25億光年先のクエーサー

ねこ沢ふたよ

文字の大きさ
13 / 42

視線

しおりを挟む
「紗栄は、じゃあ、一度奈美から貴子が死んでいると聞かされていたの?」
「そうよ。私、昨日の帰り道で紗栄に、『どのみち貴子は死んでいたから、助からなかった』って、言ったもの」

 まさか、貴子の性格の悪い悪戯だとは思わないしと、奈美が付けたす。
 そっか、だから、貴子のお母さんが、貴子が部屋にいると言っていたと、私がメールした時に、紗栄はあんなに喜んでいたんだ。
 私は、昨夜、紗栄からのスタンプ付きの返信を思い出す。
 じゃあ、なぜ自殺なんか……
 私は、電話しながら、なんとなく部屋のカーテンを開ける。
 
「え……」

 カーテンの向こう側、道を挟んだ貴子の部屋に、貴子のお母さんが居る。
 こちらをジッと睨んでいる。
 憎悪を含んだ視線に、私は、ゾッとする。
 私が見ていることに気づいたのか、貴子のお母さんは、カーテンを閉めて姿を消した。

「どうしたの? ミライ」
「う、ううん。貴子のお母さんが、貴子の家の窓辺にいたの。すっごいこっちを睨んでた」
「え、なんで。東京に行ったんじゃないの?」
「分かんないけれども、貴子のお母さんは少なくとも、家にいるみたい」

 どうしてだろう。
 あんなに親子ベッタリしているのに。
 まだ手続きか何かがあるのだろうか。
 あ……

「違う。やっぱり、貴子は死んでいるんだ。貴子のお母さんは、嘘を付いている」

 整理すれば分かる。
 貴子は、あの時死んでいた。
 それは、奈美の変な方向に手が曲がっていたという言葉から考えても、慎也の見せてくれた写真を考えてみても明らかだ。
 だって、さすがにいきなりフラッシュをたかれて瞬きしない人間なんている?
 モデルだから慣れているかもだけれども、それだって、フラッシュを焚くって分かっているから、耐えられるのよ。
 貴子の写真は、目を見開いたままだった。
 生きている人間ではない。
 でも、貴子のお母さんは部屋に貴子がいると言った。
 貴子のお母さんは嘘を付いた。
 だって、死んだ貴子が、部屋にいるわけがないのよ。

「は? どうして、貴子のお母さんが、嘘をつかなきゃいけないのよ」
 
 奈美が鼻で笑う。

「分かんないわよ。私だって!」

 あんなに仲良しだった貴子のお母さんが、どうして貴子が部屋にいるって、嘘をついたのか。
 そんなのさっぱり分からない。
 でも、確実に分かるのは一つ。

「私、昨日、インターフォン押しちゃった」

 貴子のお母さんは、私が何か知っているのではないかと、疑っているのではないだろうか。
 貴子の死と関係する何かを。

「ひょっとして貴子のお母さんが、貴子を殺した?」

 慎也でもない、理人でもない。
 一番怪しいのは、貴子のお母さんではないだろうか。
 だって、確実に嘘を付いている。
 私は、背筋が寒くなる。
 もし、本当に貴子のお母さんが殺したんだったら、どうしよう。
 私も命を狙われるかな。
 ひょっとして、紗栄の死にも、貴子のお母さんが関係している?
 血の気が引く。
 紗栄は、本当に自殺だったのだろうか。

「あんたね。考えが飛躍し過ぎ。それこそ有り得ないわよ」

 奈美は電話の向こうで呆れている。

「ミライ、あんた変だよ。ちょっと、頭冷やしなね」
「え、ちょっと! 奈美!」

 奈美は、さっさと電話を切ってしまった。
 冷たい……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。

設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇 ☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。 ―― 備忘録 ――    第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。  最高 57,392 pt      〃     24h/pt-1位ではじまり2位で終了。  最高 89,034 pt                    ◇ ◇ ◇ ◇ 紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる 素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。 隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が 始まる。 苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・ 消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように 大きな声で泣いた。 泣きながらも、よろけながらも、気がつけば 大地をしっかりと踏みしめていた。 そう、立ち止まってなんていられない。 ☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★ 2025.4.19☑~

25年目の真実

yuzu
ミステリー
結婚して25年。娘1人、夫婦2人の3人家族で幸せ……の筈だった。 明かされた真実に戸惑いながらも、愛を取り戻す夫婦の話。

白い結婚の行方

宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」 そう告げられたのは、まだ十二歳だった。 名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。 愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。 この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。 冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。 誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。 結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。 これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。 偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。 交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。 真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。 ──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?  

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

処理中です...