極妻、乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生しちゃいました!

ハルン

文字の大きさ
52 / 105

No.51

しおりを挟む
部屋に入ると、父ダリルが息子アランの腕からサーシャを奪い取りギュッと抱き締める。

「サーシャっ!ごめんな?一人で寂しかっただろう?パパも寂しかったよっ!」

そう言って、サーシャの頭に頬をスリスリと擦り付けたり、チュッチュっと音を立ててキスをし始める。

「お、お父様!やめて下さい!お客様の前ですよ!?」

サーシャは、羞恥の余り声を少し荒げる。
しかし、そんなサーシャを見てダリルは甘い笑みを浮かべる。

「ハァ~。私の天使は、怒っても可愛いねぇ…」
「当然だよ。だって、俺の可愛い妹のサーシャだもん」
「そうね。私の自慢の娘だもの」

親バカ発言をしたダリルの言葉に、同じくシスコンであるアランと親バカであるミランダが同意する。そんな彼等を、背後にいるクリスとソファーに座っているルイスが苦笑いで見ていた。

「ダリル殿達は、本当にサーシャ嬢を大切にしてらっしゃるんですね」

そんな中、ルイスが羞恥で頬を赤くしているサーシャに気を遣って言った。

ーーだが、悪魔クリスはそんなルイスの気遣いを無視して、此処ぞとばかりに面白がって攻撃して来た。

「本当だね。まさか、人前でこれ程可愛がって貰えるなんて、サーシャ嬢は幸せ者だね。……まぁ、私だったら恥ずかしくて耐えられないけどね」

(こっの……っ!性悪男がっ!!)

サーシャが恥ずかしいのを分かった上でのクリスの言葉に、サーシャは別の意味で顔を赤くする。そんなサーシャの様子を、クリスは愉しげに見つめる。

そうして、二人で見つめ合って睨み合っていると、いきなりサーシャの顔がダリルの胸に押し付けられる。

「わっ!?」
「………殿下。私の可愛い娘を、厭らしい目で見ないで下さい」
「嫌だなぁ~。私は、別にサーシャ嬢を厭らしい目で見たりなんてしてませんよ。私は、まだ子供ですよ?それに、最初に此方を熱い視線で見つめて来たのはサーシャ嬢ですよ。もしかして、サーシャ嬢に好きになられちゃったのかな?」

確かに、クリスの事を熱い眼差し殺気の篭った目で見ていたのは事実だ。否定は出来ない。

ーーだが、間違ってもクリスを好きになる事はあり得ないと断言出来る。

(例え、この世界に二人きりになったとしてもっ!アンタだけは、間違っても好きにならないわよっ!)

そんなサーシャの考えが伝わったのだろう。
クリスは心底愉しげに微笑んでいた。

「間違っても、サーシャは殿下を好きになったりしません」

そんなクリスに向かって、ダリルがキッパリと言い放った。それに対して、アランも激しく首を縦に振り同意する。

(ーー父よ。確かにその通りだが、相手は腐っても王族。それなのに、その言葉は不敬罪になり得るのでは?)

サーシャは、同意しながらもそんな事を頭の片隅で思ったのだった。


しおりを挟む
感想 117

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

処理中です...