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第3章
No.127 で、で、で、出たーー!!
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アスカラ魔法学園は、広大な敷地面積を誇る全寮制の学園である。本来なら、休日にしか学園内から出る事が出来ない。どうしても街に出たい時は、事前に外出届を申請して教師三人以上の許可が必要だ。
正直、色々と面倒な手続きをしてまで街に出ようとする生徒はあまり居ない。しかし、娯楽の類が無い生活を続けると、問題行動を起こす生徒が出てしまう事がある。その為、学園内には学園の関係者ならば無料で使用出来るカフェや小物店、図書館に多目的広場などが存在している。
ティアの手を握るノアは、一つの店の前で足を止めた。
「此処って、図書館だよね?」
目の前には、街で見かける建物とは比べ物にならないほどに立派な作り。この学園には、貴族などが多く通う為に、それなりに立派な作りになっているのだ。
「そうだよ。丁度、此処に用があったんだ」
「でも、それなら私必要無いんじゃ…」
「ほら、行くよ」
「えっ、ちょ…!」
ノアにしては珍しく、少し強引にティアを連れて図書館に入る。入った瞬間、本独特の匂いがティア達を包む。
(この匂い、結構落ち着くなぁ…)
初めて入った図書館は、まさに圧巻の一言であった。二階建ての建物の図書館は、それなりの高さがある。しかし、その天井ギリギリ迄に大量の本が収められていた。
本来なら届かない高さの本。
しかし、此処はアスカラ魔法学園。この学園には、優秀な魔法使いしか居ないのだ。ある者は、体を浮かせて。またある者は、目的の本を引き寄せて。それらのレベルに至っていない者は、司書に頼んで本を取ってもらっていた。
「凄い…!」
学園内で魔法を使った授業はある。
しかし、今は魔力コントロールの段階であるティア達1学年は、これぞ魔法!と言った授業を受けてはいない。だから、人が浮かび、本が飛ぶ目の前の光景は、これぞ魔法使いと言った光景だった。図書館の中だから静かに、しかし内心では大興奮中のティアを他所に、ノアは当たりを見渡していた。
「もう着いてると思うんだけど…」
(誰かと待ち合わせしてたのかな?)
それならティアは、ますます必要では無いと思うのだが…。キョロキョロと暫く当たりを見渡したノアは、漸く目的の人物を見つけたらしい。ティアの手を引いたまま、2階に上がる。そうして、誰の目にも触れない死角の一番奥の本棚の前に立つ。だが、そこにはティアとノアの二人の姿しかない。
「………ねぇ、ノア」
「どうしたの?」
「誰かと待ち合わせしてるんだよね?」
「うん、そうだよ」
「………誰も居ないよね?」
一番奥の本棚の為、薄っすらと他よりは暗い。
(何気に、少し怖いんだけど…)
元日本人の想像力の逞しさを舐めないで欲しい。今、ティアの頭の中で凄い勢いで色んな怖い想像が浮かんでは消えていた。
「丁度、今来たみたい」
その言葉と共に、目の前の薄暗い通路の一番奥。もっとも濃い影が揺らめいたと思うと、ドロっとした黒い何かが影の中から浮かび上がってきた。
(ギャーーーッ!!で、で、で、出たーー!!)
この時、口から悲鳴が出なかった事をティアは直ぐに感謝する事になるのだった。
正直、色々と面倒な手続きをしてまで街に出ようとする生徒はあまり居ない。しかし、娯楽の類が無い生活を続けると、問題行動を起こす生徒が出てしまう事がある。その為、学園内には学園の関係者ならば無料で使用出来るカフェや小物店、図書館に多目的広場などが存在している。
ティアの手を握るノアは、一つの店の前で足を止めた。
「此処って、図書館だよね?」
目の前には、街で見かける建物とは比べ物にならないほどに立派な作り。この学園には、貴族などが多く通う為に、それなりに立派な作りになっているのだ。
「そうだよ。丁度、此処に用があったんだ」
「でも、それなら私必要無いんじゃ…」
「ほら、行くよ」
「えっ、ちょ…!」
ノアにしては珍しく、少し強引にティアを連れて図書館に入る。入った瞬間、本独特の匂いがティア達を包む。
(この匂い、結構落ち着くなぁ…)
初めて入った図書館は、まさに圧巻の一言であった。二階建ての建物の図書館は、それなりの高さがある。しかし、その天井ギリギリ迄に大量の本が収められていた。
本来なら届かない高さの本。
しかし、此処はアスカラ魔法学園。この学園には、優秀な魔法使いしか居ないのだ。ある者は、体を浮かせて。またある者は、目的の本を引き寄せて。それらのレベルに至っていない者は、司書に頼んで本を取ってもらっていた。
「凄い…!」
学園内で魔法を使った授業はある。
しかし、今は魔力コントロールの段階であるティア達1学年は、これぞ魔法!と言った授業を受けてはいない。だから、人が浮かび、本が飛ぶ目の前の光景は、これぞ魔法使いと言った光景だった。図書館の中だから静かに、しかし内心では大興奮中のティアを他所に、ノアは当たりを見渡していた。
「もう着いてると思うんだけど…」
(誰かと待ち合わせしてたのかな?)
それならティアは、ますます必要では無いと思うのだが…。キョロキョロと暫く当たりを見渡したノアは、漸く目的の人物を見つけたらしい。ティアの手を引いたまま、2階に上がる。そうして、誰の目にも触れない死角の一番奥の本棚の前に立つ。だが、そこにはティアとノアの二人の姿しかない。
「………ねぇ、ノア」
「どうしたの?」
「誰かと待ち合わせしてるんだよね?」
「うん、そうだよ」
「………誰も居ないよね?」
一番奥の本棚の為、薄っすらと他よりは暗い。
(何気に、少し怖いんだけど…)
元日本人の想像力の逞しさを舐めないで欲しい。今、ティアの頭の中で凄い勢いで色んな怖い想像が浮かんでは消えていた。
「丁度、今来たみたい」
その言葉と共に、目の前の薄暗い通路の一番奥。もっとも濃い影が揺らめいたと思うと、ドロっとした黒い何かが影の中から浮かび上がってきた。
(ギャーーーッ!!で、で、で、出たーー!!)
この時、口から悲鳴が出なかった事をティアは直ぐに感謝する事になるのだった。
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