極妻、乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生しちゃいました!

ハルン

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No.91

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サーシャが目覚めた頃、ダリルは王城にて宰相であるジルロの執務室に居た。

「ーー成る程。まさか、昨日の少女を手引きしたのがアンドレー騎士団長の御子息だったとはな」

そう言って、ジルロはその厳しい顔に皺を寄せる。

「しかし、一体どうやってだ?確か、御子息は5歳だった筈。それなのに、あの様なドレスを用意して警備の厳重なパーティー会場に連れて来るなと到底出来そうにないが…」

実際、昨夜ジルロはアンドレー騎士団長の一人息子であるドレイクを見た。ドレイクに対する印象は、周囲より少し優れている為に自分が圧倒的な強者だと勘違いした傲慢な少年だ。

何処をどう見ても、頭脳派なタイプには見えなかった。

「そこには同感だ。今調べさせているが、恐らくあの少年がしたのは、ドレスを用意する事とあの少女を我が家の近くに連れて来た事位だろうな」
「何故そう思うんだ?」

不思議そうにジルロはダリルに尋ねる。

「私は、パーティーが始まってからずっと会場内に気を配っていた。特に、高位の役職に就く者や貴族達をね。その中には、勿論アンドレー騎士団長も居たさ。そして、その彼の隣には御子息がずっと一緒に居たんだ」

そこで一旦話を止めて、ダリルは目の前の紅茶を一口飲む。

「そもそも、アンドレー・ハイマー伯爵は厳格な人だと知られている。そんな彼が、自身より高位の貴族のパーティーを荒らす様な真似をする息子を許すわけが無い」
「それはそうだな」

恐らく、知っていたら幼い一人息子を殴ってでも止めただろう。

「そして、いくら幼くも次期当主である御子息の命令だとしても、現当主である主人の怒りを買う手伝いをハイマー家の使用人達がする事も無いだろう。だが、幼いながらに傲慢そうなあの少年は、何も出来なかったでは納得しなかっただろうな」
「成る程。それで、ドレスの用意と近くまで送り届ける事だけをしたのか」

納得のいった様に頷くジルロ。
見た目に反して、彼は頭脳派なのだ。

「多分な。会場に侵入した方法は未だ不明だが、もしかしたら他にも協力者がいたのかも知れない」
「………しかし、恐ろしいな。一体、平民の子供がどうやって貴族の子供に近付いたんだ?」
「あの歳の男子だ。恐らく、冒険気分で家を抜け出して街に出た時に出会ったんだろう」
「近いうちに、貴族達に子供をしっかりと見る様に何か案を出して通達しよう。………勿論、大人も同様だがな」

街に出かけて異性に籠絡され言いなりになるなど、あってはならない事だ。今回の様な事を子供のしでかした事だと軽く考え放置すれば、いずれとんでも無い事態に発展してしまうだろうと、今回の事をジルロは重く受け止めたのだった。



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