【書籍化進行中】抜けがけ禁止×王子たちの溺愛争奪戦

またり鈴春

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凌久くんの風邪

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ガチャ


「お邪魔しま~す……」


凌久くんの部屋が遠くなくて良かった。だって、凌久くんすごく重たいんだもん……!

半ば引きずりながら、私は何とか凌久くんを担いで移動することが出来た。

私の顔のすぐ横に凌久くんの顔がある――

って最初はドキドキしたけど……。そんなドキドキは、重労働と引き換えにどこかへ行った。


「ほら、凌久くん。部屋に着いたよ、ベッドに横になれる?」

「ん、……なれる」


と言ってベッドを目指すまでは良かったんだけど……。凌久くんは、私を巻き込んでベッドに倒れ込んでしまった。

ボスンッ

凌久くんに押し倒された私は「ぐえ!」と、動物みたいな声を出してしまう。


「凌久くん……お、重たい……っ」

「我慢、しろ……。俺も、我慢、してんだから……」

「(なにを!?)」


だけど病人に何を言っても、何を聞いても無駄だと悟った私。

ズルズルと凌久くんの腕の中から抜け出して、各部屋に設けられている救急セットの中を確認する。


凌久くんは救急セットに全く手をつけてなかったみたいで、風邪薬も未開封のまま。良かった、薬がなかったらどうしようかと思った。

ジャー、こぽこぽっ

グラスに水をついで、薬と一緒に凌久くんの元へ行く。「体を起こせる?」と言うと、凌久くんは気怠そうに半分だけ目を開けた。そして、ゆっくりと上体を起こす。


「はい、薬。口を開けて?」

「ん……」

「お水、ゴクンして」

「ん……っ」

「(良かった、飲んでくれた)」


ホッと息をつく。独断で飲ませちゃったけど、大丈夫だよね?私が一年の時に風邪を引いた時、寮母さんがしてくれた事を、そのまま真似したから……。


「これで、よくなるといいな……」


お風呂場に行って、小さなタオルを探す。すると手ごろな大きさのタオルを見つけた。

タオルを水で濡らし、凌久くんのおでこに置いた。気休めだけど、少しでも熱が下がりますように。

にしても……


「救急セット、全く手をつけてなかったのすごいな。全然病気をしてこなかったんだろうな、凌久くん」


さすが、というか。なんというか。凌久くんらしいなって思った。だって風邪とか病気に、無縁そうだもん。

だけど――その時。

凌久くんが「うッ」と声を上げる。息苦しくて眠れないのかな?と顔を覗きこむと……。

うつろな目をした凌久くんと、目が合った。熱のせいか、目に涙が溜まっている。


「凌久くん?」

「うぅ……」


ツンツンと雑にほっぺを触っても、凌久くんは怒らない。されるがまま。


「(すっごくレアな凌久くんだ……)」


心の中で感動しつつ「眠れないの?」と聞いてみる。すると、凌久くんは弱々しく首を振った。

そんな中、呟いた言葉は……


最悪だ――


「最悪……?なにが?」

「風邪、ひいちまった……。最悪だ……っ」


今にも泣きそうな声で、消え入りそうな声で。凌久くんは、弱々しく呟いた。
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