5 / 21
4
しおりを挟む4
ザザは少年を見つめていた。時間が経つのも忘れて見惚れていた。少年が視線を逸らしている事を良いことに、まじまじと見つめる。
あふんっ……なんて綺麗な顔をしているんだ……
一瞬、女の子?なんて思ったけど、よく見たら胸が無い。骨格も華奢だが……男の子だろう?そうだな。声も。
「な、……なぁ?き、君は、なんでこんなところにいるんだ?」
「……わからない」と、少年は答えた。
「ハンターなのか?商会の。なんならベースキャンプまで送ろうか?」
「ベース…、キャンプ?」
「ベースキャンプも知らないのか?」
ザザは驚きの表情をして、
少年はコクリと首を縦に振った。
「そ、そうか……頭でも強く打ったか?うん。そうだ。きっと。記憶が混濁する事もあると聞く。ちょ、……ちょっと見せて見ろ」
ザザは少年に近付いて、腰を落とした。
少年は、小さくうずくまった身体をビクリと震わせる。まるで捨て猫。怯えて。手を前へと出す。防衛本能という奴だ。ザザはその手を軽く握って、少年の手もろともに。少年の顔を自分に向けた。おっふ…目が合った。少年の青い瞳は、全てを見透かしているように透き通っていて、恥ずかしくなり。格好付けたくて。少年の艶やかな金髪の髪が、手にかかり、それを少年の耳へとかける、私。なんで動揺してる?
「怪我は……無さそうだ。名前は?」
「……なまえ?」
「君の名前だ。わかるか?」
名前を聞かれた少年は思い出す。
心の声が。もう1人の僕と名乗ったノザキケンが、僕にくれた名前を。
「……ティム……」
「ティム?」
「うん…そう」
なんとも無い。ただのやり取りに過ぎない。年上の女性が、年下の少年に名前を聞くというだけの会話。1つだけ言っておこう。ザザは興奮していた。
ザザ・ミュースカイ・セビラハート。
齢29にして、初恋に落ちた。
はうぅぅぅぅぅ
どうしちゃったんだ私は~~
心のドキドキと、その変化。
何が何だかわからずに、顔がポッポッと熱い。それでも、気丈に振る舞う。少年に変な人だと思われるのは嫌だ。
幼き頃から今日に至るまで、剣の修行に明け暮れて来たザザ。男にうつつを抜かす時間など無かった。
それでも彼女は処女では無い。恋という物は知らずとも、性欲は人並みにあり、一晩だけの性行為なら幾度なく経験済みだ。ただ、人を好きになった事が無かったのである。だから、このドキドキした感情が恋だとはわからない。わかりようがない。経験が無いからだ。おかしい。私は、何か妙な術でもかけられたのか?ザザの心中に疑念が生まれるも、その疑念は一瞬で吹き飛ぶ。
「お、お姉ちゃん……?」
顔を掴まれた少年は、意を決して声を出した。先程も言ったように、少年には女性の免疫が全く無い。女性は怖い生き物だとも思っているが……かと言ってこの状況。顔を掴まれ、見つめ合って、無視出来る状況じゃ無い事くらいわかる。かと言って、
はぅぅぅ「何?」
「お、……お姉ちゃんの名前は、なんて言うんですか?」
名前?名前?私の?そう言う事?興味があるの?私に。この時、既にザザの疑念は吹っ飛んだ。だってぇぇぇだってさ。女の私が言うのもなんだけど、どこからどう見たってぇ至高!!ヤバい……可愛い過ぎ……
ザザの顔から殺気みたいな。なんと言うか。危険な香りが漂う。まるで、獲物を見つけた狼のように、少しだけ上向きの小鼻はプクりと膨れている。肌荒れが酷い。鼻息も凄い。それでいて血塗れ。この女は危険だ。思ったのは、もう1人の自分。ネガティブケン。
二重人格という言葉を聞いて、どう思うかと10人に聞いたら、性格が悪いと答える人が多数を占めるだろう。だがしかし、だがしかしだ。人間誰しも善と悪。明と暗。例えば、ゴミを持っている。面倒だ。捨てちゃおう。ダメだ。ダメ。ちゃんと持って帰ろうよ。
オンとオフがあり、どこでそのスイッチが切り替わるのか?誰に聞いてもわからないと言うけれど、その時の気分で、捨てるか、それとも持ち帰るのか?右手に握られているゴミを。だから、二面性の心を人は持っていて、昨日は良い子。でも今日は悪い子。ティムとケン。少年の中には2つの人格が共存している。記憶は1つだ。野崎研という悲しくも、冴えさない男の記憶だが、明日を夢見るポジティブなティムと、その反対。ネガティブなケン。少年は二重人格である。
以下は、少年の心中。
"ティム"と"ケン"の会話だ。
「危険だ」
「何が?」
「見ればわかるだろ?」
「見ればって……」
「この女だよ」
「お姉ちゃんが?命の恩人だよ?」
「バカ言え!もう忘れちまったのか?女なんてもんはよ。何を考えているかわからねぇ!見て見ろあの目!どんな目してやがる?こーいう目をしている奴は碌な事を考えて無い。危険だ。逃げよう」
「逃げようって……どこに?」
「そんなのは逃げてみねぇとわからねぇ。ただ、この女に付いていくよりかはマシだ!」
「でも……」
訪れたのは選択だ。
人生とは選択の連続上に築かれて行く。
1 . 女性の誘いにのって、ベースキャンプに付いて行く
2 . 女性の誘いを断り、この場から立ち去る
チクタク チクタク……
少年はどちらを選んだか?
それはまた次の話でするとして、私の名前はザザ。ザザ・ミュースカイ・セビラハートだ。と、女性は名乗った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる