俺の妹が悪役令嬢？そんなの兄の俺が許さない！

看病

　さて、皆様。再びの出題です。

　医務室で、目覚めた病気を患った人物。目の前には、心配してずっと看病してくれていたらしきイケメン王太子。椅子に座ったまま転寝していらっしゃいます。

　この目覚めた人物の物語の中の役割はなんでしょう。
A、モブ　B、ヒロインの兄　C、ヒロイン

当然Cと答える人が後を絶たないことが予想されるが、残念なことに、今回の答えは、Bもしくは、Aなのだ。

……世の中何か間違っている。

こういう胸キュンイベントが俺に起こっても、それは、イベントの無駄撃ちもいいところ。シロノにこそ、こういうイベントは起こるべきなんだ。俺じゃない。

恋愛検定なる物が、本当に存在したなら、俺は、初級ですら落第だろう。どうあがいても合格しないだろう。
なぜなら、本来ヒロインが味わうべき胸キュンイベントを、ヒロイン候補の兄というモブに限りなく近い分際で二度も味わっているのだから。

？？？？　なんでセシルが、俺の隣に座っている？　マキノどこに行った？


「あの……」

おずおずとセシルに声をかけてみる。

「リオス。大丈夫か？」

セシルが、またイイ感じの笑顔。

「ええ。だいぶ楽になりました。それよりも、セシル様？　どうしてここに？」

　そう、それが聞きたい。
　風邪がセシルに感染ったら、俺、反逆者にならない？

「気を失ったリオスを置いてはいけないだろう？」

「授業は？」

「一日でないだけでは造作ない」

　まあ、真面目で優秀なセシルなら、平気ということだろう。いいな。俺はこの後必死で抜けた授業の分の勉強をしなければならなくなる。

「マキノは？」

「いないと不安か？」

　また、セシルは不機嫌になる。黙ってしまった。本当、セシルの考えは分からない。
　
　そもそも、全く考えの合いそうもないセシル。シロノのために歩み寄ってみようとしたのだけれども、セシルと俺が仲良くなるのは、これ無理かもしれない。シロノには悪いけれども。
　別の作戦を考えようか。いっそ、俺が悪役に徹する方が、シロノの正義感が際立つかもしれない。誰か女生徒をいじめる意地悪な俺、それを制して女生徒を守るシロノ。
　有りかもしれない。そうした方が、いいかな？
　どうせ、俺は、将来辺境の観光地でのんびり過ごすつもりだ。王宮での評判なんてどうでもいい。
　てか、誰をどうやっていじめる？？　そんなの出来るのかな、俺に。
　
　長い沈黙の時間。
　耐え切れずに俺は聞いてみる。

「セシル様、何かお話があったのでしょう？」

熱でフラフラだったが、確かにそう聞いた。

「あったが、もういい。キミは、マキノと幸せになればいい」

へ？
何の話？

　セシルは、怒ってどこかに行ってしまった。
　なんだよ。ちょっとは説明してくれ。