極妻、乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生しちゃいました!

ハルン

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お茶会にてガダルの紹介が始まった頃、王都にあるアベルシュタイン邸に訪問者が訪れていた。

「まさか、貴方様が我が邸宅に訪れるなど思いませんでしたわ」

そう言って、妖しく笑う妖艶な美女ミランダ。そんな彼女を見て、白いローブを着た訪問者の背後に立つ護衛の騎士がその笑みに見惚れる。

「訪れを知っていれば、もっと良い物を用意しましたのに…」

それに対して、訪問者である人物が口を開く。

「申し訳ありません。どうしてもアランに会いたくて、先触れも無しに来てしまいました」

その声は、未だ子供の声だった。深く被ったローブの間から、見事な金の髪が見え隠れする。

「それに、この紅茶やお菓子もとても美味しいです。これは、今隣国で人気の紅茶ですよね?」
「えぇ。貴方様の母であるミレーヌ王妃様から勧められましたの」
「母は、最近この紅茶がお気に入りですから」

そう言って、この国の第一王子であるクリスは苦笑いをした。

ーートントン。

「母様、アランです」
「入りなさい」
「失礼します」

そう言って、アランが部屋に入る。
すると、紅茶を飲んでいたクリスは嬉しそうに椅子から立ち上がった。

「アラン!久しぶりだな!」

そう言ってクリスはアランの元へと駆け寄る。その拍子に、被っていたローブが脱げる。サラサラとした金の髪に、神秘的な紫の瞳。将来、アランが妖艶な男性になるとすれば、クリスはまさに物語の王子様の様に美しく成長するだろうと分かる美貌の少年だった。

「殿下、お久しぶりです」

そう言って美しい礼をするアランに、クリスは拗ねた様に話す。

「アラン、前にも言っただろう?そんな堅苦しい話し方をするなって…」
「ですが…」

躊躇うアランを、クリスは不満そうな目で見つめる。そんな二人を、ミランダはにこやかに見守る。


ーーそうして先に根を上げたのは、アランだった。


「ハァ~。………わかったよ、これで良いか?」
「これからは、そうやって話せよ?」

満足そうに笑うクリスを、アランは呆れた様に見つめる。

「アラン。最近、庭の花が見頃なのよ。殿下を庭へ案内して差し上げたら?」
「母様…、分かりました。クリス、行こう」
「あぁ。それではアベルシュタイン夫人、失礼します。そうだ、君は此処で待機していてくれ」
「ですが殿下…」
「大丈夫。此処は安全だ」

ついて来ようとする護衛にそう言って、ミランダに挨拶した2人は応接室を後にする。そうして、アランを先頭にして暫く無言で歩く。

ーーそうして、庭が見えて来た頃。

「何のつもりだ、クリス」

そう言って、冷たい視線でにこやかに笑うクリスを見つめたのだった。

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