上 下
41 / 59

まきりおって何だ?

しおりを挟む
 アスナが、シロノを断罪するために計画を練っていることは、確実だろう。
 だが、具体的にいつ何をするのかは、分からない。

 俺たちは、シロノやアスナの周辺の動きに、それとなく注意を払う。

「かしこまりました! お兄様! シロノ様に何かあれば、ご報告すれば良いのですね!」

シロノがよく一緒にいる女の子に、シロノに何か異変があれば、すぐに知らせて欲しいとお願いしてみれば、快諾してくれた。
ロージイという女の子。だったと思う。たぶん。
女子のクラスとの合同授業の後に、それとなくロージイを捕まえて、お願いしてみた。やはり、日ごろから一緒にいる人にも、シロノの身の安全は、警戒してもらえた方が良い。

さすがにアスナが狙っているとは、言い難いので、シロノを狙う酷いストーカーがいるようなんだ、と言ってみた。
三学期に入って、最上級生から声をかけられることも多くなっていたせいか、あっさりと俺の嘘は信じてもらえた。

「ありがとう、ロージイ。助かるよ」

にこやかに笑ってそう言えば、満面の笑みで、「はい!」と言ってくれる。
ずいぶん愛想の良い子だ。

「あの……マキノ様はお元気ですか?」

「え? 元気だけれども……なんだ、マキノのファンなの?」

そうか、それで愛想が良かったんだな。それなら分かる。マキノと友達の俺とも仲良くしたいと思う理由は分かる。
なんだったら、仲介しようか? マキノはチャラいし、女の子の誘いは喜ぶだろう。

「いいえ、滅相もない。リオス様を差し置いて、マキノ様に近づこうだなんて! わたくしは、断然マキリオ派ですから!」

ロージイが息巻く。
まきりおってなんだ?

「それが、メリッサは、セシリオだなんて、言うんです」

せしりお?? また新しい単語。メリッサは、もう一人のシロノの友達だな。今、丁度マキノが、俺と同じようなお願いをしに行っているはずだ。

「まあ、マニアは、マキリンとかリンリオとか、フラリンとか……」

待って、知らない単語ばかり。なにそれ?
マキノの純粋なファンじゃないってこと?

「とりあえず、まあ。頼んだよ。シロノに何かあったら教えてね」

頭を「?」で一杯にしながら、俺は、寮室に戻る。


「メリッサの奴め!」

マキノが寮室で怒っていた。

「どうした?」

「メリッサの奴。必要以上にリオスに近づくな、とか言うんだ。できるか! こっちは同室だ!」

確かに、それは無茶だ。
マキノと俺は、同室なんだから、近寄るなって言う方が無茶だということは分かる。

「じゃあ、シロノに身辺に変化があった時に知らせてもらう依頼は、却下されちゃった?」

「いいや。それは快諾。でも、その後だよ。その後に、近寄り過ぎるなと説教されて!」

ふうん。そうなんだ。
それは、あの、マキリオだのセシリオだのという単語と関連があるのだろうか?
純粋なファンではないにしろ、ロージイなら、そんな風にマキノに説教はしなかったのでは、ないだろうか。これはお願いにいく相手が逆だった方が良かったのかもしれない。

まあ、目的はキチンと果たせたようだ。ちゃんと、シロノ身辺で何かがあれば、連絡はくるだろう。……たぶん。
しおりを挟む

処理中です...