大嫌いなキミに愛をささやく日

またり鈴春

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愛をささやく2

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「(そう言えば、このシチュエーション……昨日の倉庫の中みたい)」


熱い体同士、抱きしめあってる状況って……どうしても昨日を思い出しちゃう。


「煌人が熱を出した時……私、不安になったの」
「不安?」
「うん。もしも煌人が死んじゃったらどうしようって……」


すると煌人が「大げさだなぁ」と、また笑った。

だけどね、煌人。
私は、やっぱり怖かったんだよ。


「煌人がいなくなると思ったら怖かったの。
私の前から煌人が消えちゃったら……嫌だって思った」
「凛……」
「だから、元気になってくれて本当に良かった」


そう言って、頭をコテンと。
煌人の体に預けてみる。

すると、ありえない速さで煌人の心臓が動いているのが分かった。

ドクドクドクドク……

これ、煌人、死んじゃわないよね?大丈夫だよね?


「あのさ、大丈夫なの?煌、と……」


不安になって、焦って煌人を見上げた。

すると、さっきまで笑っていた煌人はどこにもいなくて。

「凛」と真剣な声で、真剣な目で。煌人が私を捕らえる。


「俺はさ、凛の事を何でも分かってるつもりだよ。
だけど、一つだけ分からない事がある」
「な、なに……?」
「……」
「……」


煌人は、視線を下げて床を見た。

そして「はぁ~」と時間をかけて深呼吸をした後に。

意を決して眉間にシワを寄せて、再び私を見る。

そして――


「凛が俺の事をどう思ってるのか知りたい」
「え……」
「俺の事を好きか、嫌いか。
その二択で答えて」
「っ!」


選択肢に「普通」、「どっちでもない」、「真ん中」がない。

そうか。煌人は……
私が恋愛対象として煌人をどう見ているのか、それを聞きたいんだ。

つまり、
告白の返事。


「(ついに、返事をする時が来たんだ……っ)」


胸の前でギュッと両手を合わせる。

どうしよう、何て言おう。
こういう時は、どういう言葉を使えばいいの……?


「(っていうか……告白の答えを、ゆっくり見つけていこうって。今日の朝、そう思ったばかりだから……)」


まだ返事が見つかってない。どうしよう……。

そう悩んでいた時だった。


「凛……キスしてもいい?」
「は、はぁ!?」


煌人が、とんでもない事を言い始める。


「え、ま、ちょ、」
「待ては聞かない」


そう言って、私の顔にどんどん近づく煌人。

いや、ちょっと待って!
何でいきなりそうなるの!?

ガシッと煌人の頭を押さえて、これ以上私に近づかないようにする。

だけど、煌人の力は強くて……私の体を簡単に、煌人の意のままにしてしまう。私の手のガードは、すぐに崩されてしまった。


「ま、待って煌人、もうちょっと考えさせて……!?」
「ずっと考えてたんじゃないの?」
「か、考えてたよ……!」


そう言うと「ずっと俺の事を考えてたのかよ、そうかよ」と、煌人はニヤリと笑った。

いちいち反応が気に障る。

けど、今はそれどころじゃない。


「私、もう少しで何かが分かりそうなの……!」
「俺を好きかどうか?」
「そ、そう!」


すると煌人は「さっきあんな事を言ったのに往生際が悪いな」と呆れた顔で私を見た。

え?「あんな事」って、どんな事?


――戸惑ってるの
――煌人と一緒にいると、前みたいに出来なくて


煌人は「忘れたとは言わせねーぞ」と。少し頬を染めながら、真剣な顔で私にすごんだ。

そして、同じように顔を赤くしている私の頬を……ゆっくりとなぞる。


すると、どうしてか。


触られたところに電気が走ったみたいに、ビリリと反応して。私は思わず「あっ」と、驚いた声を出してしまった。

そんな私を見た煌人は「ほらな」と、嬉しそうに笑う。


「俺にこんなに反応してるお前が、俺の事を嫌いなわけねーだろ」
「じゃあ、私は煌人の事を……好きなの?」
「俺は、そう思ってるよ」
「そ、そうなの……?」


え、好きって……こうやって気づいていくものなの?諭されるものなの?

こういうやり方であってる?


「(全部が初めてだから、全然分からない……っ)」


頭を悩ませて「う~」と唸っていると、「じゃあさ」と煌人が提案した。


「やっぱり、俺とキスしてみる?」
「え、はあ?」
「そうしたら何か分かるかもしれないじゃん」
「いや、でも、……!?」


いつの間にか、目の前に煌人の顔がある。

煌人、本気なんだ!
このままじゃキスされちゃう!


「待って煌人!だから時間を、」


そう言った時だった。

煌人は真剣な目で、私を見た。

そして次に、眉間にキュッとシワを寄せて……


「俺はもう、ずっと待った」
「え、」
「だから――もう待たない」


そして今まで我慢していた二人の距離を、
煌人は今、一切なくしてしまったのだ。
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