8 / 21
7
しおりを挟む7
この壊れた世界で人と魔物。そして魔獣と呼ばれる者達が共存し始めて幾年幾代。いつの頃からは知らないが、魔物や魔獣を狩る者達を、人はハンターと呼んだ。
やがて、ハンター達にも規則ができ、組織ができ、派閥ができ、そして協会ができた。
現在、ハンター協会に身を置いている者は500名を超えるが、女性の割合は1割にも満たない。そんな男社会のハンター業界において、女性でありながら勲章名を拝命し、ハンター協会の最高戦力とも呼べる、特級ハンターになったザザは、例外中の例外だ。
所謂、紅一点。
容姿の方はそれ程良いとは言えないが、目を見張るのは、たわわに実った大きな胸と、ムッチリとしたヒップライン。更に、男に媚びず。誰とも組まず。討伐スタイルは基本ソロプレイと、その実力も去ることながら、ネームバリューも重なり、ハンター業界ではかなりの人気を博していた。
「ザザさん!」
「ん?なんだ。赤鼻か……どうした?」
「誰ですか?」
「あ、あぁ。森にいた」
「森に?!ウンバサの?」
「そうだ」
「まさか!?そ、そいつは、魔物の類いか!魑魅魍魎ですぜ!ザザさん。騙されちゃいけねぇ!俺がその正体、暴いてみせやす」
赤鼻と呼ばれた小男は、確かに。鼻の頭が赤い。さっきまで、ザザの横に立っていたのに、次の瞬間には、ティムの後ろに立っていた。ナイフがキラリと光る。ティムの首元にナイフが迫る。
「おい!」
殺気!?
ザザから放たれた殺気に当てられて、小男の動きが止まった。
「私の連れに何しとんじゃ!ボケ!」
「いやっ俺は……そのっ」
「お呼びじゃ無いんだよ!シッシッ」
ザザは、小男を片手であしらう。そうじゃなくて、と思う小男は、横にいる少年の様子を伺った。こりゃ。また、なんと!?小男は驚きの表情を見せた。
ビックリするほどイイ男じゃねぇか?!
ってか男か?美しい……これは、いったいどういうこった……お上の使いにしか見えねぇぞ。
赤鼻と呼ばれた小男は、これほど美しい人間を見た事がない。拝む気持ちが生まれた。時間が止まり。もう少し側で見ていたいという気持ちになった。
「ザザさん……こりゃあ……」
そう口にするのが精一杯で、言葉が続かない。
ティムの心中では、
「なんなんだろう?この人」
「気持ちの悪い奴だ」
「う、うん……歯もないし、息も臭い。早くどっかに行ってくれないかなぁ……」
「手に持ったナイフが震えてやがる」
「いきなりナイフを持ってて、ビックリしたけど」
「危害を加えるつもりなら、最初から刺す」
「確かにね」
「ザザって言う女は、わりかし使えそうだ。この村のボス的存在とみて、まず間違い無い」
「お姉ちゃんが?」
「この村に来た時思わなかったか?この店に入った時もだ」
「別に……」
「モブキャラ達がこの女を見る眼。あれは、崇拝者の眼だ。この女は、間違い無く使える!」
「使えるって言い方はあまり好きになれないな」
「何を言ってんだ?お前は」
「………」
「使えるものは使って行く。俺たちの目的を忘れたのか?!」
「………覚えているけど、そんなに……」
「バカを言え!神との約束は絶対だ!いいか?俺たちは、超絶美人の女とSEXして、そして思い残す言葉無く笑って果てる!これが俺たちの目的で、俺とお前の存在意義だ。忘れんじゃねぇぞ!!」
「……うん」
「あの……危ないから……」
ティムは、顔を近付けて動かなくなった小男に、その手に持つナイフをしまってくれと言う。「あ、あぁ。すまねぇ……」息が臭い。
小男は、腰にぶら下げた鞘の中へとナイフを収めた。
「シッシッ!赤鼻。お前の席はあっちだ。来るんじゃ無いよ!」
「は、はぁ……」
赤鼻と呼ばれた小男は、首を垂れて自分の席へと戻って行く。小さな背中が、さらに小さく見えた。続いてエッダが、黒豚の香草焼きを運んで来た。料理をティムの前に置きながら、パッカリ開いた胸元をティムに見せつける。エッダの胸は、ザザに比べると小ぶりだが、形は良さそうだ。それに、ブラジャーという物をしていない。そういう文化が無いのだろう。乳首が見えそうだ……
ティムの顔は照れて紅潮した。
「あら……可愛い♡」
ティムにだけ聞こえるような声で、エッダは言った。
「エッダ!!」
「あら?」
「それ以上ティムに近づくな!!」
「なんのこと?別に。私は料理を運んだだけ」
「はぁ?!なんでそんな格好で?!さっきの服はどうした?」
「暑いから脱いだのよ」
「ぼさけ!!死にたいか?!」
「待って!ザザさん。なんでそうなるの?私は、ちょっとね。この子に興味があるだけ」
「どの口が!!それ以上言ってみろ!」
ザザの目付きが、明らかに違う。殺気立っている。まるで、発情期のオス猫のように、毛が逆立って、今すぐにでもギャーギャー鳴き出しそうだ。
「醜いな」
ケンが心中で呟く。
「何が?お姉ちゃんが?」
「確かにザザって女は、お世辞でも綺麗とは言えない顔だ」
「そういう事は、ハッキリ言わない方がいいと思う」
「お前も思ってるくせに、イイ子ぶってんじゃねぇよ。俺とお前は一心同体。お前が思ってる事は、俺も思ってるって事を忘れんな!」
「う、うん……」
「どうすんだよ?」
「止めるよ」
「どうやって?」
「わからないけど……僕のことで争わないで欲しい」
「いい子ぶりやがって、まぁ。いい。で?どっちに付くんだ?」
「それは……」
◆◆◆
「け、喧嘩は良くないと思う」
「うっ……ティ、ティムは黙ってて!」
「お姉ちゃん!」
「やだよぉ。ザザさん。ちょっと本気にしないでよ。ちょっと。この子を揶揄ってみたかっただけよ。それともなぁに?ザザさんがまさかねぇ……お熱なの?」
ティムは席を立つ。エッダは、やだよぉ~と、手をこまねく。「チッ!!ふざけるな!!」ザザは怒って。店を出て行ってしまった。無銭飲食だ。食い逃げだ。と、言っても、ザザが多額の寄付をこの店にしたのも事実。エッダがこの店をオープンする時の事だ。ザザは500万ベイルもの大金を、ポンっとエッダに手渡した。
「美味いもんが食えるなら、それでいい」
ザザ・ミュースカイ・セビラハートとは、そういう女だ。
ティムは、どうしていいのかわからない。
ザザを追うべきか?
それとも、女主人の元に身を寄せるか?
訪れたのは選択だ。
人生とは、選択の連続上に築かれて行く。
1 ザザを追いかける
2 店に残る
「どうしたらいいと思う?」
「お前が止めに入ったからだろ?」
「だって、あのまま放っておけないよ」
「世の中にゃ、放っておいた方のが、いいことだってあんだぜ」
「お姉ちゃん。怒っちゃったけど……」
「お前が怒らせた」
「そうなの?」
「8割型はそうだろうな」
「僕、何もしてないけど」
「女主人の胸。覗いてたろ?」
「うっ、うん……」
「どう思った?」
「乳首が見えそうって……」
「ジロジロ見てたろ?」
「そりゃ。見るよ。男の子だもん」
「女主人が美人だからか?それとも、元娼婦だからか?卑猥な想像を膨らましたのは事実だろ?じゃあ逆に。女主人じゃなくて、あの女。ザザの胸だったらどうなんだ?ジロジロみたか?覗いたか?どうなんだ?」
「そ、それは……」
「違うだろ。答えはNOなんだよ。わかっただろ。お前は、知らず知らずのうちにそういう目で見ていた。ところで。早くにあの女。ザザを追いかけた方がいい。傷は浅いうちに埋めておけ!」
「う、だけどさ。僕が、エッダさんのおっぱいに気を取られて、なんでお姉ちゃんが怒るの?意味わかんないんだけど……」
「そんなもん本人に聞け」
「なんて?聞きづらいし、聞けないよそんなこと」
ティムは、ザザを追いかけなかった。
店に残る選択をした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる