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第24話
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24 北の森
北の森の最深部。
人の手も、色々と何事も立ち入る事を拒み続ける魔物の森。
そこは小鬼族達の巣窟であり、楽園でもあった。
本来なら、彼等小鬼(ゴブリン)達は、大人しく攻撃的な種族ではない。そもそも、人に対して危害を加えれる程の知識を有していないのだが。
レジェンドスキル【統べる者】
統率者がいれば話は変わる。
知識を得る。
群れを成す。
強い者からの支持を乞う。
何だってそうだ。
仕事にしたって、スポーツにしたって。
例えば、サッカー。
監督や、コーチ、司令塔やらフォーメーション。
練習をして、作戦を立てて試合へと臨む。
仮に、その全てが無かったとしたら、11人はバラバラに動いて、試合なんてものにはならないだろう。
北の森に変化が訪れたのは、ちょうど一年前の今頃だった。
そのたった1年という短い期間に、ゴブリン達は増え続け、家を作り、砦を作り、小さいながらも城を建てた。
全て大木を切って作った木製だ。
所々、蔦で作ったロープを使って、木々を上手に組み合わせて造っている。
下等種族のゴブリン達が寄せ集まっても、こんな芸当が出来るわけがない。
なら?何故?
一匹の、たった一匹のゴブリンの出現によって、ゴブリン達は統率されたのだ。
レジェンドスキル【統べる者】
ゴブリンロード誕生の瞬間である。
場面は戻り、北も森の入り口より南へ数キロ。
私は、異様な風貌の男と対峙していた。
「守備陣系!!!」
突然とミランダの罵声が飛んだ。
その声にいち早く反応したのは、壁役のガストンだ。
ガストンは、大楯を構え先頭に躍り出る。
ミランダは肩に背負った大剣を斜に構えた。
ミューレは槍を、リトルジュリーは大弓を、ルーメンはスッと後方に下り支援魔法の準備、ジライヤは杖を構えて何やら呪文を唱え始めた。
私はというと、その中心で異様な風貌の男の心を探ろうと心読スキルを発動。
だが、発動出来ない。
『ピコン』
『対象相手との距離があり過ぎます』
まじか……使えねぇ……
すると、異様な風貌の男が口を開いた。
「どうも~~お初にお目にかかります。
ワタクシ、ネクロマンシーをやっておりますしがない悪魔で御座います。名はギイ。
ギイまたは、"ネクロ"と呼んでくだされば光栄で御座います」
「「「「「「悪魔!?」」」」」」
皆、声を揃えた。
周囲に緊張が奔る。
ネクロマンシーだって!?
そう思ったのはミランダだ。
(そもそも悪魔自体が一個兵団と互角にやり合うという中、ネクロマンシーと言えば、悪魔の最上位に数えられる種族の1つ。最上位となれば、その力は測りきれない)
(どうする?やり合うか?それとも撤退?
仮に逃げたとして悪魔相手に逃げ切れるのか?)
ミランダの心中は穏やかじゃ無い。
一方、ネクロと名乗った悪魔は、『カツッ』と骨の杖を鳴らした。
その一挙手一投足に、白金の翼達はビクリと身体を揺らす。
「そうビクビクなさらずに、今日はただのご挨拶と、1つ忠告をしにやって来ただけですから」
忠告だぁ?皆んな騙されるなよ!
ミランダが片手を挙げその意思を皆に伝える。
「貴方、名前は?」
ネクロの杖が真っ直ぐ私を指し、私に名乗れと催促して来た。
「ケミロウ」
「ケミロウさんですね。覚えておきます」
。。。。。暫しの沈黙後。
「ワタクシ、勝負事というものは、お互いフェアプレーじゃ無いと成立しないと思う性分でして、向こうは知っててこっちは知らなかったってのはフェアじゃない。
だから、忠告をしにやって参りました」
「知っているとは思いますが、ケミロウさん。貴方達が今向かっている北の森には小鬼達の巣があります。
まぁ、本当に『ゲギャゲギャ』と煩くて醜い下等種族ですが、その中に1匹。いや、1匹とは失礼ですね。1人と呼称しましょう。
その中に1人、話の通じる者が居ましてね。
私は『ロードさん』と呼んでいるのですが……実は、
彼もまた、私達と同じ"転生者"なんですよ」
※
「ゲギャゲギャ」
「ゲギャゲギャ」
ゴブリン達は囃し立てる。
「ゲギャゲギャ」
「ゲギャゲギャ」
ゴブリン達は崇拝する。
「ゲギャゲギャ」
「ゲギャゲギャ」
ゴブリン達は担ぎ上げる。
燃えるような赤褐色の肌に、八頭身並みのスタイル。
盛り上がる筋肉の鎧と、黒色のタイトなレザーズボン。
額から2本の短い角を生やし、数十匹のゴブリン達が担ぎ上げた御輿の上に御す。
彼はゴブリンロード。
「ガギャァァァァァ!!」
と咆哮を一鳴上げれば、獣達は怯え、鳥達は一斉に飛び立つ。
北の森が揺れた。
その後「出せ」と一言発せれば、御輿は北の森の最深部を出発。
「ゲキャゲギャゲギャ」
ゴブリン達に担がれて、彼が目指すは新しく生まれた転生者。
新転生者の抹殺である。
北の森の最深部。
人の手も、色々と何事も立ち入る事を拒み続ける魔物の森。
そこは小鬼族達の巣窟であり、楽園でもあった。
本来なら、彼等小鬼(ゴブリン)達は、大人しく攻撃的な種族ではない。そもそも、人に対して危害を加えれる程の知識を有していないのだが。
レジェンドスキル【統べる者】
統率者がいれば話は変わる。
知識を得る。
群れを成す。
強い者からの支持を乞う。
何だってそうだ。
仕事にしたって、スポーツにしたって。
例えば、サッカー。
監督や、コーチ、司令塔やらフォーメーション。
練習をして、作戦を立てて試合へと臨む。
仮に、その全てが無かったとしたら、11人はバラバラに動いて、試合なんてものにはならないだろう。
北の森に変化が訪れたのは、ちょうど一年前の今頃だった。
そのたった1年という短い期間に、ゴブリン達は増え続け、家を作り、砦を作り、小さいながらも城を建てた。
全て大木を切って作った木製だ。
所々、蔦で作ったロープを使って、木々を上手に組み合わせて造っている。
下等種族のゴブリン達が寄せ集まっても、こんな芸当が出来るわけがない。
なら?何故?
一匹の、たった一匹のゴブリンの出現によって、ゴブリン達は統率されたのだ。
レジェンドスキル【統べる者】
ゴブリンロード誕生の瞬間である。
場面は戻り、北も森の入り口より南へ数キロ。
私は、異様な風貌の男と対峙していた。
「守備陣系!!!」
突然とミランダの罵声が飛んだ。
その声にいち早く反応したのは、壁役のガストンだ。
ガストンは、大楯を構え先頭に躍り出る。
ミランダは肩に背負った大剣を斜に構えた。
ミューレは槍を、リトルジュリーは大弓を、ルーメンはスッと後方に下り支援魔法の準備、ジライヤは杖を構えて何やら呪文を唱え始めた。
私はというと、その中心で異様な風貌の男の心を探ろうと心読スキルを発動。
だが、発動出来ない。
『ピコン』
『対象相手との距離があり過ぎます』
まじか……使えねぇ……
すると、異様な風貌の男が口を開いた。
「どうも~~お初にお目にかかります。
ワタクシ、ネクロマンシーをやっておりますしがない悪魔で御座います。名はギイ。
ギイまたは、"ネクロ"と呼んでくだされば光栄で御座います」
「「「「「「悪魔!?」」」」」」
皆、声を揃えた。
周囲に緊張が奔る。
ネクロマンシーだって!?
そう思ったのはミランダだ。
(そもそも悪魔自体が一個兵団と互角にやり合うという中、ネクロマンシーと言えば、悪魔の最上位に数えられる種族の1つ。最上位となれば、その力は測りきれない)
(どうする?やり合うか?それとも撤退?
仮に逃げたとして悪魔相手に逃げ切れるのか?)
ミランダの心中は穏やかじゃ無い。
一方、ネクロと名乗った悪魔は、『カツッ』と骨の杖を鳴らした。
その一挙手一投足に、白金の翼達はビクリと身体を揺らす。
「そうビクビクなさらずに、今日はただのご挨拶と、1つ忠告をしにやって来ただけですから」
忠告だぁ?皆んな騙されるなよ!
ミランダが片手を挙げその意思を皆に伝える。
「貴方、名前は?」
ネクロの杖が真っ直ぐ私を指し、私に名乗れと催促して来た。
「ケミロウ」
「ケミロウさんですね。覚えておきます」
。。。。。暫しの沈黙後。
「ワタクシ、勝負事というものは、お互いフェアプレーじゃ無いと成立しないと思う性分でして、向こうは知っててこっちは知らなかったってのはフェアじゃない。
だから、忠告をしにやって参りました」
「知っているとは思いますが、ケミロウさん。貴方達が今向かっている北の森には小鬼達の巣があります。
まぁ、本当に『ゲギャゲギャ』と煩くて醜い下等種族ですが、その中に1匹。いや、1匹とは失礼ですね。1人と呼称しましょう。
その中に1人、話の通じる者が居ましてね。
私は『ロードさん』と呼んでいるのですが……実は、
彼もまた、私達と同じ"転生者"なんですよ」
※
「ゲギャゲギャ」
「ゲギャゲギャ」
ゴブリン達は囃し立てる。
「ゲギャゲギャ」
「ゲギャゲギャ」
ゴブリン達は崇拝する。
「ゲギャゲギャ」
「ゲギャゲギャ」
ゴブリン達は担ぎ上げる。
燃えるような赤褐色の肌に、八頭身並みのスタイル。
盛り上がる筋肉の鎧と、黒色のタイトなレザーズボン。
額から2本の短い角を生やし、数十匹のゴブリン達が担ぎ上げた御輿の上に御す。
彼はゴブリンロード。
「ガギャァァァァァ!!」
と咆哮を一鳴上げれば、獣達は怯え、鳥達は一斉に飛び立つ。
北の森が揺れた。
その後「出せ」と一言発せれば、御輿は北の森の最深部を出発。
「ゲキャゲギャゲギャ」
ゴブリン達に担がれて、彼が目指すは新しく生まれた転生者。
新転生者の抹殺である。
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