私の少ない命あなたなら幸せにしてくれる

mikadozero

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第三章 思い出

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「口を開けて…あ~ん」

玲奈が俺の口に食材を入れようとする声が屋上に響き渡る。
そんな、姿を見ている葵も黙っているはずがなく…

「アキ君!口開けて!」

葵が無理やり俺の口の中にミートボールを入れてきた。そのあと玲奈が卵を口に入れてきた。
俺の口の中は…すごく不思議な味がした。

口の中の物を噛んで飲み込んでから言った。

「お前ら…人の口で遊ぶなぁ!」

俺が言うと二人はそっぽ向いて言った。

「だって…葵様が作ってくるとは思わなかったんだもん…」

「私だって玲奈が作ってくるとは思わなかったもん」

二人とも目を合わせずにどこかを向いていた。
この二人は、仲がいいのか悪いのかよくわからなかった。

俺にくれる食材は無くなったのか二人とも弁当の中身を自分で食べ始める。
玲奈が一口食べた頃。葵がこちらを向いて言った。

「今週の週末…どこか遊びに行かない?」

唐突だったので俺は空をボーっと見ていたのをやめて葵の方を見る。
玲奈が、食べていた物を飲み混んで言った。

「いいねぇ~遊園地とか行かない?」

「いいじゃん!アキ君もいいよね?」

唐突に振られたので困惑しながらも頷いた。実際何するのか分かってはいなかった。
話は進んで…

「今日うち来ない?」

そう言ったのは玲奈だった。人生で女子の家に入ったことがなかった。俺はいい機会かもと思い返事をしようとするが…

「えー、玲奈の家上がるの怖いんだけど」

そんなことを言ったのは葵だった。なんで、そんなに怖がっているのかわからなかった。
俺は言う。

「俺は行きたいかな…」

俺が控え気味で言うと玲奈は目をキラキラさせながら言った。

「アキ君分かってんねっ!今日の放課後急いで帰ろうね!」

なんだか、帰る約束までされてしまった。それを見ていた葵が黙っているはずもなく…

「私も行くから!ね?アキ君」

「うん…そうだね」

なんだか、葵から圧がかかっている気がして声に出して頷くくらいしか出来なかった。

ー放課後ー

時間の流れは早かった。授業が始まりすぐに終わった感覚だった。
帰りの準備を済ませていると…隣で座っていた玲奈が言った。

「じゃ!帰ろうか!」

俺は小さく頷いた。玲奈の後をついて校舎を出た。周りから、チラチラ見られながら下駄箱まで行ったので少し気まずかった。

門を出ると葵が学校の外壁の寄りかかっていた。
葵は俺たちに気づいてこちらに近づいてくる。

「葵様~」

そう言いながら葵に近づいていく玲奈。
俺はその様子を微笑みながら見るしかなかった。

玲奈が先頭で俺と葵は後からついて行った。
俺と葵は多少会話をしながら歩いていた。

その間、チラチラこちらを玲奈が見てくる。俺はその視線に少し気になっていた。
玲奈の歩く速度がだんだん遅くなりやがて止まった。

「どうしたんだ?」

俺が疑問に思い玲奈に聞くと玲奈はこちらに向かってきた。
俺は受け身を取る体制をしていた。

それを見た葵が言った。

「あら?寂しくなったのかしら?」

「そんなことないし…」

俺に抱きつかれながら言われても全く説得力がない。
俺は、玲奈の頭を撫でながら言った。

「お前のうちはどこなんだ?」

「ここをまっすぐ行って…右に曲がるとアパートあるから。そこ」

玲奈は動きそうになかったので俺はおんぶをして玲奈の言ったところに向かった。

歩いて数分アパートらしきところに着いたが…

「ここなの?」

葵が見て言った。俺も言いたくなったが言わないで黙っていた。
外見はボロボロでいつ崩れるかわからない二階建てアパートだった。

「お前の一階と二階どっちだ?」

聞くと、玲奈は首をアパートの方に向けて言った。

「二階の右端…」

彼女は指を指しながら言った。
俺はその場所まで歩く。階段はミシミシという音がしていつ壊れるか不安なくらいだった。

玲奈は俺から降りて、玄関の鍵を開けた。
中を開けると必要最低限以外何も置いてなかった。

「お邪魔します…」

小さく入る際に言った。俺は内装に驚いた。

「お前…テレビないのかよ」

思わず入って早々言ってしまった。玲奈はどこかに行って持ってきたのはラジオだった。

玲奈はラジオで生活情報を手に入れているらしい。本当に現代人かと思いながら出された座布団に座っていると…

「玲奈!」

彼女の名前を呼ぶ葵の声が聞こえた。
俺は声のする方に向かうと倒れている玲奈を葵は支えていた。

玲奈に寄り添い俺は言う。

「大丈夫か!?」

玲奈は…死にかけの声で言った。

「たな…の…くす…り」

棚の薬?俺はそれを聞いて急いで棚まで行って一つ一つ開けた。一番下に薬らしきものがたくさんあった。俺はその一つを持っていき玲奈に渡す。

葵が水を持ってきていたので…水を飲ませながら玲奈に薬を飲ませた。

玲奈は薬を飲んでスヤスヤ寝てしまった。
敷布団を床に引いて彼女を寝かせた。

葵が彼女の顔を見ながら言った。

「あの薬…」

「薬がどうかしたのか?」

「あの薬が…彼女の生命線なのね」

葵が突然変なことを言うので俺は困惑する。葵は立ち上がり棚に行き薬を見る。
一つとり彼女は見ていた。

「どうしたんだよ」

俺が薬を見ている彼女に言うと薬を置いて彼女は言った。

「ここの棚にある薬…ちょうど一年分だわ…」

「え…?」

俺は思わず声を出してしまった。なんで葵がそんなことわかるんだ?と疑問に思っていると彼女は言った。

「この薬…私も持ってる薬と同じだもの」

そう言いながらカバンから薬を出した。確かに同じ会社の同じ薬だった。

「だったら…」

そう言うと、彼女は窓付近まで行って言った。

「この薬は特注なの…だから他の人のは服用できない…そして…この薬を作っている会社は…半年前に倒産したわ…」

聞いた瞬間…視界が真っ暗になった。
俺は…どうしたら…いいのかわからなかったのだった。
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