ようこそ、悲劇のヒロインへ

一宮 沙耶

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8話 噂ばなし

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 もう5月になり、授業にも普通に出席していた。英文科は、もちろん女子大だから女性ばかり。そんなに英語は不得意じゃなかったから、なんとか過ごしていた。

「彩って、あの室井さんと仲良いんだよね。あの人、変わっていない? なんか暗いし、話しかけても、あまり答えてこないっていうか。」
「そんなことないよ。いつも笑ってるし、楽しく話しているよ。」
「そうなんだ。でも、気をつけた方がいいよ。なんか、雰囲気の悪い男の人が周りにいて、気に食わないと、乱暴されるとか聞いたこともあるし。」
「本当? そんなことないと思うんだけど。」
「彩って、天然だから、気づかないだけだよ。」

 その日、理恵の部屋に行って理恵に話しかけた。

「今日、友達が、理恵は雰囲気の悪い男を使って、気に入らない女に乱暴しているとか、ありもしない話しをしてたんだよ。ひどくない?」
「私、昔から、よく言われないし、気にしない。でも、言ってくれて、ありがとう。私、前にも言ったけど、男性とはあまり近づきたくないし、女性も私のこと好きって思ってくれる人って少ないし、あまり人に溶け込めないんだ。だから、彩がいてくれて、本当に助かってる。」
「大丈夫、大丈夫。私は理恵のこと、信じてるから。」

 なんか、女性って、本当か嘘か分からないけど、人が言ってるとか言って、噂話しするの好きだな。自分が見たとか、聞くこと少ないし。女性って、こんな感じだったっけ? なんか嫌な感じ。

 翌日、いつも付き合っているグループとは違うグループで、好きな歌手のコンサートに行くとか話していたから、入ってみた。

「ねえ、ねえ、スピリットのコンサートに行くって盛り上がっているみたいだけど、私も話しに混ぜてくれない?」
「彩さんね。あの、室井さんと仲良しの。」

 あれ、なんで知っているんだ? もしかしたら仲のいい友達グループの誰かが広めてる? そんな裏切りみたいなことするなんて、あるのかな?

「そう、室井さんとは仲良しだけど。」
「あなたも、男使って女をいじめているの?」
「室井さん、そんなことしていないよ。それって、根も葉もない噂だって。そうそう。いつ、どこのコンサート? あ、これ、夏に横浜アリーナでというやつ?」
「ふ~ん。」
「どうかな。みんな、行こう。」
「そうね。今日のランチ、不味くなっちゃった。」
「あれ? 行っちゃうの?」

 それ以降、このグループの子達と話しても、はぶられているっていうか、なんか無視されてしまう。さらに、私は男にだらしないとか噂になっている。男なんて好きじゃないんだから全くの嘘なんだけど。なんか、女って関係が難しいな。

「彩、なんか悪い噂流されているよ。男にだらしないって? そりゃー、男にモテるってことだよね。いいことじゃない。気にすることないよ。」
「ありがとう。」
「そのうち、誰も言わなくなるって。あのグループって、本当に柄が悪いっていうか、いずれ、みんなから相手にされなくなるね。それよりも、男友達から一緒に飲みに行こうって誘い受けたんだけど、みんな行くよね。」
「行く、行く。」
「どんな人なの?」
「それが、京王大学の3年生だって。」
「いいんじゃない。」

 男性と飲み会? なんかやる気出ないな。でも、断るのも、角が立つし。

「いつのなの?」
「5/19の金曜日だって。そうそう、男性にモテモテの彩も来ないと。」
「ちゃかさないでよ。5/19は行ける。メンバーに入れておいてくれる。」
「みんなも大丈夫だよね。うん。では、こちらは4人、男性も4人でセットしておくね。場所は、六本木あたりだと思う。」

 なんか面倒だけど、これも付き合いだし、仕方がないか。
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