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ギャップ
2.
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そういえば、さっきの授業で今日は終わりだったらしい。
掃除もそこそこに、クラスの皆が鞄を持ってバラつき始めた。
ミーンミーン
「あっつ……」
窓の近くに立っている木に、一匹のセミが止まっている。
今夏を生き抜くために、必死に土の中から這い出したんだろう。ただ鳴いてるだけのセミが、いやに必死に感じた。
そんなセミが見えるように、窓の近くに歩み寄る。
そして「なあお前」と、セミに声をかけてみた。
「そんなに必死に鳴いたって、七日しか命がないんだよな?」
ミーンミーン
「もっと気楽に生きりゃいーじゃん。
ってか、私の命をあげられるんなら是非ともあげたいよ、お前に」
ミーンミーン……――ミッ
「あ」
鳴いてる途中だというのに、セミは重たそうな体を持ち上げて飛んで行く。
まるで「お前の命なんて願い下げだよ」と、そんな風に言われたようだった。
「セミからも嫌われたのか。私らしーな」
曲がった背中を伸ばすために、両腕を天井に突きあげる。
「はー、しょーがね」
縁センセーの所に行くかな。
◇
「――であるからして、あなたはこれまで問題行動を重ねて来たので、この書類に目を通し署名していただきたいのです」
「はぁ……」
メガネをカチャリとかけ直して、私を見つめる縁センセー。眼光の鋭さに、嫌々ながらも返事をする。
思えば、縁センセーと生徒指導室は初めてだ。
いつも違うセンセーには呼ばれてたけど……縁センセーは、授業中に廊下を立たせて、それで終わり。それが罰で、それきりだった。
けど、今日は――様子が違う。
「(今日は生徒指導室。ついに我慢の限界が来たとか?)」
これから、こってり怒られるのか――それは嫌だな。
そんなことを思いながら、すぐにペンを走らせようとした私に、縁センセーが「待ちなさい」と紙を手で覆った。
「まずは全て読むことです。署名はそれから」
「……めんど」
明らかに面倒くさそうな顔をすると、縁センセーも浅いため息をついた。
「私だって面倒ですよ」
「……っ」
ズキッ
そりゃそうだ。
誰もこんな問題児なんて相手にしてる時間ねーもんな。
時間が惜しいよな。
「(けど私だって、人並みには傷つくんだからな)」
まあ、今更だけどさ。
「ちゃんと読んでいますか?」
「(……はぁ)」
書類の内容なんて全く頭に入ってこない。せめて読んでいるふりをして、目を上下に動かして見せた。
そしてやっと、署名をするためにペンを持つ。
今度は縁センセーは何も言わなかった。
「はい、出来たよ」
「よろしい。この書類の内容は理解できましたか?掻い摘んでいうと、」
「いい。分かってる」
「言葉にしてみなさい」
「……学校でもいい子になりなさいって、そういう事だろ?」
「そうですね。あなたの場合は、家ではいい子らしいのですが、なぜか学校でのみ暴れて、」
「おい、言い方」
別に暴れてねーし。
ただ授業のボイコットをしてるだけだろ。
掃除もそこそこに、クラスの皆が鞄を持ってバラつき始めた。
ミーンミーン
「あっつ……」
窓の近くに立っている木に、一匹のセミが止まっている。
今夏を生き抜くために、必死に土の中から這い出したんだろう。ただ鳴いてるだけのセミが、いやに必死に感じた。
そんなセミが見えるように、窓の近くに歩み寄る。
そして「なあお前」と、セミに声をかけてみた。
「そんなに必死に鳴いたって、七日しか命がないんだよな?」
ミーンミーン
「もっと気楽に生きりゃいーじゃん。
ってか、私の命をあげられるんなら是非ともあげたいよ、お前に」
ミーンミーン……――ミッ
「あ」
鳴いてる途中だというのに、セミは重たそうな体を持ち上げて飛んで行く。
まるで「お前の命なんて願い下げだよ」と、そんな風に言われたようだった。
「セミからも嫌われたのか。私らしーな」
曲がった背中を伸ばすために、両腕を天井に突きあげる。
「はー、しょーがね」
縁センセーの所に行くかな。
◇
「――であるからして、あなたはこれまで問題行動を重ねて来たので、この書類に目を通し署名していただきたいのです」
「はぁ……」
メガネをカチャリとかけ直して、私を見つめる縁センセー。眼光の鋭さに、嫌々ながらも返事をする。
思えば、縁センセーと生徒指導室は初めてだ。
いつも違うセンセーには呼ばれてたけど……縁センセーは、授業中に廊下を立たせて、それで終わり。それが罰で、それきりだった。
けど、今日は――様子が違う。
「(今日は生徒指導室。ついに我慢の限界が来たとか?)」
これから、こってり怒られるのか――それは嫌だな。
そんなことを思いながら、すぐにペンを走らせようとした私に、縁センセーが「待ちなさい」と紙を手で覆った。
「まずは全て読むことです。署名はそれから」
「……めんど」
明らかに面倒くさそうな顔をすると、縁センセーも浅いため息をついた。
「私だって面倒ですよ」
「……っ」
ズキッ
そりゃそうだ。
誰もこんな問題児なんて相手にしてる時間ねーもんな。
時間が惜しいよな。
「(けど私だって、人並みには傷つくんだからな)」
まあ、今更だけどさ。
「ちゃんと読んでいますか?」
「(……はぁ)」
書類の内容なんて全く頭に入ってこない。せめて読んでいるふりをして、目を上下に動かして見せた。
そしてやっと、署名をするためにペンを持つ。
今度は縁センセーは何も言わなかった。
「はい、出来たよ」
「よろしい。この書類の内容は理解できましたか?掻い摘んでいうと、」
「いい。分かってる」
「言葉にしてみなさい」
「……学校でもいい子になりなさいって、そういう事だろ?」
「そうですね。あなたの場合は、家ではいい子らしいのですが、なぜか学校でのみ暴れて、」
「おい、言い方」
別に暴れてねーし。
ただ授業のボイコットをしてるだけだろ。
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