溺愛パパは勇者!〜悪役令嬢の私のパパが勇者だった件〜

ハルン

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第3章

No.81 時が過ぎるのを

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「ティア!ティアティアティアティア~!!会いたかったよ!元気にしてたか?父さんは、お前が居なくてすっごく寂しかったよ!この匂い、この感触、間違いない。あ~、本物のティアだ」
「…久しぶり、お父さん」

ギュウギュウと力強く抱き締められる。頭に頬ずりされながら横を見ると。

「いや~ん!暫く見ないうちに、また可愛くなっちゃって!ちゃんとご飯食べてる?寂しくない?ママは、すっごく寂しいわ!」
「母さん、苦しいんだけど。離して」
「少しくらい良いじゃない!最愛の息子を抱き締めて何が悪いのよ!」

死んだ目をしながらアニーさんに抱き締められているクリス。少し離れた所で、サーシャは引き攣った笑みを浮かべていた。

(あぁ、見ないで)

この歳になってまで、こんなにも子供に構う親は中々居ないだろう。小さい頃は、まだ許せた。
実際、明確に愛情を示されて嬉しかった。だが、それは子供の頃の話だ。確かにこの歳になっても、こんなにも明確に愛情表現をしてくれるのは正直嬉しい。それは認めよう。

しかし…だ。

子供は、成長するものだ。
身体は勿論、心もだ。小さい時には無くて、今の私にあるモノ。

ーーそれは『羞恥心』だ。

「お父さん、私も会えて嬉しいよ。でも、ちょっと離れてくれない?」
「なんでだ!?そんなにお父さんと一緒に居たくないのか?」
「別にそういうんじゃ…」
「ならいいだろ?あぁ!俺の可愛い天使!愛してるよ!」

そう言って、お父さんは私の頭にキスの雨を降らす。それも、女友達サーシャの目の前で。

(…誰が私をひと思いに殺して下さい)

チラリとクリスを見ると、私と同じ様に頬にアニーさんからキスの雨を贈られていた。
同性の私ですらこんな想いなのだ。異性の友達に、年頃の男子がこんな場面を見られるなんて…。

(地獄だな)

その証拠に、クリスはまるで人形の様にされるがままだ。

「ティア~」
「クリス~」
「「………………」」

そうして、ただ静かに時が過ぎるを待つしか私達には出来る事が無かった。
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