溺愛パパは勇者！〜悪役令嬢の私のパパが勇者だった件〜

第3章

No.74 身体検査

「可能性は低いだろうけど、取り敢えず身体検査させてもらうから」

クリスが、アナを見下ろしながらそういうとアナはニマニマと笑いながら話し出す。

「いいわよ！さあ、どんどん触って頂戴！」

腕を広げ、「さあ来い」と言わんばかりに待ち構える。

（言い方がちょっと…）

「何、痴女みたいな事を言ってんの？僕が君に触るわけ無いじゃん」
「えっ？」
「それじゃあ、怪しい物を持ってないか調べてね」
「はい！！」

茫然とするアナを置き去りにして、クリスは近くの生徒に声を掛ける。すると、1人の女子が前に出てアナの身体検査を始める。その女子生徒の胸元には銀色に輝くブローチが付いていた。

（クリス親衛隊の人だ）

クリスに心酔し忠誠を誓う信者達。
クリスの為に全てを捧げることの出来る人に、親衛隊の証として渡されるブローチだ。

「ちょっ！？なんでアンタが触るのよ！」
「動かないでよ、やり辛いわ。…そもそも、貴女なんかにクリス様が触れるわけ無いでしょ？」
「どういう意味よ！」

アナは、顔を赤くして怒鳴るが彼女は無視して素早く身体検査を終わらせる。

「クリス様、怪しい物はありませんでした！」
「やっぱりね。ご苦労さん」
「いいえ！お役に立てて光栄です！」

クリスに労わりの言葉をかけられ、彼女はうっとりとする。背後では、他の親衛隊のメンバーがハンカチを噛み締めそうな勢いで悔しがっていた。

「…という事は、誰かが彼に精神系の魔法を現在進行形で使ってるって事だね。…面白い。こんなに難しい魔法をこんなに長時間かけられるなんて」

キラキラと瞳を輝かせてクリスは辺りを見回す。
その顔は、新しいオモチャを見つけた子供の様な顔だった。