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第3章

No.97 声

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(あの部屋から出れたのは良いけど、どうやってクリスとのデートイベントに行こう…)

白いカーテンで仕切られたベッドの上でアナは考えていた。特別室から救護室に移動出来たまでは良かった。しかし、今度は救護室から出られなくなっていた。2度と同じことがない様に見張りの教師が1人、仕切りの外で待機しているのだ。

(あぁ、もうっ!イベントは明日なのにっ!なんでこんなに邪魔ばかり入るのよ!)

今のアナは、魔力封じの腕輪を付けられている。その為、魔法は使えない。

……例え何か魔法を使えたとしてもアナの実力では教師どころか、クラスメイトにすら勝てないだろうが。

(何としても明日のデートイベントには行かないと。これ以上、時間無駄に出来ないわ!)

アナは、未だにどの攻略対象者との親密度が上がっていないことに焦っていた。ゲームでは、このイベントを逃すと暫くイベントは発生しない。だから何としてもこのイベントは逃せないのだ。

「おい、交代の時間だ」
「おっ、もうそんな時間か~。じゃあ、よろしくな」

そう言って、代わりの教師が救護室に入ってくる。

(本当にどうすればいいのよ!)

そんな時だった。

『いいな』

そんな声が頭の中に聞こえて来た。

(何?)

『お前のその黒く澱んだその心。とても良い』

その声は、何処か惹きつけられた。

『お前の願い、叶えてやる』

(私の願い…)

『そうだ。此処から出たいんだろ?俺ならお前を簡単に此処から出してやる』

(お願い!私を此処から出して!!)

アナは、その声に願った。
この声が誰で何の為にアナの願いを叶えるのかも考えずに。

『いいだろう。その願い叶えてやる。今日の深夜にお前を此処から出してやる』

そう言って声は聞こえなくなった。

「やっと此処から出られる。…ふふっ。やっぱり運は私の味方だわ。当然よね?私は、この世界のヒロインなんだから」


ーーそして次の日。


朝、見張りの教師が仕切りを開けるとベッドはもぬけの殻でアナが居なくなっていた。








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