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第15話
しおりを挟む15 冒険者登録
「ふーーん」
「見れば見る程ってかぁ…」
赤毛の女は私をジロジロと見てくる。
一方私は、
ふーーん。男勝りの女性って感じかな?
顔もそこそこ美人だなぁ…
んーーふふっなんかカッコいい。
チューちゃおうかなぁ…
そんな邪な感情が私の中に巡って、唇を舌で舐めた。
ねぇ……今、貴方、私をどんな風に思って見てるの?
もう一度聞かせてね。
心読!!
(ちょっとなんだよ……色っぽいなぁ……)
(女の私でもドキドキしちまうじゃねぇか)
なぁぁんだ。やっぱりじゃん。
チューしても、怒らないと思うけど…周りの目もあるし……やめとこっか。
「おねェさん。私、本気だよ。旅の資金がもう足りなくて、この街で冒険者になって、お金貯めようかなぁって」
「はぁ?冗談だろ?やめとけって、あんたみたいな娘が冒険者になってみろ。
敵は魔物だけじゃねぇ。
味方だと思ってたコイツらが寄ってたかってアンタを犯そうとするわな」
「なぁ?!おめぇら!?」
周囲の男共はまたドッと歓声を上げた。
なかなかと、凄い熱量だ。
「その時はおねェさんが、私を守ってくれるんでしょ?」
私は「ね?」と微笑む。
「な!?」
呆れた表情を浮かべた彼女だが、すぐにやれやれと頭を掻いた。
「頭のネジが何本か吹っ飛んでるのか?呆れた奴だなぁ…」
私は再度ニコリと笑う。
「フッ。まぁいい……同じ穴のムジナって奴かぁ。同性のよしみだ。
あんた名前は?」
「ケミロウです」
「私は戦士ミランダだ」
「付いて来な。登録の仕方も知らねぇんだろ?」
「はい」
ミランダは何から何まで丁寧に教えてくれた。
「ここに名前を書いて、あとは年齢。こっちに種族」
え?種族……。どうしよう。身分証だからな……流石に嘘はまずいかな?
ミランダにわからないように獣人と書いたが、すぐバレた。
「え?ケミロウあんた?」
私は人差し指を立てて口に当てる。
内緒にしてね。
そんな私の意図を汲み取ったのか、ミランダはそれ以上聞いては来なかった。
「あとは、こっちに獲物だな」
「獲物?」
「武器だよ。何を使うんだいあんた?」
「あっ、剣です」
「なんだい?そんな華奢な腕で剣を振るうってか?大丈夫か?ほんと…」
「はい!大丈夫です。任せて下さい」
ミランダは心配そうに私を見てくる。
私はそんなミランダに右手を上げて力コブを作って見せたが、プニプニしてて柔らかそうな力コブだった。
はぁ……とため息混じりのミランダ。
「知らねぇぞ。どうなっても。命の保障も、その柔らかそうな身体の保障も私は出来ないからねぇ?」
「はい」
「はぁ……じゃあ受付カウンターに提出して来な。あとは写真撮って終わりだ」
「はい」
これが私の冒険者の証。
四角い板状で10センチ程の冒険者の証には、ちゃんと名前も年齢も写真付きで掘り込まれていた。
どんな技術なんだろう?なんて思いながら、とりあえず、身分証を手に入れる事が出来て一安心。
手数料も銅貨5枚ととても安くて助かった。
冒険者の証に感動している私に、
「あ、あの~~」と、気弱そうな声で、声をかけて来たのは、受付カウンターに座っていた眼鏡をかけた20代くらいの男性だ。
「はい」
私は、笑顔で答えた。
「ぼっ、ぼっ、僕は…ゴニョゴニョゴニョゴニョ……あ、あの!ぼっ、冒険者のせっせゥゥ明をしたいので、少し時間はありますでしょうかですか?」
見るからに緊張しているその男性は、ギルド職員の人なんだろう。
地味な感じで坊ちゃんヘアーで丸メガネ。
名前はゴニョゴニョと、言ってて聞き取れなかったけど、きっと何回か会う事になるだろうから聞き直した。
「あ、アルフレッドめす」
派手に噛んだなぁ……
アルフレッドの説明は語順が無茶苦茶で、下手くそだったけど、一生懸命さは伝わって来たし、他にも色々と情報を提供してくれたから○
アルフレッドの話を要約したらこんな感じ。
1、冒険者とは、街の依頼、個人の依頼、各々の依頼を受けてそれに対しての対価を得る事を生業としている者達。
要は何でも屋ってところかな?
2、冒険者にはランクがあって、A~Eまでのランクが存在しているという事。
冒険者ランクは依頼成功の数で上がって行くらしいけど、Cから B、Bから Aに上がる為には試験に合格しないと上がれないらしい。
ちなみにB級試験はこのアガルタの街でも年2回行われるらしいが、A級試験は王都で年1回しか行われない狭き門だという事。
とりあえず、私が目指すはCランクって事かな?
3、アガルタの街で発行されたB級以下の冒険者の証は東部地方でしか意味をなさなくて、仮に他の地方で依頼を受ける為には、その地方その街で新しく冒険者登録をしないといけないという事。
ちなみに、Bランク以上の証ならその必要は無く。トラル王国の依頼なら全て受託可能になるという事。
なるほどねぇ…Bランク以上の冒険者なら何処に行っても収入を得る事が可能になるっていう事ね。
ありがたい事にアルフレッドのおかげで冒険者の説明は勿論の事、他にも色々と大事な事がわかってマジ感謝。
私が今いるのは、トラル王国っていう国で、その国の東部地方にアガルタって街があるって事。
この世界で産まれて、ここで生きている人達からしたら当たり前の事だけど、そんな事を聞いたら怪しまれるのはわかりきっている事だし、国や地理を把握するって事は簡単そうで案外難しいんだなって悩んでいた所だったんだ。
アルフレッドに感謝の意を込めて、笑顔でウィンクをすると、顔を赤らめたアルフレッドはオススメの依頼なんかを教えてくれた。
冒険者の証を大事に持ってミランダの所に戻る。
「出来たよ登録」
「じゃあ次は依頼の受け方だな」
ミランダがそう言った時だ。
ギルドの扉が勢い良く開いた。
何事?
入って来たのは、兵士と思われる男3名。
『ガシャガシャ』と着ている鎧を鳴らして、ギルドの中央あたりまで進み、何かと思えば開口一番にこう言った。
「昨日、ゴブリン討伐に向かったこの街の冒険者3名と、御者1名の死亡が確認された。
冒険者の名は、アラガス、ハッジ、バッカスの3名。御者の名はマルス。
4名共死体はあがって無いが、ギルドの乗り合い馬車には何者かと争った形跡があり、現場の状況から全員ゴブリン達に殺され連れ去られたと判断した。説明は以上だ」
一瞬、静まり返ったギルド内。
裏工作が成功してほっとした私。
兵士が言ってる冒険者とは、昨日、私が殺した冒険者達の事だろう。
正当防衛とは言え、3人の命を奪った事は事実。
こっちの世界セミファスで、殺人という罪がどれ程重い罪なのかわからない現状。自ら罪を認め、名乗り出るのは得策とは言えない。
それにもし、この世界で殺人という罪が重罪じゃ無かったとしても、自ら名乗り出る事はしないだろう。
私はそういう人間だ。
顔色一つ変えていなかったのか?
それは周りが判断する事だから、私はわからないけど、兵士達がギルドを去るまで、床に視線を落とした私は、板材の木目の数を数えていた。
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