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No.98

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問題 『ほぼ初対面に等しい美貌の青年が、自身をうっとりと見つめてきたら?』

1、見つめ返す
2、追い払う
3、逃げる

一番は、面倒な事になりそうだから論外。
その為、サーシャは二番を選択した。

「…….あの、ルイス様はその本を借りに来たんですよね?受付に行かないんですか?」

ルイスが片手に持つ本を見ながら、サーシャは問いかける。存外に、「さっさと立ち去れ」との気持ちを込めて伝える。確実に意味を理解した筈のルイスだが、サーシャの気持ちを綺麗に無視する。

「受付終了まで、まだ時間があるから大丈夫。それより、サーシャは子供なのに難しい本を読むんだね。可愛い上に頭も良いなんて、サーシャの本当の正体は地上に迷い込んだ天使じゃ無いのかい?」

いつの間にかサーシャを呼び捨てにするルイスは、何処かで聞いた事のある台詞を口にしながらサーシャの髪を一束掬うとそこに口付けを落とす。


ーーもう、これは疑いようが無い事実だ。


ルイスは、間違い無くサーシャに惚れている。
一体、いつ何処でなんの拍子に惚れられたのかは知らないが、目の前の青年は本気で10歳も年下のサーシャに恋していた。

(………まさか、ルイス様ってロリコンなの?)

そんな疑問が浮かび上がり、サーシャは警戒心を高める。人の性癖をとやかく言うつもりは無いが、個人的にはそんな変態に近付くなんてしたく無かった。

「ーーねぇ、サーシャ。この後時間ある?良かったら、甘い物でも食べに行かないか?」
「嬉しいお誘いですが、申し訳ありません。この後も予定があり護衛の者を待たせておりますので、今日はこれで失礼します」

実際は、予定など何も無い。
体のいい断り文句だ。

ザックとの約束の1時間まであと20分はあったが、サーシャはルイスにそう言って読んでいた本を片付けて席を立つ。なるべく早くその場を去ろうと早足で歩くが、所詮は子供の足だ。10歳年上のルイスは、あっという間にサーシャの横に並び彼女の歩く速度に合わせる。

「それなら仕方ないね。じゃあ、また今度都合のいい日に誘う事にするよ」

そう言って、ルイスは楽しそうに笑う。

(以外にしつこい変態ロリコンね)

ルイス自身は、サーシャだから好きになったのだが、サーシャにはロリコンだから自分を好きになったのだと勘違いされ、ある意味すれ違う2人であった。




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