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さあ、逃げよう!

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「どうやら、二国の間に秘密のルートがあったみたいだね」
「しかも、かなりの距離をショートカット出来るらしいな」

 ロロとネネがお水を汲んできてくれて、一息ついた私達。
 現在は、全員で木陰の下に入り、作戦会議をしていた。

「まさかスター国に入ってたなんて……。
 レンくんが、ちょうどよくパトロールしてくれてて良かったよ~」
「ふふ、本当にね」

 笑い合う私たちを見て、ロロの顔にキュッとシワが寄る。

「”ちょうどよく”、か。
 本当に、ベストタイミングだったよな。
 不思議なくらいに」
「……なにか疑われてるかな? 俺」

 連くんは、ロロをチラリと見る。
 ロロは、わざとらしく視線をそらし、目を合わせようとしなかった。

「でも、もっと引っかかることはある。
 どうして俺とミアが入ってた袋の中に、いきなり剣が現れたかって事だ」
「あ~確かにね。
 アレは、不思議な光景だったよね!」

 あの剣は、気づけば消えてなくなっていた。
 あの剣がなければ、私たちは今も脱出出来ていなかったはず――
 そう思うと、背筋が凍るくらいゾッとする。
 あそこで剣が出てきてくれて、布から抜け出せて、本当に良かった……!

「神様には感謝しないとね」
「え、神様が出してくれたの?」
「確信はないんだけどね……」

 するとロロが「思いっきり神様に文句言ってたけどな」と、余計なことを言う。

「え、美亜。
 神様に文句言ったの?」
「つ、つい。焦っちゃってて……」
「ふふ、そうだったんだ」

 まるで「そんな美亜も可愛い」と言われているような、そんな表情をしてくれる連くん。

 笑った顔は、ほぼ当時のままだけど……。
 連くんの成長した姿が私には眩しくて、なかなか直視できない。

「おいミア。
 せっかくレンと会えたのに、何で避けるんだよ」
「い、色々あるの! 乙女には!」

 ロロは「わけわかんねぇ」と呆れた様子。
 でも、仕方ないじゃん。
 だって……
 連くんが、カッコよすぎるんだもん!

「――それでさ。
 スター国から、どうやってミアを逃がしてあげるかって事なんだけど」
「あ、そうだった!」

 男の人に、スター国まで連れ去られてしまった、ハート国の王女こと私。
 私と一緒にいると、スター国の王子である連くんに迷惑がかかる。
 ここは何が何でも、誰にもバレず、脱出しなければ!

「じゃあ、また袋に入るよ!
 そうしたら、誰にも見つからないよね?」
「そりゃ、そうだけど……」

 チラリと私を見る連くん。
 ん? どうしたんだろう?

「袋の中に入って、怖かったでしょ?
 美亜に怖い思いをもう一回だなんて……。
 そんな事、させたくない」
「え……」

「俺は、美亜に無理をしてほしくない。
 大事なんだよ、美亜の事が」
「れ、連くん……!」

 し、心臓がもたない……!
 すっごくカッコイイ顔で、すっごくカッコイイ事を言われてる……!
 どうしたらいいの私!
 なんて返事をしたらいいの、私ー!

「あうあう……」
「ミア……ダメだ、こりゃ。
 じゃあさ、レン。
 一体どうやってミアを国外に出すんだ?」

 目がグルグル回った私に代わり、ロロが尋ねた。

「スター国は兵士がウヨウヨいるだろ?
 隠す以外の方法だと難しいぜ?」
「うん。いくつか手はあるんだけど、手っ取り早いのは――

 いっそ皆に見つかるってのは、どう?」

「はあ?」
「へ!?」

 ロロと私が、思わず声を上げる。
 その横で、ネネちゃんが「さすがレン!大胆!」と拍手を送っている。
 いやいや、連くんが凄いのは、昔から!
 だけど、今回の作戦はスゴすぎるっていうか……!

「でも連くん。
 さすがに大胆すぎると言いますか……」
「つーか命が危ねぇだろ。普通に考えて」

 ロロの言葉に、連くんは「冗談だよ」と眉を下げて笑った。
 そして「じゃあ本当の作戦」と。
 人差し指を、空に向かってピンと立てる。

「一般市民のフリをしてデートをしよう、ってのはどう?」

「お、おぉ……?」
「デート!!」


「あながち悪くないかもな」とロロが言ったのに対して、今度はネネちゃんが不満そうだ。

「レンが他の子とデートするのは、見たくないなぁ」
「こら、ネネ。協力して?
 皆の一大事だからね」
「そりゃするけど~」

 言いながら、ネネちゃんは私をジロリと見る。
 あれ?もしかしてだけど……
 私って、ネネちゃんに嫌われてる!?

「あ、あの~、ネネちゃん?」
「あー、私もレンと同じ大きさなら、こんなちんちくりんに絶対に負けないのにー!」
「ちんちくりん!?」

 ショックだ……。
 でも、これで確信した。
 やっぱりネネちゃんは、連くんの事が好きなんだ。
 でも――
 ごめんね、ネネちゃん。
 私も、連くんが好きだから!
 これだけは、絶対に譲れないの!

「って事で、俺は今から街に出てくるね」
「へ? 街?」

「俺たちの服を調達してくる。
 さすがに、ちょっとお互いに、良い服を着すぎだし」
「あ、確かにね」

 服をぴらりと捲ると、小袋が落ちた。
 中にお金が入っているソレは、地面に当たった時に、衝撃で硬貨がジャラリと音を出す。

「そうだ、さっき美亜を狙った男。
 そのお金が目当てだったみたいだよ」
「へ、これ?」

「汽車の中で、その小袋を美亜が持っているのを見たらしい。
 ミア王女だってバレなかっただけ幸いだけど、不用意にお金を見せたら危ないからね。
 ここは、日本とは違うから」
「! そ、そうだね!
 もっと気を付ける!」

 言うと、連くんは笑って頷いてくれた。
 そして妖精二人組に、私と待っているように告げ、一人で街に出る。
 その間、私たちは何をしていたかと言うと……

「大体、どうしてレンが気に入ってるのが、こんなちんちくりんな女の子なの?」
「ひ~! 耳が痛くなるからやめて~!」

 私の欠点を、ネネちゃんから浴びるほど受けていたのでした……。
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