溺愛パパは勇者！〜悪役令嬢の私のパパが勇者だった件〜

第3章

No.112 動き出す魔王

此処は魔王城、最上階。

「うわぁ～ん！！」

そこから、この城の主人であるアーノルド＝ドラグニアの泣き声が昨夜から続いていた。 

「うわぁ～ん！！」
「～っ！いい加減泣き止んでください！昨日から鬱陶しい！！」

アーロンが遂に耐えきれなくなり怒鳴る。

「グスッ。だって～」
「だっても何もありません！はやく仕事をして下さい！昨日から滞ってるんですから」

アーロンが何度も言うがアーノルドは泣き続ける。

「ノアが…僕の可愛いノアがっ！」
「ノア様ならアスカラ魔法学園に行ったでしょう」
「うわぁ～ん！ノアー！寂しいよぉ～」

わんわん泣くアーノルド。

（これが無ければ…）

アーロンは、頭を抱える。
息子を溺愛している以外は、とても優秀な魔王なのだ。歴代の魔王の中でも優秀と言える。だが、息子の事になると使い物にならなくなる。

「うぅ…」
「私は、この書類を届けに行ってきます。それまでに仕事をしていて下さいね」

そう言ってアーロンは執務室を出て行く。

「グスッ…ノア～」

アーノルドは、飾ってあったノアの写真を見つめる。

＊＊＊

「ただ今戻りました。………陛下？」

アーロンが書類を届け戻ると執務室の中には誰も居なかった。
その代わり、机の後ろのバルコニーに続く窓が開きカーテンが風に揺れていた。

「あの野郎っ…！！」

つい、口が悪くなってしまった。だが、仕方ないだろう。

アーロンは、すぐに魔王城で働く者達を集める。

「皆に知らせがあります。陛下が逃亡しました」

ーーざわっ

一気に騒めきが起きるが、アーロンは手を叩き騒めきを鎮める。

「これより、作戦Aを開始します。皆、速やかに動いて下さい。私は、陛下を連れ戻します」
「「「はい」」」

城の者達に指示を出すと、アーロンはアーノルドを連れ戻すべく魔王城を後にした。

目指すは、アスカラ魔法学園。