25億光年先のクエーサー

ねこ沢ふたよ

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疑い

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 慎也からの電話、嫌な予感しかしない。

『ごめん、寝てた』と、慎也にメールすれば、すぐ電話が掛かってくる。

「ミライ、お前! 理人に何も言っていないだろうな?」

 電話に出たとたんにそれ?
 慎也の焦った声に、私は、ちょっとむかつく。

「言うわけないでしょ。だって、言って欲しくないって、慎也が言っていたんだし」

 見損なってもらっては困る。
 余程のことがなければ、内緒にしてほしいと言われた話を広めたりはしない。
 貴子が本当は学校に来たいって言っていたことも、私は誰にも言ったことはない。

「だよな。理人のやつめ。俺に脅しをかけて来やがった」

 慎也がブツブツ言っている。
 なるほど。
 私から情報を得られなかった理人は、慎也から直接聞き出そうと、「ミライから僕は全てを聞いているですよ」とか適当な嘘を言ったに違いない。
 それで焦った慎也は、私に鬼のように電話を掛けてきたのだ。

「で? 写真のこと、自分で理人に言っちゃったの?」
「写真のことは言ってない……でも……」

 もごもごと歯切れの悪い言い方を慎也がする。

「俺は、理人を……理人を疑っている」
「理人を? どうして?」
「だって、怪しすぎだろ? 貴子の死んでいるのを、あれは絶対に事前に知っていた。どう考えても、貴子が死んでいるのを初めて見た理人なら、もっとデカいリアクションと取るはずだろ?」

 それは……私も思う。

「あ、そうか。だから、警察の西野さんの前で写真の話をしなかったのね」

 そっか。あの時、理人も隣にいたものね。
 理人が犯人ならば、証拠があることを悟られるのは、ちょっとまずい。

「理人ならば説明がつくんだよ。貴子や紗栄を殺したとしたら」

 慎也の考えはこうだ。
 まず、貴子一人を観測会の前に呼び出して殺害する。
 そして、自分は何食わぬ顔をして、観測会に参加する。
 奈美が目撃した後で、自分も驚いたふりをする。
 だが、救急車や警察を呼ばれたら犯行がバレそうでまずいから、そこは反対した。

「紗栄が死んだのだって、遅れて来た理人ならば、犯行は可能だろう?」
「ふうん。でも、変じゃない? どうして、貴子の遺体を皆に見せる必要があるのよ。慎也に写真を撮られたのよ? 危険じゃない?」

 私は、慎也に疑問をぶつける。
 変なのだ。慎也の説は。
 だって、私がもし犯人ならば、貴子を殺害したら遺体は隠すもの。
 みんなに見せることはしない。

「それは……その……猟奇的な愉快犯的な……」

 いや、どこのサイコパスよ。

「理人がサイコパスかどうかは、私は知らないけれども、すごく変だわ」
「うん……そこは、まだ……分からないんだ」
「それに、遺体は? 血痕は? それは、どこに消えたの?」
「それは……まだ……分からないんだ」

 慎也が、イライラしている。
 
「それに、理人は、慎也を疑っているみたいよ」
「は? なんで?」

 何でって、そりゃ、慎也も怪しいから。
 鍵を持っていたのも、観測会を計画したのも慎也だ。
 理人も慎也も、どこか変だ。
 一体、誰が何をして、何を隠しているのか。
 私には、さっぱり分からない。

「そんなの、理人が、自分に疑いを掛けられないようにするための詭弁だろ?」
「どうだろ。私から見たら、二人とも、怪しいのよ」

 慎也も理人も、何か隠している。
 私には、二人とも完全に信用なんて出来ないのだ。 

「ミライ、信じて。俺は、何も悪いことはしていない……ただ……」
「ただ?」
「いや、いい。これは言わない方が良いんだ。てか、今は言いたくない」

 ……は? 
 おいおい、今更それは、どうよ。
 何があったか分からないけれども、そうやって何かを黙っているから、私は、慎也を信用できないのよ。

「言ってよ、もう」
「言わない。絶対にだ!」

 慎也は、そう言って電話を切ってしまった。
 なんだコイツ。
 本当、勝手なんだから。
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