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エミリオ商会が運営しているベースキャンプは、通称、バサラの塔。もしくは、塔のキャンプ、塔のベースキャンプなどと呼称されている。
バサラの塔は、森を南北に分断している南北線(片側二車線の道路だった道)と、ローレヌ川が交差する川岸に建っている。建っていると言っても、地上333メートルの元電波塔は半壊しており、その半分はポキリと折れてしまっていて、地面に刺ささっている状態。鉄骨の骨組み達は、サビと蔦で覆われて、一種のモニュメントのような風体である。南北線の道沿いには、旧世界が残した遺物達が点々と残っていて、それに目を付けた先々代のエミリオ・バッカスというハンターが、塔の下で商いを始めたのが、塔のベースキャンプ、バサラの塔の始まりとされている。現在は、バッカスのひ孫に当たるエミリオ・ルーフによって、バサラの塔は運営されていた。
「あそこに見えるのがバサラの塔だ」
ザザは前方を指差して、少年ティムに教えた。あれが……塔?何処かで見たような……ってか倒れてるし……ティムは、バサラの塔を見て思った。というより、2人は荒廃した道路を進み、南北線へと出た。南北線もまた、道路というよりは、道ではあらず、木々の根っこに侵食されたほぼ森だった。舗装されたアスファルト(黒い土)からは、草というより木が生えている。2人は荒れ果てた南北線を南下し、バサラの塔が目視できるところまで来ていた。
その道中、至る所に旧世界の文明の名残り。要は、野崎研の記憶にある建物群が崩れかけ、蔦や木に覆われてポツポツと建っていた。あの看板はコンビニだ……あの建物は、スーパーかな?あっちはホームセンター。
この世界は……一体?少年ティムは、ザザに付いて行く事にした。少年の心中で、その選択は行われ、"ティム"が"ケン"を説得したのだが、この世界は一体?ザザに付いて行くと決めた事によって、この世界の事が少しだけわかりつつある。
どれもこれも壊れてる。
僕が知ってる文明は滅んでいるのかもしれない……
「腹が減ってるだろ?バサラの塔に着いたら食事にしよう」
『ぐぅぅ……』「あれ?」
「腹で返事とは可愛いな」
確かに腹は減った。お腹が減ったという事は僕は生きている。生きとし生けるものは、必ずと言っていい。他の生物の命を喰らって生きている。バクテリア、が土を。土が草を、草を草食動物が、それを肉食動物が、そしてまた、死んだ動物達をバクテリアが、食物連鎖のピラミッドは循環し、命が命を繋いでいる。という事はだ。腹が減った。何かを食べたいというこの衝動。食欲。食物連鎖のピラミッドの中に組み込まれている。なら僕は生きている。
そうなると……新しい命?
ここは、死後の世界では無く、違う世界。異世界。転生したのなら……小さくなった僕の身体にも納得できるし、野崎研のビジュアルじゃ無いのかもしれない。薄々感じていた違和感は、そのせいなのかも?やけにお姉ちゃんが優しいのは、僕がメチャクチャイケメンだからか?……なんてね。全て仮説だけど、あそこに見えるバサラの塔まで行けば、何かわかるかな?
ティムはそんな事を考えていた。
「お腹、減ったです」
「そうか!そうか!良い店があるんだ。カエルを食べに行こう」
「か、かえる?」
何かの聞き間違いか?そう思ったティムの声が裏返る。
「うん?何が?」
「カエルって言った」
「カエルも知らないのか?」
「カエルは知ってるけど食べた事無い」
「そりゃあ人生の半分、損してるな」
「そんなに?」
「美味いぞ!さぁ。私も腹が減った」
身長180センチ近くあるザザが、身長150センチほどのティムに手を差し伸べる。この手を掴めと言わんばかりの顔で。
ティムは、それを拒否した。「あっ大丈夫です」と、さりげなく。
「そ、そうか……」
出していた手を、寂しそうに引っ込めるザザ。無理矢理という言葉は嫌いじゃ無い。実際、可愛い男の子を無理矢理犯した事だってある。別に焦る事でも無いし、やりたいだけなら、出会い頭に押し倒している。
命の殺り取りをした直後ってのは、気持ちが昂って、それに呼応するように性欲も高まるというもの。ただ、やりたいだけじゃ無いんだよ。この気持ちは……だから。
彼女はショックを受けていた。急に自信がなくなる。私じゃダメなのか?助けてやったのに?命をだぞ?好きになって、好きになっよ。ってか普通、好きになるだろ?そんな風に考えるのって間違ってるの?わからない……
恋とは盲目。愛とは母性。百戦錬磨の特級ハンター"ザザ・ミュースカイ・セビラハート" 初恋というラビリンスに捕らえられ、迷走していた。
一方で、差し出さられた手を、さりげなく断ったティムは。カエル……カエル……カエル?……カエル、カエル……
カエルで頭がいっぱいだった。
カエルを食べるという。ゲテモノ料理。
スープの中に浮いたカエル。カエルの丸焼き。オシャレな葉っぱを添えて~無理。
昔、日本でもウシガエルを食べていた。ヴォーン。ヴォーンと鳴く大きなカエルだ。野崎の記憶では、のそのそと歩く。夜、田んぼの方から鳴き声が聞こえる。車に轢かれてペンシャンコになっている。大きいから気持ちが悪い。滅多に見ないから見つけると興奮する。見つけた時はメチャクチャ驚く。あれを食べる?味は鶏肉に近いらしいけど……ビジュアル的に普通に無理……と、思っていたのに、
「はい。お待たせ。ブロッケンフロッグの生焼きです」
想像していたよりグロかった……
店員が持って来た料理が、目の前に置かれてティムは言葉を失った。ここはバサラの塔にある、飲食店。
バサラの塔。ベースキャンプ。ベースキャンプと言うと、テントが張られているだけの簡易的な造りを想像するが、そうでは無い。もはや、1つの集落。村と言ってもいいだろう。塔の下に集落を作ったのは、目印になる為。鬱蒼と茂る木々が広大に広がる森。
ウンバサという森だ。ウンバサの森は、どっちに向かって歩いているのか、方向感覚を失って迷ってしまう。日常茶飯事だった。そこに突如として旧世界の遺物達は現れたと言う。100年前の話だ。うってつけの目印があるじゃないか?人が、人間が、そう思うのは至極当然。いつ頃からか。その塔をバサラの塔と呼んだ。誰かが決めた。あの塔をバサラの塔と呼ぼう。遠く森の中でも、バサラの塔は目印となった。
「イキが良さそうだな」
「わかる?今朝入ったばかりの取り立てよ」
「目を見りゃわかる」
「まだ動くんだから!ほら」
「エッダ。こりゃいいね。美味そうだ」
「でしょ!そろそろザザさんが帰って来る頃だろうと思って、奮発して仕入れちゃった」
「流石だね」
「でぇぇ?お連れさん?」
エッダと呼ばれた店員は、店員ではなくこの店の女主人"エッダ・マッタ"。ザザが連れて来た少年に興味を示す。彼女がバサラの塔で飲食店を開いたのは、3年前。ザザは、エッダがお店を開いた時からの知り合いで、この店の常連だ。
料理に入るだろ……というか。料理なのかな。これ……女主人は、ブロッケンフロッグの生焼きと言った。丸焼きでは無く。生焼き。それがどれほどグロテスクな料理で、ミテクレかと言うと、まずはブロッケンフロッグについて語らさせてもらおう。
ブロッケンフロッグ……両生類。体長30センチほどのカエル。オレンジ色の表皮に、緑の帽子を冠している。何故帽子を冠しているか謎。帽子にはドクロマークが白文字で描かれている。頭が異様にデカい。目玉もデカい。目玉がギョロリと動く。まだ生きている。これを食べる?どうやって?
ザザは躊躇無くその目玉に。フォークをグサリ。「ゲゴォォォ」気持ちの悪い鳴き声が、店内に響いた。
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