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ギャップ
5.
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「鶫下さんのご両親、お父さんはサラリーマン、お母さんは専業主婦……ですよね?」
「は!?調べてんのかよ!」
本当にキモイな、お前!!
「担任ですから。クラス全員のそれらは、頭に入れとかなきゃいけないんですよ。
で、話を戻します。
鶫下さんには、下に妹さんがいますよね?確か、穂乃果(ほのか)さん。この学校の一年生ですね」
「……それが?」
「私、昨日のお昼の時間、穂乃果さんのいる教室の前を通りました。
そこで穂乃果さんはお友達とおいしそうにお昼を食べていましたよ」
「!」
私の唇が震える。
そんな私を確認した縁センセーが、「ビンゴ」と言わんばかりに続きを話す。
「でも真乃花さんみたいにパンではなかったですね。
そう、お弁当でした。真乃花さんは、料理がお得意なんでしょうかね?」
「……そうなんじゃ、ねーの」
ダメだ、本当に調子悪くなってきた。
頭がグラグラする。
吐き気もして……気持ち悪い……。
「そこで私、思ったのです。
まさか鶫下さんのお母さんが、妹の穂乃果さんだけにお弁当を作って、姉の真乃花さんにだけお弁当を作らないとか、まさかそんなことって……ってね。
だから、確認させてください。
お弁当の件――
私の思い違いであっていますか?
それとも、現実に起こっていることですか?」
「――」
縁センセーが、まるで探偵の真似をしている……ように見える。
だけど、そんな茶番劇に、私の体調は付き合ってはくれなかった。
胃の中のむせかえる物が、下から突き出るようにこみあげてくる。
「もう……ダメ……っ」
「え、ちょ、なんで私の服を引っ張るんですか?」
「た、助け……っ」
「鶫下さんー!?」
うぇ、気持ち悪……。
◇
その後は、散々だったらしい。
生徒指導室で見事に戻してしまった私は、そのまま倒れてすぐに保健室。
保健の先生が言うには「問題ない」とのことだけど、ずっと眠りっぱなしだったために、汚物をぶっかけられた縁センセーも一人で先に帰るわけには行かず。
でも服だけは洗っておこうと縁センセーが席を立った――そんな時に、私はやっと眠りから覚める。
「あ、れ……私……」
周りは一面の白。
白、白……。
どこだ、ここ?
シャッ
「私と話している最中に嘔吐したのですよ」
「……」
そんな白の中に浮かぶ、ただ一つの「肌色」。
そう、センセーは上半身裸だった。
「生徒の寝込みを襲おうってハラ?」
「冗談やめてください。一体誰のせいで上半身裸になっていると思っているんですか」
ムッとした表情をした縁センセーを見る。なんだか新鮮。
「メガネ、取ってる」
メガネがない分、いつもの顔の三割増しでかっこよく見える。
コンタクトにしたら?って言おうかな。いや「余計なお世話です」って一蹴されるか。
「私に謝罪はなしですか?」
「あ、忘れてた」
「はぁ……」
また浅いため息をつきながら、センセーは手に持っていたジャージを着る。
「着ちゃうのか」
「着ないと私の首が飛びます」
「ふ、それは私が困るかも」
縁センセーと今日初めて、こんなにたくさん話した。
今まで面白みがないセンセーと思っていたけど、からかうとちゃんと反応があるし、私のしょうもない話にも付き合ってくれる。
このセンセーは、面白いかも――
私の本能が、嬉しそうに騒いでいるのが分かった。
「は!?調べてんのかよ!」
本当にキモイな、お前!!
「担任ですから。クラス全員のそれらは、頭に入れとかなきゃいけないんですよ。
で、話を戻します。
鶫下さんには、下に妹さんがいますよね?確か、穂乃果(ほのか)さん。この学校の一年生ですね」
「……それが?」
「私、昨日のお昼の時間、穂乃果さんのいる教室の前を通りました。
そこで穂乃果さんはお友達とおいしそうにお昼を食べていましたよ」
「!」
私の唇が震える。
そんな私を確認した縁センセーが、「ビンゴ」と言わんばかりに続きを話す。
「でも真乃花さんみたいにパンではなかったですね。
そう、お弁当でした。真乃花さんは、料理がお得意なんでしょうかね?」
「……そうなんじゃ、ねーの」
ダメだ、本当に調子悪くなってきた。
頭がグラグラする。
吐き気もして……気持ち悪い……。
「そこで私、思ったのです。
まさか鶫下さんのお母さんが、妹の穂乃果さんだけにお弁当を作って、姉の真乃花さんにだけお弁当を作らないとか、まさかそんなことって……ってね。
だから、確認させてください。
お弁当の件――
私の思い違いであっていますか?
それとも、現実に起こっていることですか?」
「――」
縁センセーが、まるで探偵の真似をしている……ように見える。
だけど、そんな茶番劇に、私の体調は付き合ってはくれなかった。
胃の中のむせかえる物が、下から突き出るようにこみあげてくる。
「もう……ダメ……っ」
「え、ちょ、なんで私の服を引っ張るんですか?」
「た、助け……っ」
「鶫下さんー!?」
うぇ、気持ち悪……。
◇
その後は、散々だったらしい。
生徒指導室で見事に戻してしまった私は、そのまま倒れてすぐに保健室。
保健の先生が言うには「問題ない」とのことだけど、ずっと眠りっぱなしだったために、汚物をぶっかけられた縁センセーも一人で先に帰るわけには行かず。
でも服だけは洗っておこうと縁センセーが席を立った――そんな時に、私はやっと眠りから覚める。
「あ、れ……私……」
周りは一面の白。
白、白……。
どこだ、ここ?
シャッ
「私と話している最中に嘔吐したのですよ」
「……」
そんな白の中に浮かぶ、ただ一つの「肌色」。
そう、センセーは上半身裸だった。
「生徒の寝込みを襲おうってハラ?」
「冗談やめてください。一体誰のせいで上半身裸になっていると思っているんですか」
ムッとした表情をした縁センセーを見る。なんだか新鮮。
「メガネ、取ってる」
メガネがない分、いつもの顔の三割増しでかっこよく見える。
コンタクトにしたら?って言おうかな。いや「余計なお世話です」って一蹴されるか。
「私に謝罪はなしですか?」
「あ、忘れてた」
「はぁ……」
また浅いため息をつきながら、センセーは手に持っていたジャージを着る。
「着ちゃうのか」
「着ないと私の首が飛びます」
「ふ、それは私が困るかも」
縁センセーと今日初めて、こんなにたくさん話した。
今まで面白みがないセンセーと思っていたけど、からかうとちゃんと反応があるし、私のしょうもない話にも付き合ってくれる。
このセンセーは、面白いかも――
私の本能が、嬉しそうに騒いでいるのが分かった。
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