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ほ?

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「せっかく、二人まとめて正妃として任命できたと言うのに! 母上にいじめられて、辞退すると言い出したら、どうするんですか?」

は? セシル、今なんと?
シロノと二人まとめてセシルに抱きしめられて、二人して目が点になる。

「ですが、そんな欲張りな……」

おっとりしたアレーナ女王。
息子セシルのぶっとんだ超理論にただただオロオロなされている。
ずいぶんおっとりした女王様だ。グスタフが、心配で放っておけない理由も分かる。

「リオス。幼い日の約束。思い出してくれたのだろう? 二人を正妃にするためには、どうしたらよいのかとずっと考えていた。やっと約束を果たせた!」

嬉しそうなセシル。

「いやいやいや、そんな訳にはいかなでしょう? 正妃ですよ?」

「そう。だから、残念ながら、表向きは、シロノに正妃に就いてもらい、リオスは、『正妃補』という立場になる」

「正妃……ほ?」

「そう。なんとか母上と話し合った得た妥協点」

「ほ……」

「不満か?」

「いや、その前に、状況についていっていません」

セシル王太子は、俺が思っていたよりもさらに想像を超えて、実直に約束を守るタイプらしい。責任を取らねば! 二人を正妃にする方法を考えなければ! そう思い込んでいらっしゃったようだ。
側室を何人も持つこともある王室。愛人がいることも珍しくない。
ちょっと、庶民と感覚がずれているのか?
いや、セシルが、温室育ちの世間知らずを少し引きずっているのか……。
てか、リオス少年が、二人をお嫁さんになんて、あんな異次元の発言をしたことが、全ての元凶か……。

「シロノのことを、愛して下さっているのでしょう?」

大事な事。ここが成立しなければ、なにも成らない。

「もちろん愛している。あの幼い日の以来ずっとシロノとリオスを気にかけていた」

セシルの言葉に、シロノの顔がパッと真っ赤になる。
良かった。シロノがあの日以来セシルを愛していたように、セシルもシロノを好きでいてくれたのなら、それは兄としてとても嬉しい。

ああ、じゃあ、俺がその間を邪魔するのは、間違っている。
俺が、シロノの幸せを邪魔するようなことは、よくない。

セシルが嫌いじゃないし、俺は、セシルをこの一年で…………でも、そんなのは、遥か彼方へぶん投げてしまえ。

「セシル様が、俺にまで気をかけて下さったこと。とても嬉しいです。ですが、俺は、妹夫婦に横やりを入れることは、したくありません」

「リオス……」

切なそうなセシル。ちょっと心がぐらつく。
でも、やっぱり駄目だよ。そんなの。

俺は、きっぱりセシルの提案を断った。

晴れて、正妃には、シロノが就任することとなった。
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