上 下
17 / 23
六日目

2.

しおりを挟む
【そろそろ着きます】

 昨日は、私がメッセの返事をするよりも先に、柊さんがココに到着した。今日は負けまいと、必死になって指を動かす。

【待っています】

 あ、しまった。「ありがとうございます」をつけた方が良かったかな?

「素っ気ない文章になっちゃったかも。あ、でも……。メッセでやりとりをする事も、もうなくなるもんね」

 こんな悩みが生まれるのも、残り僅かだと気づく。なぜなら、一週間続く荷物は、今日を入れて残り二日。つまり――
 柊さんと会うのは、明日で最後となる。

「そっか。最後なんだ……」

 呟いた時、玄関の方でジャリっと靴音がした。見ると、相変わらず到着の早い柊さんが、いつもと同じ段ボールを手にしていた。

「今日もありがとうございます」
「いえ。俺も中身が気になりますから」
「そうですよね。なら、早速」
「はい」

 柊さんが、手に力を入れて段ボールを開けた。そして素早く、中からひらがなブロックを取り出す。そして二人の目に写ったのは、

 なんと「げ」のひらがなだった。

 濁音のブロックが存在する事に驚きながら、今までのひらがなの後ろに「げ」を置く。
 出来た文字は――たすけてあげ。
 これを見て、柊さんは「あぁ」と笑った。

「明日のひらがな、もう分かりました」
「え!?」

 どうして?どの部分で?
 全くわかってない私に、柊さんは順を追って説明してくれる。

「昨日見つけた六文字のひらがな――いわゆる音羽さんの名前を先頭につければ、すぐに分かりますよ」
「え~っと……」

 私はブロックを綺麗に並べ、届いた全てのひらがなを読み上げる。

「音羽ちゃん、助けてあげ――
 あぁ!」

 そして、ピンと来る。

「明日のひらがなは“る”ですね?」
しおりを挟む

処理中です...