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時間は少し遡る。
ティムとザザの時間にだ。
場所はザザの家。
結局。ティムとザザは、あの朝。あの後。どうなったのか?実は、2人の関係性を決定付ける大きな出来事が起こっていた。
「お姉ちゃん。ありがとね」
ティムは、ザザの方を振り向くと、儚げな笑顔でそう言った。その笑顔が途轍も無く可愛くて、愛くるしくて、ザザは言葉を失った。だだ、心の底から込み上げて来る、たった1つの革新的な感情。
ティム……好きだ……。
言葉にするのは難しく。これが恋というものなのか?愛しくて、力任せで奪ってはいけない、いや。奪えない。すごく尊い気持ち。これが人を好きになるという事。すなわち。恋。ありがとう。
人は、恋をすると変わるという。世界がキラキラ輝いて見えて、ほんの些細な事でも嬉しく感じ、感謝する気持ちが自然に溢れる。
本人は気付いていないだろうが、ザザの心中で何かが弾けて、そして、変わった。
「お礼を言うのは……こっちの方だ」
「どういうこと?」
ティムは首を傾げる。
「ただ、1つだけお願いしたい事がある」
「お姉ちゃんが?僕に?」
「あぁ……そうだ」
「うん。いいよ。僕に出来る事なら。だって、お姉ちゃんは、命の恩人だから」
「そ、そうか。そうだよな……」
「?」
「……だったら……ティム。……き、……」
「木?」
ザザは顔を真っ赤にして、口をモゴモゴして吃り、続く言葉が続かない。そんなザザの事をティムは待った。何かお姉ちゃんが、一生懸命に何か。なんだろう?わからないけど、伝えようとしている。
「き、……キッ……」
「キスさせてくれ!!」
吃りながらも、最後はハッキリと大きな声で、顔は下に俯きながら真っ赤にし、ザザは言い切った。プルプルと身体が震えている。
「キス?」
「そうだ!キスだ!キスさせてくれ!!」
ザザは、顔を上げティムの方を見た。真剣で大真面目な表情だ。切迫詰まったように余裕が無く、プルプル震えている。彼女の大きな口が声が、森の中の静寂を突いて。響いた。キスさせれくれ!!
訪れたのは選択だ。
1. ザザの要求を呑み、キスをする
2. ザザの要求を拒否し、キスを断る
「どうすんだ?ありゃぁ。大真面目だぜ」
「どうしよう……」
「考えろ!」
「うーーん」
「この女を敵に回すのはまずい。それは、お前もわかるよな?この女を上手く使って、この森から出よう。森さえ出ればこっちのもんだ。お姫様だとか、有名貴族のお嬢様と出会ってよ。もちろん。華麗で穢れなど知らない綺麗な子だ。あとは選びたい放題よ。俺達の魅力なら一撃だ」
「でも。うーーん」
「ただ。問題なのは今だ。無闇やたらに断るのはどうなんだ?キスくらいしてやっても減るもんじゃねぇだろ?」
「えっ!?ファーストキスだよ!?」
「そんなもんくれてやれ!」
「でも……キスってさ。好きになって、付き合って、ドキドキしながらするもんじゃないのかなぁ……」
「お子ちゃまだなぁ。お前は。そんなもんに夢見てどうする?お前の武器は、なんだ?腕力か?剣術か?それとも何か特別な力があるのか?答えはNOだ。
お前の武器は1つだけ。神より授かりし。
美!
誰もが羨むルックスだ。ならそれを切り売りでもいいから使って、男も女も虜にし、大いなる野望に向かって突き進むしかねぇだろ!?」
「でも……大丈夫かな?」
「何が?」
「お姉ちゃん……キスしたら襲って来ないかな?」
「無いな。はじめからそんなつもりなら、昨夜の時点でやってるわ。逆に、して来なかったって事は。どうなんだ?断る方が危険だと思うがな」
「どういう意味?」
「なりふりかまわず。もうどうなってもいい。自暴自棄に陥って……。怖いわ。怖い。厄介だと思わないか?この女が、なりふりかまわずに求めて来るんだぞ?無理だろ?逃げきれない。だったら、少しくらい飴を与えて、手懐けた方がいい」
結論は出た。
選択は行われた。
「いいよ」
「い、今、なんと!?」
「お姉ちゃんがしたいなら……キスしよ」
「い、いいのか?本当に?!」
「でも、キスだけだよ!」
「あ、あぁ!わ、わかってる!」
「うん」
ザザは、座っていた丸太のベンチから立ち上がり、微動だにしない。固まってしまった。動けない。
ティムは、そんなザザの方へと近付いた。そして、丸大のベンチの上に立つと、ザザと同じくらいの身長になった。
『チュ♡』
ティムから、ザザへ。
軽い口付けのプレゼントだ。
決して、ディープでは無く。舌を絡めるわけでも無く。唇と唇が重なっただけのバードキスだ。
それでも、ザザの心はショートした。
雷にでも打たれたかのように、頭の先から、つま先の裏まで、高圧電流100ボルトがビリビリと駆け巡ったように感じた。
嗚呼……私。幸せだ。
プスプスとショートした頭が、少しずつ冷静さを取り戻し始め。欲が生まれた。
もう一回したい。もう一回キスしたい。
「ダメだよ。お姉ちゃん。キスは1日1回だよ。明日またしよ?ね?」
「明日?明日になったらまたしてくれるのか?」
「うん。明日は……ちょっとだけ。舌を入れちゃおうかな?なんちゃって。ふふっ」
「し、舌を……」
プスッ!プスプス……
ザザの顔はみるみる真っ赤になって、頭の上からプスプスと煙が出ているように見える。想像しているのだ。ティムと、舌を絡め、ネチョネチョ。クチュクチュと。キスをしている自分を。
「ブハッ!」
「うわっ!」
ザザは、息を吐くのを忘れていた。唾とか、他とか、色々なものが口から吐き出されて、ティムの顔面にスプラッシュ。
「あぁ……どうしよう。ティム。すまない」
「だ、大丈夫だよ」
ティムは、ベトベトに飛んだザザの唾液を、手で拭った。クンクン。鼻腔に香るは、唾液のニオイ。
く、くさい……
獣臭というか、なんというか。ヨダレが乾いた時のニオイというか……それを瞬時に分泌出来るのだから。お姉ちゃんの唾液は臭いんだなぁ……
心配するザザの顔を見て、苦笑いで返すティムだった。
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