極妻、乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生しちゃいました!

ハルン

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No.80 マリアside

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会場から無理矢理この部屋に連れて来られてから15分程経っただろうか?

(最初は無理矢理会場から此処に連れて来られて、どうなってるのかと思ったけど…)

「マリア様の髪は、本当にお美しいですね。これで、手入れを一切していないなんて信じられませんわ!」
「そう?」
「えぇ!それに、ピンクの瞳なんて初めて見ました。可愛らしいマリア様にとても良くお似合いです」

そう言って、メイドがマリアをベタ褒めする。
しかし、メイドはこれから行われる尋問をスムーズに進める為に褒めているだけに過ぎない。
実際、『この子より、サーシャ様の方がマジ天使』とメイドは激しく思っていた。

だが、そんな事を何も知らないマリアはその賛辞を心地よく受け止めていた。

(ふふっ、当然でしょ!だって、私はこの世界のヒロイン何だから!…やっぱり、さっきのクリスの態度や会場から連れ出されたのは何かの間違いなんだわ)

そう思った時、部屋の扉が開く。
そうして、ダリルとクリスが部屋に入って来る。

「あっ!クリス様!」

マリアは、瞳を輝かせながらクリスに近付く。先程まで、冷たい瞳でマリアを見ていたクリス。だが、今はとても優しい瞳でマリアを見つめていた。

「さっきは酷い事を言ってごめんね。周りに、私の粗を探す貴族達が大勢いてね。あの場では、ああ言うしか無かったんだ。本当は、一目見た時から君の事を素敵だと思ったんだ」
「そうなんですね!」

(これまでゲームの内容から色々外れてたけど、やっと上手く行き始めたわ!)

パーティーでヒロインと攻略対象のクリスは出会う。だが、本来はこのパーティーで出会う訳ではない。本来なら、学園に入学して初めてのパーティーで出会うのだ。

だが、これまで攻略対象との幼少期の出会いイベントが一つを除いて全て上手く行かなかった。その為、焦ったマリアは上手く行った攻略対象にお願いして無理矢理この会場にやって来たのだ。

「素敵なお嬢さん、貴女のお名前は?」

それは、ゲームでクリスがヒロインに名前を聞いた時の台詞だった。

「わ、私はマリアって言います!」

ゲームの通りに、緊張し少し恥ずかしそうに言葉を詰まらせながら自身の名前を言う。

(これで、クリスはヒロインの事を慎ましい女の子だと思うんだよね!)

これで、ゲームの通りにクリスはヒロインに興味を持ったと、マリアは思った。

ーーしかし、招待されてもいないのに無断でパーティーに来たばかりか正規の客人に迷惑をかけるだけには留まらず、人前で自分が未来の王妃だと喚いたマリア。

そんな事をする少女を慎ましい女の子だと思う者は誰もいない事に、マリアは気付いていなかった。



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