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外伝 閑話1 ジライヤの半生
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閑話1 炭鉱村と血と汗と涙とエルフの少女と行き倒れていた男
トラル王国の東側、東部地方。アガルタの街から更に東の最東端。東方地区なんて呼ばれる所には、かつてエルフ族による自治区が存在した。
今を遡る事100年前の話だ。
「お父さん~~こっち!こっち!」
今年で5歳になるジライヤは、魔炭鉱(魔石を採取出来る鉱山)から帰って来た父の姿を目に入れて、小さな両手を全力で振る。
「おう」
ジライヤの父もまた、可愛い一人娘の声かけに、右手を軽く上げ笑顔で答えた。
父1人。子1人。
ジライヤの母は彼女を産み落とす時にこの世を去った。
物心付いた時から父と2人。
2人ぼっちだけの暮らしは、貧しくとも充実しており、父が仕事に行っている時でもジライヤは寂しいと思った事は無い。
それは、比較対象が無かったからだ。
2人が住んでいるのは、牧場の近くの炭鉱村で、周りにいるほとんどのエルフ達は、単身で炭鉱村で働いており、家族と呼べる者は、遠く彼の地で暮らしていた。
「おーーう!ジライヤか!!」
「何してんだ?」
「父ちゃんの帰りを待ってたってか?
可愛い奴めーー」
「おじさんも帰って来たぞーー」
「ほれほれほれ~~」
「やだやだ。やめてよーー」
父と共に、魔炭鉱から帰って来た鉱夫達は、ジライヤを見る度に癒され、ちょっかいを出し、揶揄い、そして、笑った。
「ハハハハハッ」
「ハハハハハッ」
「やだやだ~~来ないで~~臭いよぉ~」
「臭いとは失礼な!!ジライちゅあーーん」
「お父さん助けてぇぇ」
「ハハハハハッ」
「ハハハハハッ」
「そーーら!!捕まえた!!」
ジライヤを捕まえ、ギューーとハグする鉱夫達。
「キャッ、キャッ」
「キャッ、キャッ」と子供特有のケラケラ笑いが、疲れた炭鉱村に生気を与えた。
あすも、あしたも、あさっても、
ジライヤは炭鉱村のアイドルで、
死と隣り合わせの現場で、日夜働く鉱夫達にとって、彼女の存在だけが日々の光であった。
貧しくとも、明日が約束されていなくとも、一生懸命に働いている鉱夫達の血と汗と涙で、炭鉱村には今日も笑い声がこだましていたのだ。
そんな村に転機が訪れたのは、一年を締めくくる収穫祭が間近に近付いたある日の事だ。
(注)収穫祭とは、この世界セラフィムにおいて年に一度のお祭りで、毎年、実りの秋を迎える9月頃に行われている
今日もいつも通りだ。
『カツッ』『カン』
『カンッ』『カンッ』
鉱夫達はツルハシを振るい、魔鉱石を発掘していた。
そんな中、1人の鉱夫が坑道内で行き倒れになっている男を発見した。
「ん?なんだありゃ?人か?」
その男の種族は人間で、見れば見る程に精悍な顔つきをしていた。
何故こんな坑道内で倒れているんだ?
不思議に思った鉱夫達であったが、男を担ぎ上げ炭鉱村まで連れ帰った。
「おい!!あんた?大丈夫か!?」
声をかけたのジライヤの父である。
「………」
声をかけたが男の反応は無い。
パチパチと頬を叩き、目の下なんかを剥いて瞳孔の確認をするジライヤの父。
ジライヤの父は多少だが医学や薬草学の知識あり、炭鉱村では『先生』なんて呼ばれいた。
「先生?こりゃーーどういうこっちゃ?」
「わからん……」
「とりあえず、俺の家まで運んでくれ」
「おい!いいか?」
「おう!」
鉱夫達は再び男を担ぎあげると、ジライヤの家まで連れて行く事にした。
ジライヤの家は、というより、鉱夫達の家は、使わなくなった坑道を再利用した物であり、壁のような崖にボコボコと空いた穴が彼等の家だ。
「ジライヤはいるか?!」
ジライヤの父は、家に入るやいなやジライヤを呼びつけた。
一方、ジライヤはというと、間近に迫った収穫祭に向けて、お花やら、泥団子やら、子供らしい準備の真っ最中。
「いなーーい!!こっちに来ちゃダメぇぇ」
いるか?と言われて、いないと答えるのは、いると言っているようなものだが……
「わかった!!こっちにも来るなよ!!」
そう言われると、気になるのが幼心のサガというもの。
『ドタっ』『ドタッ』『ドタッ』
何人もの足音が、隣の部屋から聞こえて来て、ジライヤは興味を惹かれた。
「さぁ。ここに寝かせてくれ」
「せーの!!」
何何?何が起こってるの?
扉越しに聞こえて来る幾人もの声に、いてもたってもいられなくなったジライヤは、扉に耳を押し当てて隣の部屋の様子を伺うのであった。
トラル王国の東側、東部地方。アガルタの街から更に東の最東端。東方地区なんて呼ばれる所には、かつてエルフ族による自治区が存在した。
今を遡る事100年前の話だ。
「お父さん~~こっち!こっち!」
今年で5歳になるジライヤは、魔炭鉱(魔石を採取出来る鉱山)から帰って来た父の姿を目に入れて、小さな両手を全力で振る。
「おう」
ジライヤの父もまた、可愛い一人娘の声かけに、右手を軽く上げ笑顔で答えた。
父1人。子1人。
ジライヤの母は彼女を産み落とす時にこの世を去った。
物心付いた時から父と2人。
2人ぼっちだけの暮らしは、貧しくとも充実しており、父が仕事に行っている時でもジライヤは寂しいと思った事は無い。
それは、比較対象が無かったからだ。
2人が住んでいるのは、牧場の近くの炭鉱村で、周りにいるほとんどのエルフ達は、単身で炭鉱村で働いており、家族と呼べる者は、遠く彼の地で暮らしていた。
「おーーう!ジライヤか!!」
「何してんだ?」
「父ちゃんの帰りを待ってたってか?
可愛い奴めーー」
「おじさんも帰って来たぞーー」
「ほれほれほれ~~」
「やだやだ。やめてよーー」
父と共に、魔炭鉱から帰って来た鉱夫達は、ジライヤを見る度に癒され、ちょっかいを出し、揶揄い、そして、笑った。
「ハハハハハッ」
「ハハハハハッ」
「やだやだ~~来ないで~~臭いよぉ~」
「臭いとは失礼な!!ジライちゅあーーん」
「お父さん助けてぇぇ」
「ハハハハハッ」
「ハハハハハッ」
「そーーら!!捕まえた!!」
ジライヤを捕まえ、ギューーとハグする鉱夫達。
「キャッ、キャッ」
「キャッ、キャッ」と子供特有のケラケラ笑いが、疲れた炭鉱村に生気を与えた。
あすも、あしたも、あさっても、
ジライヤは炭鉱村のアイドルで、
死と隣り合わせの現場で、日夜働く鉱夫達にとって、彼女の存在だけが日々の光であった。
貧しくとも、明日が約束されていなくとも、一生懸命に働いている鉱夫達の血と汗と涙で、炭鉱村には今日も笑い声がこだましていたのだ。
そんな村に転機が訪れたのは、一年を締めくくる収穫祭が間近に近付いたある日の事だ。
(注)収穫祭とは、この世界セラフィムにおいて年に一度のお祭りで、毎年、実りの秋を迎える9月頃に行われている
今日もいつも通りだ。
『カツッ』『カン』
『カンッ』『カンッ』
鉱夫達はツルハシを振るい、魔鉱石を発掘していた。
そんな中、1人の鉱夫が坑道内で行き倒れになっている男を発見した。
「ん?なんだありゃ?人か?」
その男の種族は人間で、見れば見る程に精悍な顔つきをしていた。
何故こんな坑道内で倒れているんだ?
不思議に思った鉱夫達であったが、男を担ぎ上げ炭鉱村まで連れ帰った。
「おい!!あんた?大丈夫か!?」
声をかけたのジライヤの父である。
「………」
声をかけたが男の反応は無い。
パチパチと頬を叩き、目の下なんかを剥いて瞳孔の確認をするジライヤの父。
ジライヤの父は多少だが医学や薬草学の知識あり、炭鉱村では『先生』なんて呼ばれいた。
「先生?こりゃーーどういうこっちゃ?」
「わからん……」
「とりあえず、俺の家まで運んでくれ」
「おい!いいか?」
「おう!」
鉱夫達は再び男を担ぎあげると、ジライヤの家まで連れて行く事にした。
ジライヤの家は、というより、鉱夫達の家は、使わなくなった坑道を再利用した物であり、壁のような崖にボコボコと空いた穴が彼等の家だ。
「ジライヤはいるか?!」
ジライヤの父は、家に入るやいなやジライヤを呼びつけた。
一方、ジライヤはというと、間近に迫った収穫祭に向けて、お花やら、泥団子やら、子供らしい準備の真っ最中。
「いなーーい!!こっちに来ちゃダメぇぇ」
いるか?と言われて、いないと答えるのは、いると言っているようなものだが……
「わかった!!こっちにも来るなよ!!」
そう言われると、気になるのが幼心のサガというもの。
『ドタっ』『ドタッ』『ドタッ』
何人もの足音が、隣の部屋から聞こえて来て、ジライヤは興味を惹かれた。
「さぁ。ここに寝かせてくれ」
「せーの!!」
何何?何が起こってるの?
扉越しに聞こえて来る幾人もの声に、いてもたってもいられなくなったジライヤは、扉に耳を押し当てて隣の部屋の様子を伺うのであった。
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