運命の赤い糸

ゴフィート

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家をでる

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持っていくものはペンライトと部屋の外に置いてあったおにぎり。
肌が見えないように長袖長ズボン、マスクに帽子と夜中にはあり得ない格好だが、誰かに見られるよりはいい。

トイレとシャワー以外の目的で部屋の外に出るのはいつぶりだろうか。
親の顔も曖昧にしか覚えてないからかなり久しぶりなんだと思う。部屋にこもってからは同じような毎日を繰り返しているから、時間の感覚が狂っている。

でも、そんなことはどうでもいい。
今、私にとって大事なのはこの指の糸が繋がっている先のこと。

ドアノブを音が鳴らないようにゆっくりと時間をかけて回す。
それは十秒ほどだったようにも、十分以上かけて回してたようにも感じた。

廊下を床から足を離さずにゆっくりと歩く。
両親の部屋の前を通る時は、壁に耳をあてて寝息を確認してから進んだ。
階段をまた静かに降りながら考える。
なんで私はここまでして外に出ようとしているのだろうか。
何がそこまで私を駆り立てているのだろうか。

なんらかのおぞましい意図を感じて一瞬背筋が凍る思いになったが、それでも私の足は止まってくれない。

この糸の先が知りたくてたまらない。
このきもちを抑えることは私には出来そうにない。

途轍も無い恐怖感に包まれながらいよいよ、最後の一段というところで私は足を滑らしてしまう。

──どん

それは小さな音だったと思う。
だけど私にはそれが爆弾が耳元で爆発したのかと思うほど大きく聞こえた。
私は足を滑らした体勢のまま、動きを完全に止めて耳を澄ませていた。
けれども聞こえてくるのは自分の心臓の音ばかり。
安心した、家族には気づかれていない。

私は階段の上に残った一歩を体勢を直しながら前に進めた。
ここまできたら玄関まであと少しだ。

またそろりそろりと息を殺して玄関へ進む。

玄関に着くと、下駄箱の奥にしまってある靴を出してそれをはく。

──カチッ

鍵を回す音が静かに響くが、今度は初めから分かっていた音だったからか、そんなに緊張していない。

扉を開け、久しぶりの外の空気を吸って、静かに扉を閉める。

久しぶりの外の風景は昔と全く変わっていない。
虫が集まって点滅している外灯。
電気を付けっぱなしで寝ているとなりの斎藤さんの家。

何も変わっていないのに何かが違う。

あぁ、変わったのは私か。

同じ景色でも気持ちが違うとこうも見え方が違うのか。
不思議なものだ。

音が響くため、自転車は使わない。
どちらにせよ、空気が入っていないだろうから使えないだろうけど。

まだ夜は始まったばかり。
歩いたって時間はまだまだある。
糸をたどってその相手を見つけるまで私の夜は終わらない。
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