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賠償金
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朝、八時。
ご飯を食べようとリビングに行くと、お母さんがいた。
そっか。今日は日曜日だものね。
お母さんもお父さんもお休みの日だ。
いつも通りならば、この時間は、お父さんはウォーキングに出かけたはずだ。
「あんたね! 昨日ご飯も食べずに寝ちゃったけど大丈夫なの? その……友達が亡くなったんでしょ?」
お母さんが心配そうに私の顔を覗き込む。
ダイニングテーブルには、朝ご飯がラップを掛けて置かれている。
ご飯と鮭、納豆、ほうれん草のお浸し。
とても美味しそうだ。
「ほら、お味噌汁」
お母さんが、お味噌汁を温めて持って来てくれる。
「ありがとう……朝ご飯」
私がお礼を言うと、お母さんが、「なんだ、元気ありそうじゃない」と、安心した顔を見せる。
温かいお味噌汁が体に染みる。
テレビでは、また貴子が出ている。
今日は、街の食堂へ行って、天丼を食べいている。
エビを食べて「美味しい!」って言う貴子の笑顔が、私の心にチクンと刺さる。
「貴子……頑張っていたのに……」
最後に、貴子が主演の映画紹介に移る。
青春映画で、貴子が恋人と一緒に逃走する内容だった。
「映画……もし、貴子がいなくなったら、どうなるんだろう」
「ああ? そりゃ、公開中止とかになるんじゃないの? 不祥事を起こした芸能人が出た番組が、放映出来なくなったりしているもの」
私の呟きに、お母さんが答えてくれる。
「え、そうなの? もう収録とか終わっていたとしても?」
「そりゃそうよ。元々病気で、闘病していたとかでなく、フイにいなくなるとかでしょ? そしたら、世間で大騒ぎされて、映画の公開どころではなくなるもの」
「え……それって、大丈夫なの?」
「理由によっては、大損害で、訴えられて多額の賠償金とか……」
「お金? お金払うの?」
びっくりして、私は声が裏返る。
学校を休んだって、賠償金を払えなんて言われない。
社会人になって、仕事をしていたとしても、退職したからって賠償金なんて請求されるなんて話は、聞いたことない。バイトだって……サボったって、叱られるだけで賠償金なんて話はでてこないだろう。
「当たり前よ。映画って、撮影するのにお金がすごくかかるの。それがダメになるんだったら、色々な人に迷惑も掛かるもの」
文化祭の発表会とは違うのよ、と、お母さんは付け足す。
「でも、病気や事故の時は? 仕方ないこともあるでしょう?」
「知らないわよ。お母さん、芸能人になったことないもの。それこそ、貴子ちゃんに聞けばどう?」
何も知らないお母さんが、貴子に聞けと言う。
でもね、お母さん。聞けないの。貴子は、もうこの世にはいないの。
……そう言えたら、どんなに楽か。
でも、言えない。
言えば、お母さんは、きっと貴子のお母さんに連絡をとる。
貴子のお母さんが嘘を付いているのは分かっているのだから、私が、貴子が死んだことを知っているとバレたら、どうなるか分からない。
あの、私の部屋を睨んでいた、貴子のお母さんのゾッとするような視線が気になる。
「うん、今度聞いてみる」
私は、お母さんに、嘘をついた。
ご飯を食べようとリビングに行くと、お母さんがいた。
そっか。今日は日曜日だものね。
お母さんもお父さんもお休みの日だ。
いつも通りならば、この時間は、お父さんはウォーキングに出かけたはずだ。
「あんたね! 昨日ご飯も食べずに寝ちゃったけど大丈夫なの? その……友達が亡くなったんでしょ?」
お母さんが心配そうに私の顔を覗き込む。
ダイニングテーブルには、朝ご飯がラップを掛けて置かれている。
ご飯と鮭、納豆、ほうれん草のお浸し。
とても美味しそうだ。
「ほら、お味噌汁」
お母さんが、お味噌汁を温めて持って来てくれる。
「ありがとう……朝ご飯」
私がお礼を言うと、お母さんが、「なんだ、元気ありそうじゃない」と、安心した顔を見せる。
温かいお味噌汁が体に染みる。
テレビでは、また貴子が出ている。
今日は、街の食堂へ行って、天丼を食べいている。
エビを食べて「美味しい!」って言う貴子の笑顔が、私の心にチクンと刺さる。
「貴子……頑張っていたのに……」
最後に、貴子が主演の映画紹介に移る。
青春映画で、貴子が恋人と一緒に逃走する内容だった。
「映画……もし、貴子がいなくなったら、どうなるんだろう」
「ああ? そりゃ、公開中止とかになるんじゃないの? 不祥事を起こした芸能人が出た番組が、放映出来なくなったりしているもの」
私の呟きに、お母さんが答えてくれる。
「え、そうなの? もう収録とか終わっていたとしても?」
「そりゃそうよ。元々病気で、闘病していたとかでなく、フイにいなくなるとかでしょ? そしたら、世間で大騒ぎされて、映画の公開どころではなくなるもの」
「え……それって、大丈夫なの?」
「理由によっては、大損害で、訴えられて多額の賠償金とか……」
「お金? お金払うの?」
びっくりして、私は声が裏返る。
学校を休んだって、賠償金を払えなんて言われない。
社会人になって、仕事をしていたとしても、退職したからって賠償金なんて請求されるなんて話は、聞いたことない。バイトだって……サボったって、叱られるだけで賠償金なんて話はでてこないだろう。
「当たり前よ。映画って、撮影するのにお金がすごくかかるの。それがダメになるんだったら、色々な人に迷惑も掛かるもの」
文化祭の発表会とは違うのよ、と、お母さんは付け足す。
「でも、病気や事故の時は? 仕方ないこともあるでしょう?」
「知らないわよ。お母さん、芸能人になったことないもの。それこそ、貴子ちゃんに聞けばどう?」
何も知らないお母さんが、貴子に聞けと言う。
でもね、お母さん。聞けないの。貴子は、もうこの世にはいないの。
……そう言えたら、どんなに楽か。
でも、言えない。
言えば、お母さんは、きっと貴子のお母さんに連絡をとる。
貴子のお母さんが嘘を付いているのは分かっているのだから、私が、貴子が死んだことを知っているとバレたら、どうなるか分からない。
あの、私の部屋を睨んでいた、貴子のお母さんのゾッとするような視線が気になる。
「うん、今度聞いてみる」
私は、お母さんに、嘘をついた。
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