極妻、乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生しちゃいました!

ハルン

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No.79 ダリルside

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招待客達に騒ぎの詫びとして、幻のワイン「ルビーの滴」を提供する。招待客達は、一生に一度口に出来るか出来ないかの高級なワインに舌鼓しながら互いに感想を言い合う。

そんな招待客達を見た後、妻ミランダに目配せをする。

(暫く、この場は任せた)
(えぇ、分かったわ)

小さく頷くミランダを確認してから、ダリルはそばに居るクリスに声を掛ける。

「殿下、此方へ」

そうして誰にも気付かれない様に会場から出て、二人は少女が監視されている部屋へと向かう。

「おや?さっきの少女は、地下牢に入れてないんだね」

(何故、我が家の地下牢の存在を知ってるんだ)

一瞬、ダリルはそう思ったが相手はクソ生意気で性格の歪んでいるが頭の回転が速いクリスの事だ。時期国王として、アベルシュタインの裏の顔を知っているのならば、自ずと地下牢の存在に気付いたのだろう。

「えぇ、そうです。相手は、まだ娘と同じ年頃の子供ですからね。いくら不法侵入者だとしても、子供を地下牢に入れるなんて、そんな事は出来ません」
「本音は?」

その言葉に、舌打ちしそうになった。

(やはり、こんな当たり前の言葉に騙されないか…)

正直、先程の言葉は真っ赤な嘘だ。
王家の番犬として、王家に仇なす敵を何百年もの間始末して来たアベルシュタイン家。

時には、生まれたばかりの赤子でさえ王家の災いになると判断したら始末する。

そんな家の者が、小さな子供だからと言って可哀想などと慈悲の心を持つ事など、絶対にあり得ない。それを知っているからこそ、クリスはダリルに本音を聞いたのだ。

「あの少女と殿下の会話を聞いて、あの少女が自分が世界の主人公だと思っている頭のおかしな少女だと分かりました。あの様なタイプの輩は、最初から恐怖や痛みを与える鞭より、優しく丁寧に甘やかす飴を与えた方がペラペラと話してくれるんですよ」
「へぇ~。でも、丁寧に甘やかしたら調子に乗らない?」
「そこは、腕の見せ所です」

そう二人で話しているうちに、少女が閉じ込められている部屋につく。だが部屋の中からは、閉じ込められている筈の少女の楽しげな笑い声が聞こえて来る。

「………成る程。既に、飴は与えられているのか」
「当然です。『飴は素早く、鞭は遅く』、これが我が家の家訓の一つですから」
「勉強になるよ」

感心した様に頷くクリスを横目に、ダリルは笑みを浮かべて部屋の扉を開けるのだった。
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