29 / 105
No.28
しおりを挟む
やって来たティミアと手を取り合って話していると、背後から声がかかる。
「あら?サーシャ、そちらのお嬢さんは?」
清々しい朝に似合わない、妖艶な雰囲気を纏うミランダだ。
「お母様。此方は、この間のお茶会でお友達になったティミアよ」
「まぁ、貴女がティミア嬢なのね。サーシャから話は聞いているわ。初めまして、私はサーシャの母親のミランダです」
美しい笑みを浮かべながらティミアに挨拶をするミランダに、ティミアはボーッと見惚れる。
「ティミア?」
心配になって声をかけると、ようやくティミアはハッと我に返る。そうして、慌ててミランダに挨拶をする。
「は、初めまして!ティミア・トールディンと申します!サーシャとは、仲良くしてもらってます!」
「ふふふっ。とても可愛らしいお嬢さんね。アメリアとそっくりだわ」
その言葉に、ティミアが反応した。
「ミランダ様は、お母様と知り合いなんですか?」
「えぇ、そうよ。前までは、よくトールディン家へ遊びに行ってたのよ。………でも、ここ数年アメリアの体調が優れないでしょ?だから、今は遊びに行ってないのよ」
そう言って、ミランダはティミアの頭を優しく撫でる。
「えっと…?」
「私、貴女の赤ちゃんの頃を知ってるのよ?サーシャが生まれた時と同時期にアメリアも貴女を産んだの。二人は知らないだろうけど、赤ちゃんの頃に何度も会ってるのよ」
「そうなの?」
(ティミアと、そんな繋がりがあったなんて…。知らなかった)
前世の記憶を思い出したのは、サーシャが2歳の頃だ。その為、それ以前の事は記憶に無い。だから、ティミアと初対面では無い事にサーシャは物凄く驚いた。チラリとティミアを見ると、彼女も酷く驚いた表情で此方を見ていた。
「それを知らなかったのに、二人は友達になったなんて…。まるで、カールティアに導かれたみたいね」
カールティアとは、この世界の運命の女神の名だ。カールティアの導きで得たモノは、生涯の宝とも言われている。結婚の誓いをする時も、この女神に誓うのだ。この世界の代表的な女神と言っても良い存在だ。
(確かに、同じく前世の記憶のあるティミアと出会ったのは"運命"かも…)
流石に、偶然では片付けられない出来事ばかりだ。もしかしたら、この世界には本当に神が存在するのかもしれない。
「今日は、二人でお買い物に行くんでしょう?それなのに、引き止めてごめんなさいね」
「大丈夫。それじゃあ、行ってきます!行こう、ティミア!」
「うん!ミランダ様、失礼します」
「気を付けてね」
手を振るミランダに手を振り返しながら、二人はアベルシュタイン家の馬車に乗り込んだ。そうして、馬車は街に向かってゆっくりと動き出したのだった。
「あら?サーシャ、そちらのお嬢さんは?」
清々しい朝に似合わない、妖艶な雰囲気を纏うミランダだ。
「お母様。此方は、この間のお茶会でお友達になったティミアよ」
「まぁ、貴女がティミア嬢なのね。サーシャから話は聞いているわ。初めまして、私はサーシャの母親のミランダです」
美しい笑みを浮かべながらティミアに挨拶をするミランダに、ティミアはボーッと見惚れる。
「ティミア?」
心配になって声をかけると、ようやくティミアはハッと我に返る。そうして、慌ててミランダに挨拶をする。
「は、初めまして!ティミア・トールディンと申します!サーシャとは、仲良くしてもらってます!」
「ふふふっ。とても可愛らしいお嬢さんね。アメリアとそっくりだわ」
その言葉に、ティミアが反応した。
「ミランダ様は、お母様と知り合いなんですか?」
「えぇ、そうよ。前までは、よくトールディン家へ遊びに行ってたのよ。………でも、ここ数年アメリアの体調が優れないでしょ?だから、今は遊びに行ってないのよ」
そう言って、ミランダはティミアの頭を優しく撫でる。
「えっと…?」
「私、貴女の赤ちゃんの頃を知ってるのよ?サーシャが生まれた時と同時期にアメリアも貴女を産んだの。二人は知らないだろうけど、赤ちゃんの頃に何度も会ってるのよ」
「そうなの?」
(ティミアと、そんな繋がりがあったなんて…。知らなかった)
前世の記憶を思い出したのは、サーシャが2歳の頃だ。その為、それ以前の事は記憶に無い。だから、ティミアと初対面では無い事にサーシャは物凄く驚いた。チラリとティミアを見ると、彼女も酷く驚いた表情で此方を見ていた。
「それを知らなかったのに、二人は友達になったなんて…。まるで、カールティアに導かれたみたいね」
カールティアとは、この世界の運命の女神の名だ。カールティアの導きで得たモノは、生涯の宝とも言われている。結婚の誓いをする時も、この女神に誓うのだ。この世界の代表的な女神と言っても良い存在だ。
(確かに、同じく前世の記憶のあるティミアと出会ったのは"運命"かも…)
流石に、偶然では片付けられない出来事ばかりだ。もしかしたら、この世界には本当に神が存在するのかもしれない。
「今日は、二人でお買い物に行くんでしょう?それなのに、引き止めてごめんなさいね」
「大丈夫。それじゃあ、行ってきます!行こう、ティミア!」
「うん!ミランダ様、失礼します」
「気を付けてね」
手を振るミランダに手を振り返しながら、二人はアベルシュタイン家の馬車に乗り込んだ。そうして、馬車は街に向かってゆっくりと動き出したのだった。
18
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる