち合わせては、いなかった。命がけで自分を守ってくれた陽明の望みを叶えてやるためには、足りない部分を補い続けなければならない。
まずは、商人として一流になって、そこから玉座を取引しなければなるまい。
西寧は、誰よりも熱心に一人前の商人になるために勉強した。
そのためには、先輩の話をじっくり聞くべきだろう考え、西寧は、店員達の話によく耳を傾けた。店員達も、自分たちの話を熱心に聞く西寧に、話すのが楽しくなった。
西寧は、話を聞くタイミングを見るのが上手くなり、煙草を吸って休憩して話をしている時や、食事の後の雑談に積極的に交じりに行った。偶然に落ちてきた荷物で怪我をした痛みで幻術を見破った話。人間界で人間が空を飛ぶ方法。様々な場所に仕入れにいく店員達の話は、どれも面白かった。
西寧は、旅をする気分でその話を聞いていた。
「可愛いね。妖力で作ったのかい?」
店員の一人が西寧に声を掛ける。小さなネズミほどの大きさの黒い虎。休憩室の机の上を走り回って消えた。西寧が、小さな虎を妖力で顕現させた。
「はい。妖狐が狐を顕現させると聞いて、うらやましくて。工夫して作ってみました。でも、小さいし、すごく疲れるので、一瞬しか出せません」
西寧は、ため息をつく。
これでは、役立てるには、まだまだ妖力が足りない。
虎精は、普通妖力は、自分の力の強化や覇気で威嚇する時に使う。商人である店員達も、荷物を運ぶときなどに妖力を使っている。こんな風に、妖狐の真似をして自らの妖力を具現化するような使い方をする者は少ない。だから、教えてくれる人もおらず独学でコツコツと練習している。
「そりゃ、妖狐の妖力と我々の妖力は、質が違う。まあ、伝説の白虎様なら何でも可能だけれども、我々のような並みの虎精では、妖力も足りない」
店員達が、子どもの遊びと、西寧の努力を笑う。西寧も苦笑いをかえす。大人たちの言う通り役立つようにするには、まだまだ鍛錬は足りない。妖力も足りない。だけれども、形を作ることは成功している。ならば、いつかできるかもしれない。
「おっしゃる通りでしょうね。でも、可愛いでしょ?役立ちはしないかも知れませんが、少しでも長く出せるように、練習してみます」
西寧の言葉に、休憩室にいた大人が皆笑う。子どもっぽい遊びだと思ったのだろう。
ただ、雑巾一枚持って転がっていた少年は、店員達に一目を置かれる存在になり、店の陳列を手伝い、接客を任されるようになった。
「すごいね。君は」
常連客の明院は、西寧が、時が経つにつれて出世するのを、楽しみにしていると言った。面白い余興とでもとらえているのだろう。明院は、いつも、高価な服を着て高い物を買っていく。この黄虎の国の大臣の一人なのだと、店員が言っていた。
明院は、よく西寧に声を掛けてくれるが、西寧は、警戒していた。
気を抜けば、喰われる。
それが、明院に抱いた感想だった。
顔が笑っていても、目はいつも笑っていないのだ。優しい言葉を発していても、その目はいつも厳しい。冷酷な眼差し。あっさりと残酷なことを言う。
部下の男が、明院に失敗の報告をする場面を見た。明院は、振り向きもせず、ならば消えろとだけ言った。
「消えろ」
これが、単なる解雇を意味するのか死を意味するのか分からないが、部下の男は、青ざめて震えていた。その場に伏して動けなくなっていた。
明院は、部下には目もくれず、その場を立ち去った。少しの慈悲もなかった。
西寧は、ゾッとした。
その後で、何事もなかったように店に現れた明院は、微笑みすらたたえていた。
「キミの顔を見るとホッとするよ。無能は見たくもないからね」
ポツリと言った言葉に、西寧は何とか笑顔を作り、ありがとうございます、と答えた。何も見なかったフリをした。そのこともあって、西寧は、明院には細心の注意を払って接していた。
その日、西寧が明院の好みそうな物を紹介すると、その中から何点か購入して、明院は満足して帰っていった。退店する明院のためにドアを開け見送って帰ってくると、商人の娘が、仁王立ちしていた。
「ムカつくのよね。黒い虎」
商人の娘が、睨んできた。西寧が、認められるのが、面白くないらしい。たいてい、西寧に何か言ってくるときは、学校の成績などで親に怒られた時。特に、西寧が何をしたわけでもないことが分かってからは、西寧は、気にせず流すようにしていた。
「申し訳ありません。お気に障るようでしたら、目の届かぬところに控えておきます」
丁度いい、明院が帰ったところだ。緊張して疲れたところだ。控室で休憩に行って、そこで休憩中の店員と雑談しよう。西寧は、さっさと、娘の傍を離れようとする。どうせ、理由はとばっちりだ。変な言いがかりをつけられて、しなくてもいい苦労をするくらいならば、距離を取るのが、一番の得だ。相手にする必要はない。
「待ちなさい。話は終わっていないの」
西寧を娘が引き留める。気に入らないならば、関わらないで欲しい。モヤモヤする気持ちを抑えて、西寧は、娘を見る。
「なんでございましょうか」
ニコリと、西寧は笑う。営業用の笑顔。本心は、全く笑っていない。
「気持ち悪い。笑わないでよ」
殴っては、駄目だよな。娘の言いがかりに、腹が立つ。あるいは、何か策を考えて陥れようか。明院の注文の品を娘が明院の前で壊すように仕向ければ、二度と店には来なく……いやいや、流石にそれは、可哀想だろう。やめておこう。西寧は、黙って娘の言葉を待つ。
「これ、解いてみなさい」
紙を一枚渡される。数字と記号が並んでいる。知らない記号がいくつかある。学校で習った物だろうか。学校には通っていない西寧には、初めて見る記号が分からない。分かれば、解けるのだろうが、知識が無ければ、解けるものも解けない。
「学のない私には、ちんぷんかんぷんでございます」
そう言って、娘に紙を返す。娘は、勝ち誇った顔をする。求めていた返答なのだろう。
「こんな物も分からないの。ノロマね。どうしてお父様は、こんなに間抜けな者が賢いだなんて思い込んでいるのかしら」
娘が、高らかに笑う。西寧は、娘の神経を疑う。経験が違えば、知っていることも違う。どうして自分と同じことを知っていなければ、馬鹿にしていいと思い込んでいるのだろうか。それでは、自分のできることしか成し得ない。自分と違うことを知っている人間を尊重して、より高度なことが出来るのではないのだろうか。
西寧は、やはりこの娘とは、気が合わないと感じる。
娘は、西寧を散々馬鹿にして満足したのか、そのまま店を出て帰って行った。
何しに来たのだろう?わざわざ、こんなことをしに?
西寧は、ますます分からなくなる。
商人の娘に言われてから、西寧は、学校の教科書を探した。店員に子どもの使っていたお古がないかを聞いたり、図書館や古本屋で尋ねたり。ゴミ捨て場も回った。
店員達には、お嬢様に揶揄われて悔しかったのだろうと笑われたが、違う。学校で習うのならば、恐らくは、知っていなければならない常識なのだろうと判断したからだ。
自分と価値観が全く違う者の言葉なぞ、気にする必要もない。そんなことを気にしているようならば、不吉の子として産まれた自分は、一歩も前に進めなくなる。
言いたいやつには、言わせておけばいい。
自分が目標のために必要か必要でないか判断して、必要ならば身につければいいだけのこと。西寧は、そうやって集めたボロボロの教科書で、独学で、学校で習うことの勉強も始めた。
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あの頃、弱音を吐いていた自分を笑いたくなる。あの頃は、まだまだ甘えただったのだと思う。自分が今いる場所がどん底だと信じて、そこから抜け出せば、もっと良くなると思い込んでいた。陽明に守ってもらって、教えてもらって。何の不服があろうかと、鼻で笑いたくなる。
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