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7話 転職
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転職と言っても、私は何もできないし、自信もなく、なかなか決まらなかった。
そこで、副社長と一緒にお伺いしたことがある社長などを訪問したの。
その秘書をさせてもらえないかと。
そうすると、菊澤興業の社長がいいよと言ってくれた。
でも、結局、秘書になると、副社長の時と同じように、常に同行させられた。
海外や地方に行くと、ホテルで夜の相手をさせられたの。
私って、結局、これしかできないのね。
こんなことなら、ホステスになるっていうのはどうかしら。
その会社も辞め、銀座のクラブに行き、ホステスとして働き始めた。
煌びやかなお店で、華やかなドレスを身にまとい、上品に振る舞う。
私にはぴったりの仕事だった。
しかも、美貌、スタイルともに抜群だったから、ママにはすぐに気にいられた。
あとは、お酒の注ぎ方、飲ませ方、ひどいお客の対処方法等を教わる。
ママのお気に入りで、他の女性から嫌がらせを受けることもなさそうだった。
ランクが高いおじさんのお供には慣れてるから、すぐに人気が出た。
VIP対応として、不特定多数のお客を相手にすることはしないですんだ。
のんびりと、お金持ちの社長等とだけ会っていればいい。
夕方は外で待ち合わせ、お寿司とか一緒に食べてから、お店に向かう。
いかにも水商売というドレスじゃなく、私はスーツ姿。
仕事の帰りに秘書にご馳走しているなんて風が喜ばれた。
それなりに高い地位にある人だから、写真に取られるリスクもある。
そんな時でも、秘書に日頃のお礼をしていた、それ以上でも以下でもない。
そう言って言い逃れができるというわけ。
そして、お店では、スーツ姿からドレスに着替え、そのギャップも萌えると言われた。
メイクも、暗がりで映えるように少しづつ変える。
そして、お店では、お客へのボディータッチも加え、バストを体に当てる。
こうすると大半の男性客は落ちる。
男性ってバカね。
お金を払って、私たちを褒めて時間を過ごすのだもの。
女性は、ただ、横でクスクス笑っているだけでお金がもらえる。
お店では、体が触られることもあるけど、高いお酒を飲ませておけばいい。
高齢だから、性の対象というよりは、若い女性に慕われているという満足感で十分。
11時ごろには車を呼んでお見送りをするというのが日課だった。
お店も、厳しいことを言わず、やりたいようにやらせてくれる。
金払いがいいおじさん達が私を指名してくれていたから。
ノルウェイに出張で行くけど、秘書として着いて来いなんていうお客もいた。
英語をネイティブレベルで話せるから、同行する仕事も増えていく。
最近は、その延長で、秘書専門の高級会員制クラブの一員になっていたの。
いろいろな会社の役員の海外出張に同行している。
秘書として一緒に現地の会社を訪問して、通訳もするという感じ。
奥様を演じてくれと言われることもあったわね。
そんな役員は、多くの場合、自由時間に観光したりするので、それに同行した。
マドリードで一流のフラメンコショーに行ったり。
成都で麻婆豆腐発祥のお店で食べたりとか、現地ならではの楽しみを味わった。
ショーとか、レストランとか、行きたいところを選んでと言われる。
それを探すのは楽しい。もちろん、人によっては夜のお勤めも強要される。
プライベートでは子犬を飼おうと思ったこともあった。
でも、頻繁に海外に行き、1週間とか留守にするから無理。
預ける友達もいなかったから諦めたわ。
お金はそれなりに貯まり、タワマンの1室で暮らせるようになったの。
これって幸せということなのかしら?
もともと、どんな人生をしたかったんだろう?
男性の時は、会社の社長になるとか、家族を持つとか漠然と考えていた。
でも、気がついたら女性になっていて、金持ちの男性に寄生する人生。
これからどんな人生を暮らしたいか全くイメージができない。
結婚したい? それは、ここまでくると無理ね。
おじいさんの後妻ぐらいだったらできると思うけど。
同年齢の男性からは、嫌われそうな職業だしね。
子供が欲しい? ずっとピル飲んでいるからか、そんな気分でもない。
このまま、おばさんになって1人で暮らす?
それも自由でいいけど、いつまでも高級秘書は続けられないわね。
クラブのママとして店を開く?
そんな度胸もない。
女性は見た目だと思っていたけど、今から見ると、それで得したことあったかしら。
逆に、副社長とかに目をつけられて不幸になっちゃった。
なんの特徴もない見た目でも、結婚して幸せに暮らしてるって人はたくさんいる。
なんで、占い師に、あんなこと言っちゃったんだろう。
男性のままだったら、今頃、幸せに生きていたんじゃないかしら。
タワマンの窓から、六本木の夜景が見渡せる。
高速では多くの車が走り過ぎ、赤いテールランプが流れる。
私の人生はあのテールランプのどの辺りかしら。
人って、どこまでいっても欲は消えないという。
でも、私はそういうことじゃない。
行くべき方向もわからないし、ずっと、周りの環境に翻弄されたまま。
鏡に映った姿は、まだ28歳の女性がバスローブを着てワインを傾けている。
誰もが、美しいと言ってくれる美貌とスタイル。
でも、横には、心から話し合える人は誰もいない。
顔は笑顔がありつつも、ただ1人で過ごす時間に寂しさがにじみ出る。
真っ赤なネイルだけが、強がりな自分を表している。
目は、気づかなったけど、いつの間にか、優しさはなくなり、きつい目線を放っている。
そういえば、会社で働いていた時、私を見る人は誰もいないと寂しかった。
それは、今でも同じ。
お客様は、いずれ家族の元に戻り、心の中に、私なんてどこにもいない。
これって女性になってしまったからなのかしら。
男性に戻りたいという気持ちが高まる中、似た経験をした人が現れた。
そこで、副社長と一緒にお伺いしたことがある社長などを訪問したの。
その秘書をさせてもらえないかと。
そうすると、菊澤興業の社長がいいよと言ってくれた。
でも、結局、秘書になると、副社長の時と同じように、常に同行させられた。
海外や地方に行くと、ホテルで夜の相手をさせられたの。
私って、結局、これしかできないのね。
こんなことなら、ホステスになるっていうのはどうかしら。
その会社も辞め、銀座のクラブに行き、ホステスとして働き始めた。
煌びやかなお店で、華やかなドレスを身にまとい、上品に振る舞う。
私にはぴったりの仕事だった。
しかも、美貌、スタイルともに抜群だったから、ママにはすぐに気にいられた。
あとは、お酒の注ぎ方、飲ませ方、ひどいお客の対処方法等を教わる。
ママのお気に入りで、他の女性から嫌がらせを受けることもなさそうだった。
ランクが高いおじさんのお供には慣れてるから、すぐに人気が出た。
VIP対応として、不特定多数のお客を相手にすることはしないですんだ。
のんびりと、お金持ちの社長等とだけ会っていればいい。
夕方は外で待ち合わせ、お寿司とか一緒に食べてから、お店に向かう。
いかにも水商売というドレスじゃなく、私はスーツ姿。
仕事の帰りに秘書にご馳走しているなんて風が喜ばれた。
それなりに高い地位にある人だから、写真に取られるリスクもある。
そんな時でも、秘書に日頃のお礼をしていた、それ以上でも以下でもない。
そう言って言い逃れができるというわけ。
そして、お店では、スーツ姿からドレスに着替え、そのギャップも萌えると言われた。
メイクも、暗がりで映えるように少しづつ変える。
そして、お店では、お客へのボディータッチも加え、バストを体に当てる。
こうすると大半の男性客は落ちる。
男性ってバカね。
お金を払って、私たちを褒めて時間を過ごすのだもの。
女性は、ただ、横でクスクス笑っているだけでお金がもらえる。
お店では、体が触られることもあるけど、高いお酒を飲ませておけばいい。
高齢だから、性の対象というよりは、若い女性に慕われているという満足感で十分。
11時ごろには車を呼んでお見送りをするというのが日課だった。
お店も、厳しいことを言わず、やりたいようにやらせてくれる。
金払いがいいおじさん達が私を指名してくれていたから。
ノルウェイに出張で行くけど、秘書として着いて来いなんていうお客もいた。
英語をネイティブレベルで話せるから、同行する仕事も増えていく。
最近は、その延長で、秘書専門の高級会員制クラブの一員になっていたの。
いろいろな会社の役員の海外出張に同行している。
秘書として一緒に現地の会社を訪問して、通訳もするという感じ。
奥様を演じてくれと言われることもあったわね。
そんな役員は、多くの場合、自由時間に観光したりするので、それに同行した。
マドリードで一流のフラメンコショーに行ったり。
成都で麻婆豆腐発祥のお店で食べたりとか、現地ならではの楽しみを味わった。
ショーとか、レストランとか、行きたいところを選んでと言われる。
それを探すのは楽しい。もちろん、人によっては夜のお勤めも強要される。
プライベートでは子犬を飼おうと思ったこともあった。
でも、頻繁に海外に行き、1週間とか留守にするから無理。
預ける友達もいなかったから諦めたわ。
お金はそれなりに貯まり、タワマンの1室で暮らせるようになったの。
これって幸せということなのかしら?
もともと、どんな人生をしたかったんだろう?
男性の時は、会社の社長になるとか、家族を持つとか漠然と考えていた。
でも、気がついたら女性になっていて、金持ちの男性に寄生する人生。
これからどんな人生を暮らしたいか全くイメージができない。
結婚したい? それは、ここまでくると無理ね。
おじいさんの後妻ぐらいだったらできると思うけど。
同年齢の男性からは、嫌われそうな職業だしね。
子供が欲しい? ずっとピル飲んでいるからか、そんな気分でもない。
このまま、おばさんになって1人で暮らす?
それも自由でいいけど、いつまでも高級秘書は続けられないわね。
クラブのママとして店を開く?
そんな度胸もない。
女性は見た目だと思っていたけど、今から見ると、それで得したことあったかしら。
逆に、副社長とかに目をつけられて不幸になっちゃった。
なんの特徴もない見た目でも、結婚して幸せに暮らしてるって人はたくさんいる。
なんで、占い師に、あんなこと言っちゃったんだろう。
男性のままだったら、今頃、幸せに生きていたんじゃないかしら。
タワマンの窓から、六本木の夜景が見渡せる。
高速では多くの車が走り過ぎ、赤いテールランプが流れる。
私の人生はあのテールランプのどの辺りかしら。
人って、どこまでいっても欲は消えないという。
でも、私はそういうことじゃない。
行くべき方向もわからないし、ずっと、周りの環境に翻弄されたまま。
鏡に映った姿は、まだ28歳の女性がバスローブを着てワインを傾けている。
誰もが、美しいと言ってくれる美貌とスタイル。
でも、横には、心から話し合える人は誰もいない。
顔は笑顔がありつつも、ただ1人で過ごす時間に寂しさがにじみ出る。
真っ赤なネイルだけが、強がりな自分を表している。
目は、気づかなったけど、いつの間にか、優しさはなくなり、きつい目線を放っている。
そういえば、会社で働いていた時、私を見る人は誰もいないと寂しかった。
それは、今でも同じ。
お客様は、いずれ家族の元に戻り、心の中に、私なんてどこにもいない。
これって女性になってしまったからなのかしら。
男性に戻りたいという気持ちが高まる中、似た経験をした人が現れた。
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